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第1節 

2 社会教育その他多様な場における環境教育・環境学習


(1)多様な場の環境教育・環境学習
 多様化・深刻化する環境問題に対応していくためには、国民一人ひとりが人間と環境との相互作用について理解と認識を深め、環境に配慮した生活・行動を行っていくことが必要であり、行政、事業者、民間団体、個人が連携を図りつつ、幼児から高齢者までのそれぞれの年齢層に対して、学校、地域、家庭、職場、野外活動の場等多様な場において、環境教育・環境学習を総合的に推進することが重要です。
 また、平成15年1月1日に施行された「自然再生推進法」では、過去に損なわれた自然環境を取り戻していくための自然再生事業の対象地域を、自然環境学習の場として活用していくことの重要性が基本理念にうたわれており、各地で取組が開始されている自然再生事業においては、こうした観点からの取組も重要です。
 国としては、その他に、関係府省と連携・協力して環境教育・環境学習を総合的に推進するため、様々な施策を展開しているところです。
 環境省では、小中学生の地域における環境活動を支援するこどもエコクラブ事業*を地方公共団体と連携しつつ実施し、平成14年度においては約4,000クラブ、約77,500人の小中学生に対し、環境に関するわかりやすい情報の提供や、全国交流会の実施、GLOBE計画*への参加支援等を行いました。また、「環境カウンセラー*事業」を実施し、平成14年度においては、新たに350人を登録したほか、「環境学習支援事業」による環境学習プログラムの整備・提供、文部科学省と連携して、国立公園等で子どもたちが環境保全活動や自然体験活動などを行う「子どもパークレンジャー事業*」を実施しました。
 さらに、体験を重視した学習機会や場の提供等の観点から、「体験的環境学習推進事業」や「環境科学に関する環境教育推進事業」を実施しました。
 社会教育における環境保全に関する取組として、文部科学省では、社会教育における環境保全に関する取組として、行政と環境保全NPOなどとの連携による環境学習など、行政とNPOをはじめとする民間団体とが連携し地域学習活動を実施し、地域住民自らが課題解決に取り組む「地域NPOとの連携による地域学習活動活性化支援事業」を実施し、必要な経費の助成を行いました。また、平成14年度からの完全学校週5日制の実施に伴い、子どもたちの体験活動の場や機会の充実などに資するために策定した「新こどもプラン」において、地方公共団体が青少年を対象にして長期間の自然体験活動に取り組む事業に助成する「青少年長期自然体験活動推進事業」や、関係省庁と連携して、地域の身近な環境をテーマにした子どもたちの体験型の環境学習の推進を図る「省庁連携子ども体験型環境学習推進事業」を実施しました。
 さらに、独立行政法人国立少年自然の家などの国立青少年教育施設においても、青少年の環境学習に資する事業を実施しました。
 また、環境省と文部科学省では、環境教育・環境学習に関する施策の一層の推進を図るため、両省副大臣を筆頭とする協議会を開催しました。
 国土交通省は、川を活かした環境教育の推進を図る観点から、子どもたちの水辺での遊びを支える仕組みをつくり、自然環境あふれる安全な水辺を創出する「水辺の楽校プロジェクト」を実施するとともに、環境省、文部科学省と連携し、子どもたちの体験活動の場として河川の利用を促進する「「子どもの水辺」再発見プロジェクト」を推進しました。さらに平成14年度には「子どもの水辺サポートセンター」(URL:http://www.mizube-support-center.org/)を開設し、ライフジャケットを貸し出すなど、水辺での活動を推進しました。また、国営公園において、環境学習に資するフィールドの整備や自然環境の保全、並びに環境学習プログラムの提供を行うとともに、地方公共団体においては、身近な自然とふれあう場として環境ふれあい公園の整備等を推進しました。
 農林水産省では、文部科学省と連携し、子どもたちの入門的な森林体験活動を促進する「森の子くらぶ活動推進プロジェクト」を実施するとともに、人材の育成、学校林の整備・活用等を推進する「森林環境教育活動の条件整備促進事業」、森林環境教育の場、市民参加や後継者育成に資する森林・林業体験の場等を整備する「教育のもり整備事業」、緑の少年団活動や親子や子どもたちによる森林ボランティア活動を支援する「地球温暖化防止のための緑の国民参加活動推進事業」を実施しました。
 また、国土交通省においては水資源問題についての啓発、経済産業省においては消費者の自主的活動の推進等を図りました。

(2)環境研修の推進
 ア 環境研修の実施
 環境政策の動向に対応し、環境行政を効果的に進めていくためには、国及び地方公共団体等の環境行政担当職員等の資質、能力の向上を図ることが重要な課題です。
 このため、環境研修センターにおいて国及び地方公共団体の職員等を対象に各種の環境保全に関する研修を実施しています。
 平成14年度において行政研修では、循環型社会形成へ向けた行政対応の重要性が高まっていることに鑑み、先進的な手法の解説及びエコタウン等のフィールドを使用した実地研修を取り入れた「廃棄物・リサイクル専攻別研修(循環型社会実践計画コース)」を新設し、北九州市において実施しました。
 また、分析研修では、地方公共団体においてその汚染実態等の把握のための分析技術者の育成が喫緊の課題となっている内分泌撹乱化学物質(環境ホルモン)について、優先してリスク評価に取り組むべき物質についてLC/MSを活用し「内分泌撹乱化学物質(環境ホルモン)環境モニタリング研修」を新設し、実施しました。
 さらに各研修についても研修内容等の充実強化を図りました。平成13年度に実施した研修は、行政関係研修28コース、及び分析関係研修15コースの合計43コースであり、1,670名(行政関係1,432名、分析関係238名)が研修を修了しました。
 平成13年度末までの研修修了者は延べ32,659名(うち行政関係は26,767名、分析関係は5,892名)に及んでいます。
 研修に参加する研修員の所属機関別の研修修了者の割合は国が約2割、地方公共団体が7割強等となっています。

 イ 環境研修の支援等
 環境研修センターでは地方公共団体の行う環境研修に必要な情報の提供の支援等を行うためデータベースの整備等を進めています。

 ウ 国際環境協力研修の実施体制の充実強化
 近年、途上国等に対する人的な環境協力を積極的に推進することが求められていますが、現実にはニーズに応えられる人材が不足しています。このため環境省では、国際環境協力に携わる人材の養成等を図るため、環境研修センターにおいて国際環境協力に関する研修の実施体制の整備を進めてきました。平成14年度は「国際環境協力入門研修」、「国際環境協力中級研修」、「国際環境協力上級(専攻別)研修(環境政策・計画)/(自然環境保全)/(環境分析・モニタリング)」の研修内容等について充実強化を図りました。

 エ ダイオキシン類分析研修体制の整備
 ダイオキシン類の全国的な環境モニタリング体制の整備を図るためには、ダイオキシン類の技術を持った専門家が必要であることから、平成11年度から「ダイオキシン類環境モニタリング研修(基礎課程)」を、平成12年度から「ダイオキシン類環境モニタリング研修(専門課程)」の水質、排ガス、土壌の各コースを順次開設し実施しているところですが、平成14年度においては、平成13年度末に完成した第2特殊実習棟を活用し、より充実した研修を実施しました。

 オ 日中韓三カ国合同環境研修の実施
 日中韓三カ国合同環境大臣会合の優先的取組分野である「環境共同体意識の向上」について、3か国の環境行政を担当する行政官が、参加国の環境の現状、課題、対策等について情報や認識を共有することを目的として、三カ国合同環境研修を実施することとされております。その第2回を韓国国立環境研究院環境研修部(仁川広域市)において、日本5名(国2名、地方公共団体3名)、中国5名、韓国9名の研修生を対象として、12月3日〜12月10日の8日間の日程で実施されました。3か国共通の主要な3テーマ、すなわち水質保全、大気保全及び廃棄物管理に焦点を当て、ディスカッションやグループ討議、現地視察や質疑応答を交えて研修を行いました。

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