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第3節 

2 環境・社会・経済の安定性の確保

(1)環境と安全保障
 このように、数多くの環境難民が発生していること、環境問題が国際社会における紛争の原因となる場合があること等の現状を背景として、近年、環境と安全保障を関連づけて議論する場面が出てきました。1999年(平成11年)のG8環境大臣会合においても、最終コミュニケに「環境と安全保障」の項目が置かれ、「環境破壊、資源の欠乏及びその結果生ずる社会−政治的影響は、それらが内戦又は国家間の紛争を惹起し、又は悪化させるおそれがあるという点で、安全保障に対する潜在的脅威である。したがって、私たちは、国際的議論において環境への負荷と安全保障の間の関係にますます重要性が付与されつつあるということを歓迎する。私たちは、環境に由来する紛争の回避及び減少に関する課題をどのように進めるか検討する」と宣言しています。
 安全保障には、他国の軍事的な脅威に対し国家の安全を確保するという概念に加え、経済の安定、エネルギーや食料の供給の確保を図るための経済的な安全保障といった概念があります。また、平成10年に、わが国は、「21世紀を人間中心の世紀とすべし」との理念の下、人間個々人に注目し、国家の安全と繁栄を確保しながら人間個人の本来の可能性を実現することを目標とするため、「人間の安全保障」の概念を提起しました。環境と安全保障という概念も、こうした安全保障の考え方の拡大と同じ考え方に基づき、環境の保全が社会経済システムの安定のみならず国際社会の政治的安定にも寄与することを示すものであるということができます。

(2)環境・社会・経済の各側面からのアプローチ
 今日の環境問題は、その原因と影響が一層複雑多様化しており、地球環境の破壊が人々の健康や社会経済システムに直接的な影響をもたらすことが懸念されており、アジェンダ21をはじめとしてさまざまな機会に議論されているように、地球規模での持続可能性を確保するためには、環境・社会・経済の各側面からのアプローチが必要となります。
 世界経済のグローバル化により国境を越えた相互依存が世界全体として一層強まっており、世界のある地域の環境破壊が当該地域の社会経済システムに不安定化をもたらせば、その影響が他の地域へも波及していくおそれが高まっています。資源・エネルギー、食料等を海外に大きく依存しているわが国としては(表3-3-1)、その環境負荷の大きさにもかんがみ、地球規模での持続可能性を確保していくため、積極的な貢献を図っていくことが重要になっています。

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