前のページ 次のページ

第2節 

2 経済的措置

(1)経済的助成
 ア 環境保全事業の助成
 (ア)環境事業団による助成
  a 環境事業団の事業
  (a)建設譲渡事業
 集団設置建物、共同福利施設、大気汚染対策緑地、地球温暖化対策緑地、産業廃棄物処理施設・一体緑地について、事業者等からその事業を受託し、工事施行に伴う事業全般を行い、完成施設は建設原価をもって長期かつ低利の条件で譲渡する事業です。
  (b)廃棄物処理技術の開発等事業
 次世代廃棄物処理技術基盤整備事業、リサイクル需給情報交流促進事業として、廃棄物の処理に関する技術を開発し、その成果を普及するほか、廃棄物の処理の促進のため必要な調査研究、情報の収集、整理及び提供を行う事業です。
  (c)環境浄化機材貸付事業
 土壌又は地下水の汚染を防止するため、その原因となる物質の除去に必要な排ガス処理装置、排水処理装置などの機材の貸付けを行う事業です。
  (d)地球環境保全事業
 地球環境問題への対応として、開発途上地域の環境保全に資する情報・技術的知識を提供する海外環境情報提供事業、開発途上地域からの技術研修員に対して技術的知識を習得させる研修事業、地球環境基金により、民間団体が行う地球環境保全のための活動に対する助成その他の支援事業を行っています。
  b 平成13年度の事業
 平成13年度の建設譲渡事業に係る事業計画額は、271億円でした。また、地球環境基金事業を実施するため、環境事業団補助金として8億円を予算措置しました。

 (イ)その他の政府関係機関による融資
  a 小規模企業設備資金制度による融資
 小規模企業設備資金制度は、「小規模企業者等設備導入資金助成法*」に基づき、小規模企業者の創業及び経営基盤の強化を促進することを目的として、各都道府県に設立されている貸与機関が窓口となって、個別の小規模企業者に対して貸付けを実施(設備資金貸付事業)したり、割賦販売・リース(設備貸与事業)を行うものです。この一環として、公害防止施設(告示で定める施設)に対しても融資等を行いました。

*小規模企業者等設備導入資金助成法
昭和31年5月22日法律第115号

  b 中小企業金融公庫、国民生活金融公庫及び沖縄振興開発金融公庫による融資
 中小企業金融公庫、国民生活金融公庫及び沖縄振興開発金融公庫による産業公害防止施設等に対する特別貸付を行いました。
  c 高度化事業制度に基づく融資
 都道府県及び中小企業総合事業団が行う高度化融資制度では、中小企業構造の高度化に寄与する事業を行う中小企業者に対し、長期・低利の融資を行うものです。この一環として住工混在の解消等を目的として工場適地に移転する工場の集団化事業に対して、融資を行いました。
  d 日本政策投資銀行による融資
 環境水準の維持・向上のために、公害防止施設、廃棄物対策設備、都市環境整備事業や環境関連技術開発などに対して融資を行いました。
  e 農林漁業金融公庫による融資
 畜産経営に起因する環境汚染の防止を図り、あわせて生産性の高い畜産経営の育成に資するため、農林漁業金融公庫から畜産経営環境保全に係る資金として、地域及び経営の実情、環境汚染の実態等に応じた環境保全対策に必要な家畜排せつ物処理施設の設置等に要する資金を融通しました。
  f 金属鉱業事業団による融資
 「金属鉱業等鉱害対策特別措置法*」に基づく使用済特定施設に係る鉱害防止事業に必要な資金、鉱害防止事業基金への拠出金及び「公害防止事業費事業者負担法*」による事業者負担金に対して融資を行いました。

*金属鉱業等鉱害対策特別措置法
昭和48年5月1日法律第26号

*公害防止事業費事業者負担法
昭和45年12月25日法律第133号

 イ 税制上の措置
 平成13年度税制改正においては、公害防止用設備の特別償却制度の対象設備へのPCB廃棄物処理施設、フロン回収装置及びフロン破壊装置の追加、自動車税について、排出ガス及び燃費性能の優れた環境負荷の小さい自動車はその排出ガス性能に応じ税率を軽減し、新車新規登録から一定年数を経過した環境負荷の大きい自動車は税率を重くする特例措置(いわゆる「自動車税のグリーン化」)などが講じられました。

(2)経済的負担
 ア 基本的考え方
 環境への負荷の低減を図るために経済的負担を課す措置については、その具体的措置について判断するため、地球温暖化防止のための二酸化炭素排出抑制、都市・生活型公害対策、廃棄物の抑制などその適用分野に応じ、これを講じた場合の環境保全上の効果、国民経済に与える影響及び諸外国の活用事例等につき、調査・研究を進めました。

 イ 具体的な取組事例
 平成13年度においては、経済的措置の導入に向け検討が深められた事例として、以下のようなものがあります。

 (ア)政府における環境関連税の検討状況
 平成13年9月にまとめられた「改革工程表」においては、京都議定書の実施に必要な体制整備の一環として排出権取引、環境に関する税・課徴金などの経済的な手法について検討を進めることとしています。
 平成13年10月、中央環境審議会は地球温暖化対策税制専門委員会を設置しました。この専門委員会では、地球温暖化防止のための税制について、わが国の実情にあった制度面の検討を行っており、12月には「わが国における温暖化対策税制に係る制度面の検討について(これまでの審議の取りまとめ)」を公表しました。
 また、政府税制調査会は、平成13年12月の「平成14年度の税制改正に関する答申」において、地球温暖化問題をはじめとする環境問題に対する税制面の対応について、国民に広く負担を求めることになる問題であり、国民の理解と協力が得られることが不可欠との認識に立ちつつ「具体的な検討を進めていく」こととしています。

 (イ)地方公共団体における環境関連税導入の動き
 平成12年4月の「地方分権推進一括法*」の施行により地方税法の一部が改正され、法定外普通税の許可制から同意制への移行、法定外目的税制度の新設など、地方公共団体の課税自主権の強化が図られました。

*地方分権推進一括法
「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律」平成11年7月16日法律第87号

 これを受け、各地方公共団体において法定外普通税及び法定外目的税の導入の検討が進められています。特に、産業廃棄物の排出量又は処分量を課税標準とする税について検討している地方公共団体が最も多くなっています。三重県では、全国に先駆けて「三重県産業廃棄物税条例(平成13年6月)」が成立し、産業廃棄物税の導入が決定しました。産業廃棄物税額から賦課徴収に要する費用を控除して得た額を産業廃棄物の発生抑制、再生、減量、その他適正な処理に係る施策に要する費用に充てるとしています。県内・県外を問わず産業廃棄物を排出する事業者が納税義務者であり、課税標準は最終処分場への搬入の場合は当該産業廃棄物の重量、中間処理施設への搬入の場合は当該産業廃棄物の重量に一定の処理計数を乗じた重量となっています。税率は1トンにつき1,000円とされています。

 (ウ)ロードプライシング
 「ロードプライシング」とは、道路混雑の緩和、環境の改善等を目的として、道路を通行する自動車に課金等を行うことをいいます。わが国での導入事例はありませんが、海外においてはシンガポールなどで導入されています。
  a 首都高速道路等における試行的実施
 有料道路の料金に格差を設けることによって、住宅地域に集中していた交通を湾岸部に転換し、住宅地域の沿道環境を改善する「環境ロードプライシング」について検討が進められ、平成13年度より首都高速道路、阪神高速道路において試行的実施が開始されました。
  b 東京都の取組
 東京都は、「ディーゼル車NO作戦」の一環として、ロードプライシングについて検討を進めています。

前のページ 次のページ