前のページ 次のページ

第6節 

5 有害廃棄物の越境移動の規制

 1970年代から80年代にかけて、先進諸国から輸出された有害廃棄物が開発途上国において不適切な処分や不法な投棄により環境汚染が生じたり、陸揚げを拒否され、有害廃棄物を積載した輸送船が行き先もなく海上を漂うなどの事件が多発しました。これらの事件の背景として、より規制が緩く処理費用もかからない開発途上国等へ輸出されがちなことが考えられ、こうして、有害廃棄物の越境移動問題は、先進国間だけでなく、途上国をも含んだ地球的規模での対応が必要な問題であるという認識が強まりました。
 こうした問題に対処するため、1989年(平成元年)3月、UNEPを中心に、バーゼル条約*が採択され、1992年(平成4年)に発効しました。

*バーゼル条約
「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約」
有害廃棄物の輸出に際しての許可制や事前通告制、不適正な輸出、処分行為が行われた場合の再輸入の義務等を規定している。

 また、有害廃棄物の越境移動問題は、1992年(平成4年)にブラジルで開催された地球サミットにおいても地球環境問題の重要なテーマの一つとして取り上げられ、またアジェンダ21の中でもこの問題への取組の重要性が指摘されています。
 わが国においては、バーゼル法*が、平成4年に制定され、平成5年にバーゼル条約への加入を果たし、同年同条約はわが国について発効し、条約対応法である同法も施行されました。

*バーゼル法
特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律

 また、わが国はOECD加盟国間のリサイクルを目的とした廃棄物の国境を越える移動の手続を規定するものとして、1992年(平成4年)3月に採択されたOECDの「回収作業が行われる廃棄物の国境を越える移動の規制に関する理事会決定」についても加入しており、同決定の適用のある廃棄物の越境移動は必要な規制が行われています。
 バーゼル条約の締約国は2002年(平成14年)1月2日現在で148か国及びECとなっており、おおむね2年ごとに開催される締約国会議において内容の充実及び見直し等が随時進められています。
 1995年(平成7年)9月の第3回バーゼル条約締約国会議において、OECD加盟国等から非OECD加盟国等への有害廃棄物の輸出を禁止すること等を内容とする条約改正案が採択されましたが、国際的な議論が継続して行われていることもあり、2002年(平成14年)1月現在発効にはいたっていません。
 1998年(平成10年)第4回締約国会議において、規制対象の範囲の明確化を図るため、同条約の規制対象及び規制対象外の廃棄物リストが新たな附属書として採択されました。これを受けわが国においては、同年11月に、バーゼル法の規制対象物となる「特定有害廃棄物等」を該当する物を定めました(図3-6-1)。



 さらに、1999年(平成11年)第5回締約国会議においては、有害廃棄物の越境移動及びその処分に伴って生じた損害についての賠償責任と補償の枠組みを定めた議定書が採択されました。
 このほか「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」において廃棄物の輸出の場合の環境大臣の確認、廃棄物の輸入の場合の環境大臣の許可等廃棄物の輸出入についても必要な規制が行われています。
 バーゼル法に基づいて輸出が承認された有害廃棄物等の量は、毎年数百トンから1万数千トンとばらつきがあり、平成12年の1月から12月までの1年間では7,448トンとなっています。相手国はベルギー、カナダ、ドイツ、韓国、米国等であり、品目としては、はんだくず、鉛蓄電池やレンズ付フィルム等であり、いずれも銅、鉛、錫等の回収・再生利用を目的としたものでした。一方、バーゼル法に基づき輸入が承認された量は毎年数千トンから1万トン程度であり、平成12年の1月から12月までの1年間では10,231トンとなっています。相手国はオーストリア、フランス、オランダ、米国、韓国、シンガポール、フィリピン等で、品目としては、貴金属の粉、使用済み触媒、ガラスのくず等であり、いずれも銅、銀、鉛等の金属の回収等を目的とするものでした。
 また、バーゼル条約やバーゼル法等の周知を図り、廃棄物の不法輸出を防止するためのバーゼル法等説明会を全国各地で税関等の協力を得て開催するとともに、環境省・経済産業省において輸出入に関する事前相談を行いました。

前のページ 次のページ