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第2節 

2 環境対策と雇用

 現在、失業率が戦後最大となっており(平成14年3月の完全失業率は5.2%)、新たな雇用の創出がわが国の経済における重要な課題となっています。ここでは環境対策と雇用の関係について、内外の状況を分析します。

(1)環境対策と雇用に係る分析
 ア OECDにおける分析
 OECDが1997年(平成9年)に発表した「環境政策と雇用」に関する報告書では、環境対策が雇用に与える影響については、経済モデルを用いた分析に基づき、雇用に与える効果は小さいものの、全体としてはわずかにプラスの効果を持つことを示しています(図3-2-4)。また、同じ報告書の中では、多くの国が、環境関連産業を、その技術や製品が環境の改善のためだけでなく、環境関連その他の部門の競争力を高め、それにより雇用を維持、創出する重要な部門として、より戦略的な見地から捉えていることを示しています。



 イ 各国における状況
 次に、各国の環境対策による雇用の創出に係る状況をみると、ドイツでは、2000年(平成12年)の環境白書において、環境分野における雇用規模が約130万人(機械製造業の約115万人、食品関連産業の約100万人を上回る)に達していることが明らかにされており、その増加要因として省エネルギー規制、建築物の断熱化プログラム、再生可能エネルギー促進策等の政府の施策が契機になっていると分析しています(図3-2-5)。フランスでは、若者の雇用創出プログラムにおいて各省庁が関連機関で雇用の機会を設定しており、環境省が教育省に次ぎ、約2万人規模の公的雇用の場を提供しているほか、EUでは、環境関連産業による雇用創出をプログラムとして掲げ、関連施策を積極的に推進しています。また、米国環境保護庁によれば、米国のリサイクル・リユース産業において、自動車製造業に匹敵する約112万人の雇用が創出されており、平均賃金も就労者平均を上回っているとの結果が示されています(図3-2-6)。





(2)わが国における環境関連分野における雇用創出
 ア エコビジネスの市場規模
 環境省が平成12年に行った推計によれば、平成9年現在、エコビジネスの市場規模は24兆7千億円で、年平均伸び率3.7%の成長産業になると見込まれ、平成22年には40兆1千億円に達するとされています。この間、雇用規模は69万5千人から86万7千人に増加するという推計が行われています(表3-2-1)。



 イ 成長産業としての位置付け
 経済財政諮問会議が取りまとめ平成14年1月に閣議決定された「構造改革と経済財政の中期展望」では、循環型経済社会の構築、ゴミゼロと脱温暖化の社会づくり、自然との共生など環境問題への総合的な対応を行い、安心で活気と魅力に満ちた生活環境を創造し、美しい日本を形成することが掲げられ、循環型経済社会に向けた対応により、民間の技術開発や製品開発が活発化し、新たなビジネスモデルが形成され、新規需要や雇用が創出されるとともに、環境問題への対応から生まれた日本の技術・ノウハウ・製品等が、世界のモデルとなり得ることが述べられています。また、産業構造審議会新成長政策部会が平成13年12月に取りまとめた報告書においても、新規・成長産業として具体的に期待される産業の一つとして、環境関連サービス、環境分析関連装置、リユース・リペア、省エネルギー・新エネルギー、低公害車等の環境関連産業が掲げられています。

 ウ 地域の公的部門における雇用創出
 都道府県や市町村において、地域に根ざした新たな雇用を創出するために創設された緊急地域雇用特別交付金(総額2,000億円)の平成11年度及び12年度の類型別実績によれば、印旛沼・手賀沼流域における生活排水実態調査事業(千葉県)、市民ごみ減量緊急モニター調査事業(京都府京都市)、ほたる川クリーン&グリーン作戦事業(徳島県山川町)等、環境・リサイクル分野で類型中最大の398億円(当該期間における総事業費の約30%)の事業が実施され、80,842人(当該期間における総雇用者数の約37%)の雇用が創出されました(表3-2-2)。また、平成13年度第1次補正予算で新たに創設された緊急地域雇用創出特別交付金(3,500億円)においても、身近な自然の再生を含めた森林整備、放置された廃棄物の場所等を明らかにするごみマップの作成等、NPO等の地域の人材を活用しつつ行う環境関連事業が推奨事業例として位置付けられ、その積極的な活用が期待されています。



(3)環境関連分野への人材供給
 環境関連産業の急速な展開が予想される中、環境関連分野における人材需要に確実に対応するため、人材の供給体制も強化されつつあります。環境分野に特化した人材派遣会社の業務部門が次々と誕生しているほか、環境分野における就職相談会の開催や関連書籍等の出版も相次いでいます。また、大学における環境関連学科も著しく増大しており、名称に「環境」を冠するものは国公私立あわせて144大学28学部204学科・課程に達しています。さらに、環境に関連する資格制度にも注目が集まるなど、環境分野に対応した人材の供給は増加基調にあります。

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