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第6節 

3 酸性雨の防止

 酸性雨問題に関しては、北米やヨーロッパでは湖沼や森林等の生態系あるいは遺跡等の建造物などへの影響が早くから問題となり、1979年(昭和54年)に締結された「長距離越境大気汚染条約(ウィーン条約)」に基づき国際的取組が進められてきました。
 東アジア地域においても、各国の経済発展に伴い硫黄酸化物、窒素酸化物の排出量が増大することが予測されるなど、酸性雨問題が現実のものとなりつつあることから、酸性雨による悪影響を未然に防止するために国際的取組を進めることが急務となっています。
 このため、「東アジア酸性雨モニタリングネットワーク構想*」を提唱し、東アジア各国及び関係国際機関の専門家の参加によるネットワークの実現に向けて努力してきました。

*東アジア酸性雨モニタリングネットワーク構想
東アジア地域における地域協同の取組の第一歩として、東アジアにおける酸性雨問題の状況に関する共通の理解を形成すること、酸性雨による環境への悪影響を防止もしくは減少させるために、地方・国・地域レベルの意思決定に有益な情報を提供すること等を目的として酸性雨モニタリングのネットワークを設立することを目指すもの


 1998年(平成10年)の第1回政府間会合において、ネットワークの試行稼働を1998年(平成10年)4月から実施することを決定したほか、試行稼働期間中のモニタリングデータの集約・解析・保管、精度保証・精度管理等を行う暫定ネットワークセンターとして、財団法人日本環境衛生センター・酸性雨研究センター(新潟県)を、また暫定事務局として環境省を指定すること等を決定しました。試行稼働には、10か国(中国、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、モンゴル、フィリピン、ロシア、タイ、ベトナム)が参加し、計38か所のモニタリング地点において、モニタリングガイドライン・技術マニュアル等に基づく酸性雨モニタリングが実施されたほか、各国専門家による暫定科学諮問グループ(ISAG)会合、政府代表による政府間作業グループ会合の場で、試行稼動の進捗状況及びその評価、今後の課題等が検討されました。
 2000年(平成12年)10月に開催された第2回政府間会合では、試行稼働の成果を踏まえた上で「共同声明」を採択し、ネットワークの本格稼働を2001年(平成13年)1月から開始することを決定したほか、ネットワーク本格稼働における事務局として国連環境計画(UNEP)を、また科学・技術面の中心となるネットワークセンターとして(財)日本環境衛生センター・酸性雨研究センターをそれぞれ指定しました。これを受け、東アジア酸性雨モニタリングネットワークは参加10か国において2001年(平成13年)1月から本格稼働を開始しています。
 2001年(平成13年)11月に開催された第3回政府間会合では、東アジア酸性雨モニタリングネットワーク事務局を国連環境計画(UNEP)に設置するための具体的提案、手続規則、データ・情報公開規則等、ネットワークの本格稼働の基盤を固める重要事項が決定されました。また、ネットワークへのカンボジアの参加が承認されました。同月開催された第1回科学諮問委員会(SAC)では、科学的、技術的な観点から、本格稼働における各国のモニタリング計画、2000年酸性雨モニタリングデータ、精度保証・精度管理プログラムの実施状況等が検討され、技術資料の承認が行われました。
 2002年(平成14年)1月には、国連環境計画(UNEP)アジア太平洋地域資源センター(バンコク)が東アジア酸性雨モニタリングネットワーク事務局としての機能を開始しています。

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