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第10節 

2 公害紛争処理等

(1)公害紛争の処理状況
 公害紛争については、公害等調整委員会及び都道府県に置かれている都道府県公害審査会等が公害紛争処理法の定めるところにより処理することとされています。
 公害紛争処理法に定められている公害紛争処理手続には、あっせん、調停、仲裁及び裁定の四つがあり、これらのうち裁定には、公害に係る被害についての損害賠償責任の有無及び賠償すべき損害額を判断する責任裁定と、加害行為と被害の発生との間の因果関係の存否のみについて判断する原因裁定の2種類があります。
 公害等調整委員会は、裁定を専属的に行うほか、重大事件(水俣病やイタイイタイ病などの事件)、広域処理事件(航空機騒音や新幹線騒音)等について、あっせん、調停及び仲裁を行い、都道府県公害審査会などは、それ以外の紛争について、あっせん、調停及び仲裁を行っています。

 ア 公害等調整委員会に係属した事件
 平成13年中に公害等調整委員会が受け付けた公害紛争事件は5件で、これらに前年から繰り越された7件を加えた計12件(調停事件6件、責任裁定事件5件、原因裁定事件1件)が平成13年中に係属しました。係属した事件の内訳は、次のとおりです。
 (ア)調停事件
 1) 中海本庄工区干陸事業水質汚濁被害等調停申請事件 2件
 2) 四日市市産業廃棄物処分場水質汚濁防止等調停申請事件 1件
 3) 水俣病に係る損害賠償調停申請事件 1件
 4) 核融合科学研究所重水素実験中止調停申請事件 1件
 5) 清瀬・新座低周波騒音被害等調停申請事件 1件

 (イ)責任裁定事件
 1) 尾鷲市における養殖真珠被害責任裁定申請事件 1件
 2) 佐伯市における養殖真珠被害責任裁定申請事件 1件
 3) 奄美大島における漁業被害等責任裁定申請事件 2件
 4) 横浜市における振動・低周波音被害責任裁定申請事件 1件

 (ウ)原因裁定事件
 1) 杉並区不燃ゴミ中継施設健康被害原因裁定申請事件 1件
 このうち平成13年中に終結した事件は、中海本庄工区干陸事業水質汚濁被害等調停申請事件2件ほか3件で、残り7件が平成14年に繰り越されました。

 イ 都道府県公害審査会などに係属した事件
平成13年中に都道府県の公害審査会などが受け付けた公害紛争事件は31件で、これに前年から繰り越された48件を加えた計79件(調停事件78件、義務履行勧告申出事件1件)が平成13年中に係属しました。このうち平成13年中に終結した事件は29件で、残り50件が平成14年に繰り越されました。

 ウ 公害紛争処理に関する連絡協議
 公害紛争の適切な処理を図るため、公害紛争処理連絡協議会、公害紛争処理関係ブロック会議等を開催し、公害等調整委員会及び都道府県公害審査会等の相互の情報交換・連絡協議に努めました。

(2)公害苦情の処理状況
 ア 公害苦情処理制度
 公害に関する苦情は、地域住民の生活に密着した問題であり、その適切な処理は、住民の生活環境を保全するためにも、また、将来の公害紛争の未然防止のためにも極めて重要です。
 このような観点から、公害紛争処理法においては、地方公共団体は、関係行政機関と協力して公害に関する苦情の適切な処理に努めるべきものと規定され、さらに、都道府県及び市区町村は公害苦情相談員を置くことができるとされています。
 また、公害等調整委員会は、地方公共団体の長に対し、公害に関する苦情の処理状況について報告を求めるとともに、地方公共団体が行う公害苦情の適切な処理のための指導、情報の提供を行っています。

 イ 公害苦情の現状
 平成12年度に全国の地方公共団体の公害苦情相談窓口が受け付けた苦情件数は、8万3,881件です。
 このうち、大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、騒音、振動、地盤沈下及び悪臭のいわゆる「典型7公害」の苦情件数は6万3,782件で、前年度に比べて4,867件(8.3%)増加しました。

 ウ 公害苦情の処理状況
 平成12年度において、典型7公害の苦情について、公害苦情の申立てから処理までに要した期間をみると、1か月以内に71.3%が処理されています。

 エ 公害苦情処理に関する指導等
 地方公共団体が行う公害苦情の処理に関する指導等を行うため、公害苦情の処理に当たる地方公共団体の担当者を対象とした公害苦情相談研究会及び公害苦情相談員等ブロック会議を開催しました。

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