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第6節 

6 野生生物の保護管理

(1)野生動植物の捕獲・譲渡等の規制、生息・生育環境の整備等
 種の保存法に基づき、国内希少野生動植物種の指定、個体の捕獲・譲渡等の規制、器官・加工品の譲渡等の規制を引き続き実施していくとともに、国内希少野生動植物種については、生息地等保護区の指定を推進し、生息・生育環境の保護管理を行います。
 また、保護増殖事業については、種の保存法に基づく保護増殖事業計画に従い、ツシマヤマネコ、アホウドリ、タンチョウ、ミヤコタナゴ等の生息環境の改善・整備や繁殖の促進のための事業を推進するとともに、国内希少野生動植物種に指定された種で、保護増殖事業を行おうとするものについて、順次新たに保護増殖事業計画を策定します。さらに、全国8か所に整備されている野生生物保護センターにおいて絶滅のおそれのある野生生物の保護増殖事業等を推進します。
 奥地脊梁山地に広く所在している国有林野は、すぐれた景観を有し、貴重な野生動植物が生息・生育するなど豊富な森林生態系を維持している森林も多く、地球環境保全や生物多様性の確保の観点からも、その維持・保存はますます重要になってきています。
 このため、自然環境の維持、動植物の保護、遺伝資源の保存等を図る上で重要な役割を果たしている森林については「森林と人との共生林」に区分し、自然環境の保全を第一とした管理経営を行うとともに、特に原生的な天然林や貴重な動植物の生息・生育地等特別な保全・管理が必要な森林については、保護林として積極的に指定するなどその拡充を図ることとします。

(2)野生生物の保護管理
 ア 鳥獣保護事業の推進
 鳥獣保護施策を積極的に推進するため、鳥獣保護事業計画に基づき、鳥獣保護区の設定、有害鳥獣駆除及びその体制の整備、違法捕獲の防止等の対策を総合的に推進します。当該計画の推進に当たっては、人と野生鳥獣との共生の確保及び、生物多様性の保全を踏まえて野生鳥獣を適切に保護管理することを基本とします。
 国設鳥獣保護区においては、人と野生鳥獣との共生を図るため、人の利用の適正な誘導、野生鳥獣の生態等に関する普及啓発、鳥獣の生息に適した環境の保全・整備を進めるための施設の整備を推進するほか、保護管理方針を示すマスタープランを策定し、管理の充実に努めます。

 イ 適正な狩猟の推進
 狩猟は、適正な管理の下では、野生鳥獣を適正な生息数にコントロールする手段として一定の役割を果たすことから、狩猟による事故防止、違法行為の防止の徹底等適正な狩猟を確保するための関係者への指導を行うとともに、狩猟鳥獣の種類の見直し、捕獲禁止又は制限の見直しに必要な調査・検討を進めます。

 ウ 鳥獣に関する調査研究の推進
 鳥獣の生息状況等に関する調査については、鳥類観測ステーションにおける標識調査、ガンカモ科鳥類の生息調査、シギ・チドリ類の定点調査等渡り鳥の生息状況調査等を引き続き実施します。
 鳥獣と人との共生を図るための鳥獣の保護管理に関する調査としては、イノシシの個体群の管理に関する基礎的な調査等を実施し、鳥獣の保護管理手法の確立を進めます。

 エ 農林漁業被害の防止対策
 シカなどによる農林業被害が深刻化していることから、環境省、農林水産省、林野庁が連携して農林業被害の著しい地域において、「野生鳥獣管理・被害総合対策」を引き続き実施します。この中で、特定鳥獣保護管理計画等による野生鳥獣の保護管理手法を普及・定着させるための野生鳥獣保護管理適正化事業を実施し、また、新たな技術を有する鳥獣管理の中核的な担い手を育成し、将来にわたる鳥獣管理体制の構築を図るため、野生鳥獣管理技術者育成事業を実施します。さらに、都道府県の特定鳥獣保護管理計画による保護管理状況の実態を調査するほか、鳥獣の全国的な生息状況等の動向を把握するため、大型哺乳類の生息分布等の調査を実施するとともに、野生鳥獣保護管理情報システムを運用します。また、野生鳥獣を適正に管理し、農林業被害を軽減する農林生態系の管理技術の開発等の試験研究、農林業被害防止のための防護柵等の被害防止施設の設置、効果的な被害防止技術の確立と被害防止システムの整備、農業被害防止に必要な知識の普及等の対策を推進します。さらに、森林の機能発揮と野生鳥獣との共存を目指した多様な森林の整備等を図る事業等を実施していきます。
 また、近年、野生生物であるトドによる漁業被害が増大しており、トドの資源に悪影響を及ぼすことなく、被害を防ぐための対策として、被害を受ける定置網の高度強化を引き続き促進します。

 オ 渡り鳥の保護対策の推進
 渡り鳥の保護対策としては、生息状況調査を引き続き実施するほか、出水平野に集中的に飛来するナベヅル、マナヅルについて、その生息環境を改善し、周辺への農業被害を軽減するために遊休地の確保等の事業を引き続き実施します。

 カ 鳥類の鉛中毒事故の防止対策
 近年、鉛製散弾や鉛ライフル弾により、ハクチョウ等の水鳥やオオワシ等の猛禽類が中毒死する事故等が発生していることから、平成12年度の猟期から、関係団体等との調整を図り、鉛弾の使用禁止及び無毒の代替弾への切り替え等の措置を進めており、引き続き推進します。

(3)水産資源の保護管理の推進
 水産資源の保護・管理については、引き続き、漁業法及び水産資源保護法に基づく採捕制限等の規制や、平成8年7月に成立した「海洋生物資源の保存及び管理に関する法律」に基づき、新たに、海洋生物資源の採捕量に着目した規制を行うとともに、希少な水産動植物を保護するための採捕制限等の規制を行うほか、次の対策を実施します。

 1) 資源が著しく減少している水産動植物の保護・増殖を図るため、水産資源保護法に基づく保護水面を指定し、所要の管理、調査等を行います。
 2) 水産資源の持続的かつ高度な利用を図るため、資源管理型漁業を推進します。
 3) 緊急に資源の回復を図る必要がある魚種について、漁獲努力量の削減等の措置を計画的に講じていきます。
 4) 魚類の遡上を円滑にし適正な河川流量を流下させて生態系の保護等を図るための地域用水環境整備事業を実施するほか、渓流域における生態系の保全を考慮した渓流魚等内水面資源の効率的な増殖管理手法の確立を図ります。また、内水面漁業及び生態系に深刻な影響を与える外来魚の問題に対応するため、外来魚の駆除、処理対策、漁場の生態系の復元を図ります。
 5) 特に、保護が必要とされるウミガメ(2種)、鯨類(3種)及びジュゴンについて引き続き原則採捕禁止等の保存措置を講じます。
 また、鯨類資源に関し、資源状況の良好なミンククジラ等については、その適切な管理のための科学調査を実施するとともに、資源状態の悪化しているシロナガスクジラ等についても、その生態、資源量、回遊等の実態を把握し、積極的な資源回復手法を解明するための調査を引き続き実施します。
 さらに、ウミガメの保存を図るため、ひめうみがめ、おさがめについて採捕、所持、販売の規制を行うほか、ウミガメの産卵場及び生息水域の廃棄物の除去清掃、卵や稚亀の密漁防止等の保護事業に対して助成を行い、同時に、その保存の基礎となる生息状況等を解明するため、標識放流による調査を引き続き行います。
 6) 漁場環境に配慮しながら持続可能な海洋水産資源の利用を行うため、混獲防止技術の開発、混獲対象種増殖技術の開発を引き続き実施します。
 7) 減少の著しい水生生物に関するデータブックの掲載種について、現地調査及び保護手法の検討を引き続き実施します。
 8) 国際的に関心が高いサメ類及び海鳥の保全・保護問題に対処するため、サメ類の保存・管理及び海鳥の偶発的捕獲の対策に関する行動計画の策定等を引き続き実施します。

(4)調査研究等の推進
 絶滅のおそれのある野生動植物について生息・生育状況を把握するため、レッドデータブック掲載種のモニタリング調査や国内希少野生動植物種の現状調査を実施します。また、動物版レッドデータブックの改訂のための情報収集・解析を進めます。
 また、近年、マングース等の移入種(外来種)により、在来の希少種が捕食されるなど、地域固有の生態系への影響が懸念されています。そのため、全国的な移入種(外来種)による問題の現状を整理し、移入種(外来種)への対応の基本的な方針の作成を踏まえ、効果的な予防対策のあり方などを検討します。
 絶滅のおそれのある種への影響など、移入種(外来種)による生態系への影響が現に生じている地域においては、引き続き、移入種(外来種)の排除のための事業を進めます。
 また、遺伝子改変生物については、移入種(外来種)と同様の影響が懸念されるため、遺伝子改変生物の輸出入を規制する国際的な枠組みを決めたカルタヘナ議定書が採択されています。わが国において、議定書で求められている措置を実行するために必要な仕組みを、引き続き検討します。
 さらに、野生生物保護思想の普及啓発を図るため、愛鳥週間行事の一環として「全国野鳥保護のつどい」を鹿児島県で実施するほか、小・中学校及び高等学校等を対象とした「全国野生生物保護実績発表大会」等を開催します。

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