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第2節 

5 多様な有害物質による健康影響の防止

(1)多様な有害物質による大気汚染対策
 ア 固定発生源対策
 有害大気汚染物質による国民の健康被害を未然に防止するため、平成8年5月に大気汚染防止法が改正され、有害大気汚染物質対策が位置付けられました(平成9年4月1日施行)。
 これを受け、有害大気汚染物質に関する具体的な対策の在り方について中央環境審議会で審議が進められ、平成8年10月及び12月の2度にわたり答申がなされました。これらの答申においては、1)微量であってもがんを発生させる可能性が否定できず、閾(いき)値*がないと考えることが適切な物質に係る環境基準の設定等に当たってのリスクレベルについて、生涯リスクレベル10−5(10万人に1人の割合の生涯リスクレベル)を当面の目標とすること、2)有害大気汚染物質に該当する可能性がある物質(234種類)のリストと、優先取組物質(22種類)のリスト(表1-2-14)、3)ベンゼン、トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンの環境基準設定に当たっての指針値、4)指定物質等の排出抑制のあり方、5)有害大気汚染物質のモニタリングのあり方等の基本的考え方が示されました。

*閾(いき)値
その暴露量以下では影響がおこらないとされる値



 これを受けて、平成9年1月、大気汚染防止法に基づき、ベンゼン、トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンを指定物質に指定し、指定物質排出施設を定めるとともに、同年2月には指定物質抑制基準及び環境基本法第16条に基づく環境基準を設定しました。ジクロロメタンについては、平成12年12月の中央環境審議会の答申を受け、平成13年4月、環境基本法第16条に基づく環境基準を設定しました。
 さらに、有害大気汚染物質の排出抑制に係る事業者の自主的取組を促進するため、平成8年10月、環境庁と通商産業省において「事業者による有害大気汚染物質の自主管理促進のための指針」を策定し、平成9年度からの3年間にわたり、自主的取組による排出の削減を実施しました。
 改正大気汚染防止法において、法施行後3年(平成12年度)を目途に有害大気汚染物質対策の制度のあり方を検討することとされており、中央環境審議会において審議が行われ、従来の事業者団体単位による自主管理をさらに進め、これに加えて、ベンゼンの高濃度地域を対象として、新たな地域単位の自主管理を実施すること等を内容とする答申が平成12年12月になされました。また、化学品審議会において、自主管理による有害大気汚染物質対策の評価と今後のあり方について審議が行われ、同様の内容の報告が平成12年12月になされました。
 答申及び報告を踏まえ、環境省と経済産業省は、平成13年6月、指針を改正し、関係業界団体に対して、平成11年度年間大気排出量を基準とし、平成15年度の年間大気排出量についての目標を定める個別業界団体の自主管理計画及びベンゼンについて環境基準を高濃度で超過している5地域を対象とした地域自主管理計画の策定を要請し、新たな対策を推進しています。新たな指針に基づく自主管理計画については、中央環境審議会及び産業構造審議会において、把握、評価されたところです。今後、自主管理による排出抑制対策により、これらの事業場からの自主管理対象物質の大気への排出は削減する見込みです。

 イ 自動車排出ガス対策
 自動車排出ガスに係る有害大気汚染物質対策については、平成9年第二次答申、平成10年第三次答申及び平成12年第四次答申に基づき、有害大気汚染物質を含む炭化水素及び粒子状物質に係る自動車排出ガス規制を強化しました。また、自動車燃料品質に係る有害大気汚染物質対策については平成8年10月の中央環境審議会中間答申において、ガソリン中のベンゼン含有率を1体積%に低減することが示され、同答申に基づき平成11年に規制を強化したところです(表1-2-13)。

(2)石綿対策
 石綿(アスベスト)は耐熱性等にすぐれているため多くの製品に使用されてきましたが、発がん性などの健康影響を有するため、種類によっては、製造・使用が禁止されています。大気汚染防止法では、石綿を「特定粉じん」と指定し、石綿製品等の製造施設には敷地境界規制等が行われています。平成11年度末現在における特定粉じん発生施設の総数は1900施設です。
 また、吹き付け石綿を使用する建築物の解体等作業には作業基準等が定められています。

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