前のページ 次のページ

第3節 

1 自然環境の劣化がもたらす国際社会の不安定要因

(1)環境難民の発生
 現在、地域紛争の頻発等により世界各地で住居を失って国を離れる多くの難民が発生しており、その数は世界各地で約1,590万人と推定され、国際社会における大きな問題となっています。難民のうち、環境が破壊されたことによって、それまでの居住地を離れなければならなくなった人々は「環境難民」とも呼ばれており、代表的な例として、干ばつ・砂漠化によって居住地をなくしたアフリカの人々の集団移動、チェルノブイリ原発事故による周辺住民の退避等が挙げられます。1998年(平成10年)の世界銀行の推計によれば、環境の悪化による国内及び国際的な人口移動は約2,500万人に達し、紛争に起因する難民の数を超えたものとされました。今後、地球温暖化による海面上昇や、大気汚染、干ばつ、土壌劣化等からさらに大量の環境難民が発生する可能性があります。

(2)国際社会の不安定要因となる環境問題
 このように、環境問題を原因として発生する人口の移動を始め、酸性雨や国際河川の汚染等の国境を越える環境問題が国際社会における不安定さを増す要因になる事例が数多く見受けられます。
 例えば、環境問題が地域紛争の発生を助長した場合として、1977年(昭和52年)〜1978年(昭和53年)のソマリア・エチオピア紛争のように、環境破壊によって放牧民の行動半径が狭まり、その結果、土地や水をめぐる農民との紛争が激化したことが衝突の一因となった事例や、インドネシアでエルニーニョがもたらした森林火災や異常気象により食料生産の甚大な被害が生じ経済的な混乱につながった事例を挙げることができます。

前のページ 次のページ