4 地域外への取組の波及
地域環境力を備え地域内で効果を上げた取組は、参考とすべきモデルとして他の地域に伝えられ実行されることにより、より大きな社会全体の流れとなって取組の推進力となります。その結果、一つの地域での活性化がさまざまな地域の活性化を誘発していく可能性もあります。また、さまざまな地域での取組によって得られた経験や知見を互いに学ぶことで、さらに取組を効果的にすることにもつながります。さらに、地域環境力は、日本国内はもとより、世界中での取組にも影響を与える可能性があります。
(1)風サミットの開催(山形県立川町)
第3節で取り上げた、立川町での風力発電の取組は、それまで見向きもされなかった強風という地域資源を有効に地域活性化につなげた事例として全国に広がっています。平成6年、風をテーマに地域活性化を進めている全国12市町村が立川町に集まり、第1回風サミットが開催され、「地球にやさしいクリーンエネルギーとして、日本における風力エネルギーの活用とPRに努力する」との共同宣言を採択しました。風サミットの推進母体である全国風力発電推進市町村全国協議会には、平成15年3月現在、76市町村が加入しています。
(2)世界湖沼会議の開催
わが国最大の湖である琵琶湖では、戦後の急速な工業化と人口増加によって水質悪化が進みました。これに対して「粉石けん使用運動」など市民運動の展開、滋賀県における有りん合成洗剤の使用及び販売の禁止を含む「琵琶湖富栄養化防止条例」の制定など、市民と行政が一体となって琵琶湖の環境保全に取り組んできました。
昭和59年8月、滋賀県の呼びかけで「世界湖沼環境会議」が開催されました。この会議は住民、科学者、行政、企業などが同じ立場で会議に参加するという協働の形態で行われ、当時としては画期的なものでした。当初は1回限りの予定でしたが、国連環境計画(UNEP)の協力のもと国際湖沼環境委員会(ILEC)が設立され、その後2年ごとにILECと地元地方公共団体等との共催で、世界各地で開かれてきています。
世界湖沼会議は、地域の環境保全の取組から発展して、地方公共団体のイニシアティブによって湖沼環境保全をめぐる世界的な交流、波及の場を生んだ先例といえます。
世界湖沼会議開会式 滋賀県提供