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第6節 

5 自然的環境の回復

(1)自然再生事業の推進
 政府の重要課題である「自然と共生する社会」の実現を図るため、関係府省が連携し、専門家やNPO等の参画を経て、直線化された河川の蛇行化と湿原植生の回復、干潟、里山等の再生など、失われた自然を再生する事業を推進します。

(2)都市における緑地の整備等
 市町村による緑の基本計画の策定を通じた総合的かつ計画的な緑地の保全及び緑化を推進するとともに、公共空間における緑のストックの増加、公共公益施設等における高木植樹の推進を図ります。
 がけ崩れ対策においては、第4次急傾斜地崩壊対策事業五箇年計画に基づき、貴重な緑の空間である斜面環境・景観を保全しつつ安全度を向上するため、既存樹木を活用した緑の斜面工法による斜面整備を推進します。
 また、土砂災害に対する安全性を高め緑豊かな都市環境と景観を創出するため、「都市山麓グリーンベルト整備事業」を実施し、無秩序な市街化の防止や都市周辺に広がる緑のビオトープ空間の創出に寄与します。

(3)都市公園等
 第6次都市公園等整備七箇年計画に基づき、安全で安心できる都市づくり、長寿・福祉社会への対応、都市環境の保全・改善や自然との共生への対応、広域的なレクリエーション活動や個性と活力のある都市・農村づくりへの対応に重点をおいて、事業費3,098億2,600万円をもって、次の事項に重点をおいて都市公園整備事業の積極的推進を図ります。
 国営公園については、全国16か所において整備を進めます。
 地域レベルでの市民の環境活動や指導者の育成などの拠点となる環境ふれあい公園の整備、緑の基本計画に基づき、都市の景観形成、環境改善及び防災機能向上のために緑地整備及び緑化の必要性が特に高い地区において、多様な公園緑地の整備や公共公益施設の緑化を行う緑化重点地区総合整備事業等、各種施策に応じた都市公園等の整備を積極的に推進します。また、生態系の保全に係る水と緑のネットワークの整備について、関連事業との連携を図っていきます。さらに、埋立造成地等において良好な緑地の整備を行う自然再生緑地整備事業を創設し、都市における自然再生、多様な生物の生息生育基盤の確保等を推進します。

(4)国民公園及び戦没者墓苑
 皇居外苑、新宿御苑、京都御苑及び千鳥ヶ淵戦没者墓苑を広く国民の利用に供するため、引き続き園内の清掃、芝生・樹木の手入れを行います。また、皇居外苑の楠公前大休憩所整備、新宿御苑の旧御涼亭整備等を行います。

(5)河川環境等の整備
 ア 河川
 河川環境に関する基礎情報の収集整備のため、河川並びにダム湖及びその周辺における生物の生息状況の調査、河川空間の利用実態の調査を行う「河川水辺の国勢調査」を実施します。また、河川環境に関する専門的知識を有する地域の方々の参加を得て、きめ細かな河川環境の管理に資する「河川環境保全モニター制度」を実施します。
 また、河川環境管理計画の策定を推進し、自然環境の保全に配慮するとともに、水と緑の公共空間として地域住民に憩いとレクリエーションの場を提供するため、河川の高水敷等の整備により河川の自然環境の適正利用を推進します。さらに、流域の水循環の適正化を図るための種々の施策を推進します。
 平成14年度からは、河川の蛇行化復元や、乾燥化傾向のある湿地の冠水頻度を増加させるなどの自然再生事業を実施し、渡り鳥等の生物の良好な生息・生育環境を有する自然河川や、湿地・干潟などウェットランドの再生を進めていきます。また、良好なうるおいのある水辺空間の保全並びに形成や、河川水面利用の適正化等を図る「河川環境整備事業(水環境整備事業、河道整備事業及び河川利用推進事業)」、周辺の景観や地域整備と一体となった河川改修を行う「ふるさとの川整備事業」、河川改修と市街地整備をあわせて行う「マイタウン・マイリバー整備事業」、堤防の強化とあわせ側帯上に植樹を行う「桜づつみモデル事業」を実施します。また、治水上の安全性を確保しつつ、多様な河川環境を保全したり、できるだけ改変しないようにし、また、改変する場合でも最低限の改変にとどめるとともに、良好な自然環境の復元が可能となるように川づくりを行う「多自然型川づくり」、河川横断施設とその周辺の改良、魚道の設置等により魚類の遡上環境の改善を行う「魚がのぼりやすい川づくり推進モデル事業」、高齢者、障害者に配慮し、すべての人にやさしい河川環境を整備する「まほろばの川づくりモデル事業」、劣悪な環境になっている河川を周辺の地域環境にふさわしい本来の川らしい川に再生し、個性ある地域づくりに資するため、質の高い河川整備を行う「河川再生事業」、間伐材の有効利用を通して、自然を活かした川づくりと森林整備との連携を図る「森を育む川づくり」を実施します。また、「美しい山河を守る災害復旧基本方針」に基づき、河川環境に配慮した災害復旧を実施します。

 イ ダム周辺
 ダム貯水池において整地、法面保護、緑化対策等を図り、ダム湖の活用、親水性の向上を図る「ダム湖活用環境整備事業」を17ダムで実施します。また、ダム周辺の河川環境の回復を目的とした「ダム水環境改善事業」を11ダムで実施します。
 さらに堆砂及び水質改善対策を目的とする貯砂ダムの設置により、常時一定水位で利用可能な湖面を確保し、ダム湖の親水性を向上させる「レクリエーション湖面整備ダム事業」を1ダムにおいて実施します。また、地方公共団体等が主体となるレクリエーション事業と一体となって共同ダム事業を行う「レクリエーション多目的ダム事業」を3ダムにおいて実施します。

 ウ 砂防設備周辺等
 山腹・斜面等の緑化、樹林帯の整備等により荒廃山地、斜面の保全と緑化を図るため、「緑の砂防」を重点的に実施し良好な自然環境の創出を行います。
 また、土砂災害の防止とあわせて、すぐれた自然環境や社会的環境を持つ地域等の渓流において、自然環境との調和を図り、緑と水辺の空間を確保することによる生活環境の整備、または、景観・親水性の向上や生態系の回復等を図り良好な渓流環境を再生する「砂防環境整備事業」など、個々の渓流の特色を活かした砂防事業を展開し、水と緑豊かな渓流づくりを実施します。
 がけ崩れ対策においては、第4次急傾斜地崩壊対策事業五箇年計画に基づき、貴重な緑の空間である斜面環境・景観を保全しつつ安全度を向上するため、既存樹木を活用した緑の斜面工法による斜面整備や危険な斜面の直下の土地を利用して崩壊土砂を捕捉する緩衝樹林帯整備を推進します。
 また、土砂災害に対する安全性を高め、緑豊かな都市環境と景観を創造するため、「都市山麓グリーンベルト整備事業」を実施し、無秩序な市街化の防止や都市周辺に広がる緑のビオトープ空間の創造を図ります。
 その他、土砂移動についても河川環境等の面から配慮が必要であり、山地部から海岸までの土砂の運動領域を「流砂系」という概念で捉え、ダム堆砂の進行、河床低下、海岸侵食等の土砂管理上の問題が顕在化している流砂系において、砂防、ダム、河川、海岸の各領域が連携しつつ自然な土砂の流れを再生することで、適正な量・質の土砂を下流に供給し、生態系や環境等の良好な環境面の保全・再生を含めた総合的な土砂管理を推進します。

(6)港湾・漁港における環境の整備
 ア 港湾
 自然環境と調和し、アメニティ豊かな環境と共生する港湾(エコポート)の実現を促進する港湾づくりを実施します。さらに、港湾づくりを進めていくために、「自然再生型公共事業」を展開します。具体的には、港湾整備事業から発生する土砂等を活用して、多様な生物の生息地である干潟・藻場の保全・再生・創造を行います。また、廃棄物処分場跡地等を活用し、臨海部において大規模な緑地の整備を行います。これに加えて人々が憩う自然砂浜の再生等を行うことにより、良質な水辺・沿岸環境を整備するなど、より幅広くかつ効果的な取組を推進します。これらの施策は、独立行政法人港湾空港技術研究所等による世界最大規模の干潟実験施設(メソコスム)の観測や現存干潟の現地調査等を通じた干潟や生態系の研究と連携して実施します。
 なお、平成13年12月に都市再生プロジェクトとして決定された「臨海部における緑の拠点の形成」については、自然と共生する社会の実現にむけた自然再生型公共事業の一環として、平成14年度の港湾事業調査費により、東京港中央防波堤内側、大阪湾堺臨海部、大阪湾の尼崎臨海部を対象として臨海部における大規模緑地整備に関する調査を実施します。
 また、親水性に富む港湾緑地等の整備を引き続き行うとともに、歴史的港湾施設の保存活用と周辺の環境整備を一体的に進める「歴史的港湾環境創造事業」及び良好な港湾景観の形成を促進する「港湾景観形成モデル事業」を実施します。
 また、公共事業をはじめとする多様な整備手法を用いてマリーナ、ボートパーク等を整備し、地域でさまざまな問題を発生させている放置艇の解消を進め、快適な環境の保全に寄与します。

 イ 漁港
 海水交流機能を有する防波堤等の整備、水産動植物の生息、繁殖が可能な護岸等の整備並びに自然環境への影響を緩和するための海浜等の整備を総合的に行う「自然調和型漁港づくり推進事業」を積極的に展開します。
 また、漁港区域内の水域における汚泥・ヘドロの除去・覆砂並びに藻場・干潟等の整備等を行う漁港水域環境保全事業を推進するとともに漁港及び周辺水域の水質浄化に資する漁業集落排水施設の整備促進を図ります。

(7)海岸における環境の整備
 多様な海洋性レクリエーション需要の増大に伴う海浜利用の進展に対処するとともに、快適で潤いのある海岸環境の保全と創出を図るため、砂浜の保全・復元により生物の生育・生息地を確保しつつ、景観上もすぐれた人と海の自然のふれあいの場を整備する海岸環境整備事業を実施します。
 また、自然と共生し、生物の豊かな生息環境を保全・創出するため、生物の生息・繁殖場所となる砂浜、干潟、磯、緑地の保全や創出を行うエコ・コースト事業及び他の自然環境保全に係る事業との連携を図り、陸域から海岸域までのビオトープを形成するための海と陸の緑のネットワーク事業を実施します。
 また、沿岸域の藻場・干潟の造成、ヘドロのしゅんせつ等を行う水産基盤整備事業を実施します。

(8)緑化推進運動への取組
 緑化推進連絡会議を中心に国土の緑化に関し、関係行政機関相互の緊密な連絡を図り、以下のような施策を実施し、緑化推進運動の一層の展開と定着化を図ります。
 1) 「小鳥がさえずる森づくり」運動を推進するため、普及啓発活動等を実施するとともに、ゴルファーによる緑化協力運動を推進します。
 2) 地球温暖化防止をはじめとする多面的機能を有する森林の整備・保全を社会全体で支えるという国民意識の醸成・高揚を図り、国土緑化を推進するため、全国植樹祭等を開催する事業、森林ボランティアなどの広範な国民による自発的な森林づくりを促進する事業、学校林の活用を促進する事業等に助成するほか、国民参加の森林づくりを推進する仕組みの構築とその普及・啓発を推進します。
 また、巨樹、古木林や里山林等身近な森林・樹木の適切な保全・管理のために必要な技術開発と普及啓発を推進します。
 さらに、「みどりの日」、「みどりの週間」を中心に、国民各層が参加する緑化活動等の全国的な展開を推進するほか、緑の募金運動、その募金を活用した国内外の森林整備等への取組を推進します。
 3) 改正後の工場立地法に基づき工場緑化の推進に努めます。また、緑地等の整備を行う工場について日本政策投資銀行及び中小企業金融公庫から融資を行います。
 4) 都市緑化の推進にあたっては、「春季における都市緑化推進運動」期間(4〜6月)、「都市緑化月間」(10月)を中心に、その普及啓発に係る各種活動を実施するほか、緑の相談所(都市緑化植物園)、都市緑化基金の拡充強化等を図ります。

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