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第2節 

7 環境保全の具体的行動の促進

(1)環境保全型製品・サービスの利用促進
 社会経済システムを環境への負荷の少ないものに変えていくためには、製品・サービスの消費に当たっても環境への負荷を考慮した行動をとることが重要です。このため環境基本法においても、環境への負荷の低減に資する製品等の普及促進を行うことが、国の重要な施策として位置付けられています。
 環境への負荷の少ない製品等の普及を図るためには、製品等に関する環境への評価手法を確立していくことが重要です。このため、製品等による環境への負荷を原料調達、生産、消費・使用、廃棄という一連のプロセスにおいて定量的、科学的、客観的に把握・評価する手法(ライフサイクルアセスメント:LCA)について、関係府省間及び産学官の連携の下に、データベースの構築や環境影響評価(インパクト評価)手法及び製品の選択に利用可能な意思決定手法について各種調査研究等を行いました。
 環境保全に資する製品の普及促進のため、環境省では、平成元年よりエコマーク制度の育成を行ってきており、平成14年3月末現在、エコマーク対象商品類型数は68、認定商品数は5,014となっています。
 さらに、日本のエコマーク、アメリカのグリーンシールなどの世界のエコラベルの実施機関が情報交換、基準の国際調和に向けた検討等のために設立した「世界エコラベリングネットワーク」に対し、情報交換等が円滑に実施されるよう、各国のエコラベルの実態調査等を通じ支援を行いました。
 また、わが国におけるグリーン購入(環境への負荷が少ない商品やサービスを優先して購入すること)の取組を促進するため、企業・行政・消費者によって平成8年2月に設立された「グリーン購入ネットワーク」に対し、引き続き支援を行っています。

(2)民間団体等による環境保全のための活動の推進
 近年、欧米諸国を中心として、民間団体による地球環境保全のためのさまざまな活動が活発となっています。わが国においても、国内の環境保全にとどまらず、開発途上国を中心とした海外においても、植林や野生生物の保護などの環境保全活動を展開する民間団体が増えており、これらの活動に対する国民各界の関心も高まってきました。地球環境保全のためには、こうした草の根の環境協力や幅広い国民の参加による足元からの行動が極めて重要であり、特にわが国においては、自らの経済社会活動の見直し、開発途上国への支援強化の両面で民間団体(いわゆるNGO)の活動の強化が必要であることから、これらの活動を支援することが喫緊の課題となっています。
 平成12年12月に閣議決定された環境基本計画においては、各主体の自主的積極的行動のための主要な施策として、「環境保全の具体的行動の促進」を掲げ、「民間団体の活動の支援」を行っていくこととしています。
 環境省では、地域環境保全基金等による地方公共団体の環境保全活動促進施策を支援するため、関連する情報の収集、提供等を行いました。
 また、NGOの優れた政策提言を環境政策に反映することを目的にNGO環境政策提言フォーラムの開催を支援しました。
 環境事業団は、政府の出資及び民間の出えんにより設けられた「地球環境基金」により、内外の民間団体が開発途上地域において行う植林、野生生物の保護等の活動やわが国の民間団体が国内で行う緑化、リサイクル等の活動に対する助成及び人材の育成を図る場所としての「地球環境市民大学校」等を実施しました。このうち、助成事業については、平成13年度において、各方面の民間団体から寄せられた合計552件の助成要望に対し、223件、総額約7.9億円の助成決定が行われました(表2-2-4)。



 なお、外務省のNGO事業補助金及び草の根無償資金協力、総務省の寄附金付郵便葉書等による寄附金の配分(地球環境保全活動に対する平成13年度支援実績:15団体、約0.6億円)及び国際ボランティア貯金*の寄附金の配分(同実績:13事業、約0.5億円)等においても、対象の一部として民間の団体による現地住民参加の環境保全活動が取り上げられ、支援が行われています。

*国際ボランティア貯金
通常郵便貯金の税引後の受取利子の一部(寄付の割合は20%から100%までの間の10%単位で選択)を、開発途上地域の人々の福祉の向上のために寄附していただく貯金

(3)事業者における公害防止管理制度の実施の推進
 工場における公害防止体制を整備するため、特定工場において公害防止に関する業務を統括する公害防止統括者、公害防止に関して必要な専門知識及び技能を有する公害防止管理者等の選任が義務付けられており、約2万の特定工場において公害防止組織の整備が図られています。
 同法による公害防止管理者等の資格取得のために国家試験及び資格認定講習が行われ、現在までの有資格者の総数は、50万653人です。

 ア 公害防止管理者等国家試験
 公害防止管理者等国家試験については、昭和46年度以降毎年実施されており、平成13年度の国家試験は、平成13年9月と10月に実施し、合格者数は6,055人です。平成13年度までの合格者数は27万5,060人です。

 イ 資格認定講習
 公害防止管理者等の資格を取得するには、前述のほかに、資格認定講習を修了する方法があります。この制度は、一定の技術資格を有する者又は公害防止に関する実務経験と一定の学歴を有する者に受講させ、修了した者に、国家試験に合格した者と同一の資格を付与するものです。なお、平成12年度までの資格認定講習の修了者数は22万5,593人です。

(4)各主体のパートナーシップの下での取組の促進
 さまざまな立場の主体が複雑に関係している今日、持続可能な社会を実現するためには、社会を構成する各主体が相互に連携・協力して環境保全に向けて取り組むことが重要です。このため、環境省では、事業者、市民、民間団体等のあらゆる主体のパートナーシップによる取組の支援のための情報や交流機会を提供する拠点として、国連大学との共同事業として同大学本部施設内(東京)に「地球環境パートナーシッププラザ」を開設しています。また、環境保全についての助言・指導を行う人材を確保するため「環境カウンセラー登録制度」に基づき、平成13年度までに環境カウンセラー2,966名(事業者部門1,837名、市民部門1,129名)の登録を行い、その資質の向上と相互の情報交流の促進を目的とした研修を開催しました。

(5)環境負荷の少ないライフスタイルへの転換の促進
 地球温暖化問題をはじめとする環境問題においては、国民一人ひとりが排出する環境負荷物質について特に注目されており、環境負荷の少ないライフスタイルが国民に定着することが望まれています。そのため、環境省では、平成11年7月に指定された全国地球温暖化防止活動推進センターを中心に、普及啓発活動等を積極的に推進するとともに、温暖化防止に貢献する「地球温暖化対策地域推進モデル事業」等を展開しました。
 地球環境にやさしいライフスタイルを実現するため、「地球環境と夏時間を考える国民会議」報告書を踏まえ、世論調査による最近の国民意識の把握や普及啓発を実施しました。また、地球温暖化防止の観点から国民一人ひとりのライフスタイル変革を促すことを目的とした「環の国くらし会議」を設置しました。
 地球温暖化防止に向けた取組の推進については、消費者のライフスタイル変革の視点から引き続き「環の国くらし会議」の場等を通じて検討するとともに、国民的な取組の促進に向けて、家庭で身近に取り組める事例の紹介等の情報発信を行っています。
 また、省資源・省エネルギー国民運動の推進に当たり、関係府省において環境問題に的確に対応し、地球環境と調和したライフスタイルの形成に資するための普及啓発等を行っており、内閣府においては、地球環境と調和したライフスタイルの形成促進のため、省資源・省エネルギー国民運動の展開を図るとともに各種の普及啓発活動等を行いました。

(6)環境NGO活動等への支援
 環境保全活動を行うNGOの支援については、環境事業団において、「地球環境基金」(出資金5億円、補助金8億円)を活用し、国際的な活動、NGO情報公開のための基盤整備を含むさまざまな活動への助成や、セミナーの開催等NGOのキャパシティビルディングのための事業を行いました。
 また、寄附金付郵便葉書等に付加された寄附金や国際ボランティア貯金の寄附金の一部を環境保全活動を行う団体に配分しています。また、地域住民の参加により策定される構想に基づき、森林の整備等を実施しました。さらに、「里山利用林」の設定や「森林の育て親」の募集、新たな保全・利用活動の立ち上げに対する支援等を行う「里山林の新たな保全・利用推進事業」を実施し、自立的な活動を通じた里山林や都市近郊林の保全・整備・利用を推進しました。
 加えて、一般市民が参加して森林の整備・保全活動を行う森林ボランティア活動を促進するため、みどりの募金等による活動への助成等を実施しました。

(7)農業者による環境保全のための活動の推進
 農業の生産面についてみると、近年、たい肥等の施用量が著しく低下してきている等土づくりがおろそかになる一方で、化学肥料・農薬への過度の依存による営農環境の悪化がみられるなど、環境と調和のとれた持続的な農業生産が立ち行かない事態も生じてきています。また、農産物の消費面についてみると、有機農産物等化学肥料・農薬の使用を控えた農産物に対する消費者・実需者のニーズが高まってきています。こうした状況に対処するためには、家畜排せつ物等の有効利用により得られるたい肥等を活用した土づくりと化学肥料・農薬の使用の低減を行う農業生産方式の浸透を図ることが急務となっています。
 そのため、土づくりを基本として化学肥料・農薬の使用の低減を一体的に行う「持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律」に基づき認定された農業者への支援等を実施し、環境と調和のとれた持続的な農業生産を推進してきました。

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