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第6節 

4 二次的自然環境の維持、形成

(1)森林、農地、水辺地等における自然環境の維持・形成
 ア 森林
 (ア)森林計画
 森林の有する多面的な機能を持続的に発揮させるため、重視すべき機能に応じて森林を区分することとするなど森林計画制度の見直しを行いました。これを受けて全国森林計画を変更するとともに全国158の全森林計画区において民有林・国有林の連携を図りつつ、民有林については地域森林計画の樹立又は変更につき助言助成するとともに、国有林については国有林の地域別の森林計画の樹立又は変更を行いました。
 また、市町村森林整備計画の樹立又は変更及びこれに即した計画的な森林整備等の推進につき助言助成しました。
 さらに、持続可能な森林経営に関する基準・指標に係るデータ等を把握するとともに、その変化を継続的にモニターし、持続可能な森林経営の推進及び地域森林計画等の樹立に資するため、森林資源モニタリング調査を引き続き実施しました。
 (イ)林地開発許可制度
 林地開発許可制度の適正・円滑な運用を図るため、都道府県知事が行う許可処分及び連絡調整に必要な審査、監督等につき助言しました。
 (ウ)保安林
 山地災害防止、水源のかん養、自然環境の保全・形成、保健休養の場の提供等の森林の有する公益的機能を高度に発揮させるため、保安林整備計画に基づき、特定保安林の指定を行い、また、保安林の適正な維持管理に努めました。なお、保安林の指定面積は平成12年度末で約954万haです。
 (エ)森林整備事業
 水土保全機能の高度発揮、森林と人との共生の促進等森林の多面的機能が十分に発揮されるよう、森林整備事業を計画的かつ着実に推進しました。
 特に保育・間伐の着実な実施、天然力も活用した多様性に富む育成複層林の造成等自然環境の保全に資する森林整備等を実施しました。
 (オ)森林の保全管理
 森林病害虫等防除法等に基づき、森林病害虫等の防除等を実施しました。特に、松くい虫被害対策については、環境の保全に配慮しつつ、各種防除措置等を総合的に実施しました。このほか、保全管理水準の維持・向上を図るべき森林について、森林保全推進員等による森林パトロールや林野火災予防資機材の配備等の保全管理活動、防火森林、防火林道の整備について助成するとともに、全国山火事予防運動の実施等啓発活動を推進しました。
 国民参加による森林づくりを図るため、分収林制度を積極的に推進しました。また、「緑と水の森林基金」を活用し、国民の期待にこたえた森林資源の整備、利用等に関する総合的な調査研究、普及啓発等を推進しました。
 国有林野については、平成10年10月に成立した「国有林野事業改革関連法」に基づき、その管理経営の方針を公益的機能の維持増進を旨とするものへ転換し、これまで国有林野全体の5割を占めていた木材生産林を資源の循環利用林として2割に縮小する一方、山地災害の防止、水源のかん養等の機能発揮を重視する森林を水土保全林に、森林生態系の保全、保健文化等の機能発揮を重視する森林を森林と人との共生林に区分し、これらをいわゆる公益林として8割に拡大し、このような区分に基づき林木だけでなく下層植生や動物相、表土の保全等森林生態系全般に着目した森林施業を行いました。
 (カ)里地里山の保全
 身近な里山林や都市近郊林については、かつては薪炭材の伐採、落葉の採取等人々の生活の中で継続的に利用され維持・管理されることによって多様性豊かな二次的自然環境を形成してきたところです。
 このため、森林の新たな利用を推進する中で、多様な利用活動の場となる「里山利用林」の設定、利用活動を通じてその保全・整備に寄与する「森林の育て親」の募集、新たな保全・利用活動の立ち上げに対する支援等を行う「里山林の新たな保全・利用推進事業」を実施し、行政、森林所有者、地域や都市の住民等の連携・協力による自立的な保全・整備・利用活動を推進しました。

 イ 農地
 農村で農業生産活動が行われることにより生じる景観の形成等の多面的機能については、国民生活及び国民経済の安定にとって重要な役割を果たしており、将来にわたって適切かつ十分に発揮されなければなりません。ため池等の周辺において生態系空間(ビオトープ)を保全する事業や生活環境の整備等を生態系の保全に配慮しながら総合的に行う事業等に助成し、多様な生物相と豊かな環境に恵まれた農村空間(エコビレッジ)の形成を促進するほか、農村地域に存在する生物の生息・生育地(樹林、池等)と農業用施設とのネットワーク化等、生物多様性を確保するための手法開発を進めました。
 地域住民活動を通じた土地改良施設や棚田等の保全を推進するための調査研究、人材育成、保全活動等への支援のほか、農村地域の美しい景観や環境を良好に整備、管理していくために、地域住民、地元企業、地方公共団体等が一体となって身近な環境を見直し、自ら改善していく地域の環境改善活動(グラウンドワーク)の推進を図るための事業を行いました。
 また、自然環境の維持・形成に資するため、農業集落排水事業を促進するとともに、地域の実情に応じ、特定環境保全公共下水道等の整備を進めました。
 農業においては、土づくり等を通じ化学肥料・農薬の使用の低減を図る環境保全型農業の全国的な展開の一層の推進を図るため、たい肥等の活用による土づくりと局所施肥、天敵利用等による化学肥料・農薬の使用の低減を一体的に行う生産方式である「持続性の高い農業生産方式」を導入しようとする農業者に対し、金融・税制上の特例措置を講じました。また、この持続性の高い農業生産方式の普及・定着のため、生産方式導入の拠点となる技術確立ほ場や土壌診断施設の整備を進めるとともに、たい肥等を含めた適正使用指針の策定や技術情報の普及資料の作成等の地力増進対策の実施、有機性資源の循環利用促進等を重点的に実施し、農業のもつ自然循環機能の維持増進を図りました。また、家畜排せつ物の適正な処理と耕種農業におけるたい肥の利用を促進するため、畜産環境保全に関する農家指導及び耕種部門との連携、家畜排せつ物の処理利用施設の整備等を行いました。
 市街化区域内農地のうち、生産緑地地区に指定されたものについては、緑地としての機能が維持されるよう適正な保全を図ったほか、都市住民の交流の場としての活用を図るため、市民農園整備事業等により市民農園の整備を推進しました。
 さらに、自然と共生し、海域及び内水面において、生態系に配慮した漁場、海岸等の環境の維持・修復及び創造を進めるための基本構想(「マリン・エコトピア21」構想)に基づき、関連対策事業を計画的かつ総合的に実施するための全体計画を策定しました。
 また、全国的にみて特にすぐれた水浴場を選定し顕彰した「日本の水浴場55選」(平成10年3月選定)については、選定後3年目となることから見直しを行い、「日本の水浴場88選」として、新たに選定を行いました。
 さらに、水浴場及びその周辺地域などにおいて、自然環境を学習・体験する施設や水質浄化施設等を整備することにより、すぐれた水環境を維持・創出し、水や水辺の豊かな自然と人とのふれあいを促進する目的で創設した「ふるさとふれあい水辺整備事業」について、平成12年度は新規1か所(広川町)と継続3か所(新潟市、北九州市、宮崎市)において事業を実施しました。

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