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第2節 

3 大都市圏等への負荷の集積による問題への対策

(1)固定発生源対策
 ア 窒素酸化物対策
 これまでの排出量の低減の実績を踏まえ、東京都特別区等、横浜市等及び大阪市等の総量規制地域については、年間を通じた排出実態等規制の実施状況を把握し、総量規制の徹底を図ります。さらに、ビル暖房等の群小発生源が集合して設置されている地域について、群小発生源からの窒素酸化物の排出状況、環境影響等の把握を行い、地域冷暖房、なかでも未利用エネルギーを活用した地域冷暖房及びNOx対策を適正に実施したコージェネレーションの導入、優良品推奨水準としてのNOx排出ガイドラインに適合する小規模燃焼機器の普及を推進していきます。

 イ 浮遊粒子状物質対策
 浮遊粒子状物質(SPM)については、発生源が多種多様でありかつ発生機構が複雑であると考えられています。そこで、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)、炭化水素類等のガス状物質が大気中で粒子状物質に変化する2次生成粒子の生成機構の解明など発生機構の解明に努めるとともに、それを踏まえての具体的な削減方策について検討を行い、環境基準の達成に向けて総合的対策の確立を図ることとしています。
 また、近年SPMの中でも、粒径が2.5μm以下の微小粒子状物質(PM2.5)と健康影響の関連が懸念されつつあり、今後も引き続きPM2.5に着目した調査を実施します。さらに、平成12年度からは、PM2.5に含まれる成分の測定・評価手法の確立のための調査を実施するとともに、PM2.5の自動連続測定を、一部の測定所において試験的に実施しています。さらに、平成11年度より開始した、疫学調査、実測調査及び動物実験等を含む、微小粒子状物質暴露影響調査を引き続き実施していきます。

 ウ 硫黄酸化物等対策
 エネルギー事情等の推移を見守りつつ、今後も二酸化硫黄等の環境基準を維持達成するため所要の対策を講じていきます。

(2)移動発生源対策
 ア 自動車等排出ガス対策
 自動車排出ガス対策については、中央環境審議会の平成9年第二次答申、平成10年第三次答申、平成12年第四次答申、平成14年第五次答申に沿った排出ガス規制の一層の強化を進めます。
 特に、問題となっているディーゼル自動車に関しては、平成14年から16年にかけて、現行から排出ガスを約3割削減する次期規制の告示改正を行いました。
 燃料品質については、新たな自動車排出ガス低減目標の達成に必要な対策のあり方を検討するとともに、新燃料による排出ガス低減効果等を客観的に評価するための調査を実施します。
 また、ディーゼル車対策技術評価検討会最終報告書(平成13年5月)を踏まえ、装着補助等を行い、DPF(「ディーゼル排気微粒子除去フィルター」。排気管等に装着したフィルターにより、粒子状物質を捕集し、電熱線や触媒の作用等によりそれを除去する装置)の普及を進めます。
 また、自動車から排出される粒子状物質については、さまざまな車種のディーゼル自動車や直噴式のガソリン自動車からの粒子状物質の粒子数や組成等について、排気拡散チャンバーを用いた測定を実施し、大気中に排出された後の粒子の特性の実態について調査を行います。また、粒子状物質の質に着目した自動車排出ガス規制に向けた測定法の確立を検討します。
 新しい規制に適合する自動車の規制の施行前の取得に対しては、自動車取得税の特例を設け、規制の施行前の新規制適合車の普及を促しているところです。また、これまでの答申を踏まえ、新たな自動車排出ガス試験法の開発調査を実施します。
 一方、大気保全上必要な自動車燃料の品質の確保のため、自動車燃料品質が排出ガスに及ぼす影響について、許容限度の設定・見直しの検討に資するため調査を実施します。
 大都市地域における二酸化窒素及び浮遊粒子状物質に係る大気環境の改善に向け、自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の対策強化のため、平成13年6月に自動車NOx法が改正され、自動車NOx・PM法が成立しました。同法により粒子状物質を対象物質に加え、車種規制が強化されるとともに、事業者に対する措置として一定規模以上の事業者に対する自動車使用管理計画の作成と都道府県知事(自動車運送事業者等については国土交通大臣)への提出の義務付け等の制度が導入されました。今後、対策地域を有する都府県において窒素酸化物及び粒子状物質に係る総量削減計画の策定が行われ、法改正により新たに強化・導入された制度とあいまって、自動車NOx・PM法の各種施策の円滑かつ着実な推進を図っていきます。
 渋滞の著しい都市圏の安全かつ円滑な交通を確保し、環境負荷の低減を図るため、都市圏交通円滑化総合計画の策定等により、パークアンドライド、時差通勤など都市内交通を適切に調節する施策を実施します。また、地域における自動車交通の調整、事業者による交通事業の改善、環境負荷の少ない自動車やDPF装着とあわせた低硫黄軽油の導入等を実施する交通需要マネジメント実証実験を推進し、都市圏交通円滑化総合計画の策定に関し活用します。
 また、自動車NOx・PM法に基づく排出基準適合車への代替促進については、一定の排出基準不適合車の廃車を伴う場合に自動車取得税の特例措置を講じるとともに、政府系金融機関による低利融資、公営バスの更新に対する財政支援措置を講じます。また、「公害健康被害の補償等に関する法律」に基づき公害健康被害補償予防協会におかれた基金の活用等によるキャンペーン活動を実施します。
 大都市地域のNO2高濃度汚染の改善に資する対策技術(土壌による大気浄化システム、光触媒を用いたNOx浄化システム)については、関係機関と協力しつつ、実用化に向けた調査研究を行っていきます。
 低公害車の開発・普及を促進するため、「低公害車開発普及アクションプラン」に基づき、地方公共団体や民間事業者等が低公害車を導入する際の補助や公健法の基金等による助成、自動車税のグリーン化等の税制上の特例措置を通じて、低公害車のさらなる普及促進を図るとともに、次世代低公害車の本命と目されている燃料電池自動車や、現行の大型車に代替するジメチルエーテル自動車、次世代ハイブリッド自動車、高性能天然ガス自動車等の次世代低公害車等の開発促進、「グリーン購入法」及び総理大臣指示及び総理大臣指示に基づく各府省等での率先導入、電気自動車活用実証調査、各種低公害技術開発の推進、低公害車普及啓発活動等を関係府省や地方公共団体の連携の下に推進していきます。
 物流面からの対策としては、平成13年7月に閣議決定された「新総合物流施策大綱」に基づいて推進します。具体的には、共同輸配送の実施や物流拠点の整備等によるトラック輸送の自営転換の推進、交通安全施設等の整備やITSの開発・活用、環状道路等の整備や交差点及び踏切道の改良によるボトルネック解消、環境ロードプライシングの試行的実施等TDM施策の推進、環状道路周辺等への物流拠点の立地促進等を進めます。
 人流対策としては、都市におけるバス交通の活性化や交通結節点の整備等による公共交通機関の利用促進を図ります。特に、平成12年度に創設された「交通結節点改善事業」により、駅前広場・交通広場、アクセス道路、駅自由通路、パークアンドライド駐車場等の整備を重点的かつ総合的に実施します。
 交通流対策としては、沿道環境保全に配慮しつつ道路ネットワークの整備の推進、信号の新設・改良、交通管制センターの高度化を図ります。さらに、光ビーコン・電波ビーコン・FM多重放送により、道路交通情報を車載機へリアルタイムに提供する「VICS(道路交通情報通信システム)」については、全国への展開及びシステムの高度化に向けて取り組みます。また、速度違反取締り等の強化、高速走行抑止システムの増設等による交通管理を行うとともに、ロードプライシング等の交通流の誘導措置の検討、交差点改良等により交通混雑の緩和を図り、大気汚染等の軽減を図ります。
 また、プレジャーボートの排ガス対策としては、エンジンから排出されるベンゼン、トルエン等の炭化水素やNOxなどの低減を図るための方策についても検討を行います。さらに、海洋環境の保全を図るため、窒素酸化物を大幅に削減できる環境低負荷型舶用推進プラント(スーパーマリンガスタービン)の研究開発を行います。

 イ スパイクタイヤ粉じん対策
 「スパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する法律」の円滑な施行を図るため、引き続き、国民に対する指定地域の周知徹底、知識の普及、意識の高揚等の施策を推進します。スパイクタイヤに類似すると思われる製品について調査を行うとともに、冬期道路交通の確保及び冬期安全運転教育等の関連施策についても、地方公共団体と連携を図りつつ、その推進に努めます。

 ウ その他の対策
 特に窒素酸化物濃度の高くなる12月を「大気汚染防止推進月間」として、マイカーの使用抑制等の人流対策、適切な自動車使用方法の実施等を国民及び関係機関に呼びかけます。さらに、大気環境にやさしい実践行動、国民運動として「アイドリング・ストップ運動」を環境月間及び大気汚染防止推進月間を通じて推進します。また、環境に優しい運転方法である「エコドライブ」の実施を呼びかけます。
 現在、未規制であるディーゼル特殊自動車に対しては、平成15年から排出ガス規制が実施されますが、建設工事においては、公共事業を中心に、排出ガス対策型建設機械の使用を引き続き推進するとともに、さらなる排出ガス低減を目指し建設機械の排出ガス対策の今後のあり方について検討します。さらに、船舶から排出される窒素酸化物、硫黄酸化物等については、国際的動向を踏まえ、排出削減技術の動向等を把握して、排出削減手法等を引き続き検討するとともに、国内体制の整備に努めます。

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