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第2節 

3 環境対策による波及的な経済効果

(1)環境対策の経済上の効果
 環境対策は企業にとって一般的に費用であると考えられています。確かに、これまで実施していなかった環境対策の費用を新たに負担しなければならない企業にとっては、費用の増加要因となりますが、例えば、その環境対策が高度な省エネルギー・省資源設備の導入であるならば、一時的な設備投資額の増加はその後の省エネルギー・省資源効果による経常費用の低下によって補われ、トータルでは企業にとっての費用を以前より減少させる可能性もあります。
 また、環境関連の設備投資を行う企業にとっては、設備の導入は費用となりますが、当該設備を製造する企業にとっては売上になります。わが国の環境装置生産実績は、昭和41年度には約341億円であったものが、昭和50年度には6,830億円、平成12年度には1兆6,432億円に達しており、この規模だけをみても、環境関連のマーケットは非常に大きいことが分かります(図3-2-7)。さらに、このような設備・機器の製造産業だけでなく、例えば家電製品や自動車のリサイクルのようなリサイクルサービスや、ISO14001の認証機関やESCOのような環境コンサルタントサービスも成長が期待されており、このような環境保全型サービス産業は今後一層成長する可能性があります。



(2)生産誘発効果の分析
 個々の経済活動は、原材料の調達から製造、輸送、消費、廃棄に至る各段階で他のさまざまな部門と相互に関連しており、ある部門の生産量の拡大は他の部門に波及的な効果をもたらします。こうした効果は、産業連関表を用いることにより、ある産業部門で需要が発生したときに、それがどのように他部門に波及し、最終的に全部門でどの程度の生産が誘発されるか、という形で明らかにすることができます。
 環境省では、環境分野における投資による生産誘発効果及び雇用創出効果を具体的に分析してみました。その結果、屋上緑化事業では、植裁に加えて防水層、耐根層、植裁基盤層等が必要となるために石油、ゴム、プラスチック部門の生産が誘発されるほか、自動車のリサイクルセンターの設置ではプレス機やクレーンやフォークリフト等の輸送機械の生産が誘発される等、今回分析を行った環境関連事業は、おおむね建設部門等の他の産業と同程度の生産波及効果を持つことが分かりました。また、就業者誘発数をみると、今回分析を行った環境関連事業には、他の産業と遜色のない雇用効果があることが分かります(図3-2-8)。

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