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第2節 

3 業種別にみた環境問題への取組内容・取組理由の違い

 これまで、企業が環境保全に係る意識を向上させていること、環境を経営に組み込み、実際に製品・サービスの提供を行いビジネスに結びつけている状況を紹介してきました。
 ここでは、さまざまな企業が環境をビジネスに取り入れている中、各業種の特徴や、置かれている状況等によって、当該業種が実施する環境保全の取組に特徴はみられるのかという観点で、わが国の企業3,764社(大企業:6.9%、中堅企業:26.0%、中小企業:66.8%)を対象に行われた環境保全に関するアンケートにより考察していきます。

(1)取組率の比較
 環境保全に関する取組率については、あらゆる取組を合計した場合、上位は製造業で占められており、その中でも製造段階でエネルギー消費の多い化学、石油・窯業や、最終消費者向けの完成品メーカーである家具・装備品、電気機械、輸送用機械業などで取組率が高くなっています(図2-2-13)。



 次に、環境保全に関する取組率について、素材型製造業・加工型製造業・非製造業に分けて、実施中または検討中の割合をみてみると、素材型製造業の実施中の取組は、産廃削減リサイクルや製造時省資源の割合が高く、検討中の取組は分散化しており、産廃削減リサイクルや製造時省エネといった製造段階の取組に限らず、幅広く取り組んでいこうとする状況がうかがえます。加工型製造業においては、実施中、検討中ともに、内容が多岐に渡っており、グリーン調達や環境配慮設計にも相対的に力を入れて取り組まれている状況がうかがえ、非製造業においては、オフィス省資源に係る取組に集中していることが分かります(図2-2-14)。



(2)取組内容の変化
 次に、取組内容ごとに、実施中又は検討中の割合をみてみると、実施中の取組内容としては、オフィス省資源・産業廃棄物削減リサイクル・製造時省資源・ISO認証取得などが多くなっています。このことは、企業が環境保全に取り組む際に、まず、環境上の効果に加え、製造時の省エネルギーや産業廃棄物の削減などコスト削減にもつながることを、足がかりとして選んでいることがうかがえます。
 一方、グリーン調達・物流効率化・環境情報公開などの分野で、実施中の取組と比較して、検討中の取組の割合が高くなっていることが分かります。このことから、上記の生産段階の環境対応から一歩進んで、素材・部品・サービスの調達段階での取組(グリーン調達)を開始したり、より上流の設計段階での取組(環境配慮設計)を行うほか、輸送段階でも環境保全に配慮して物流の効率化を図るなど、自らの企業活動全体の環境負荷を低減させるため、「環境経営」に取り組もうとしている動きがうかがえます(図2-2-15)。



(3)取組理由の比較
 業種ごとに環境保全に取り組む理由をみてみると、商品の公共性の高い電気・ガス業では「社会的責任」や「企業イメージ」がいずれも首位となっています。自動車メーカーなどを含む輸送用機械業においては、国内外に工場や市場を持っており、ISO14001認証取得などの取組が取引要件とされていることなども反映され、「取引先要請」が高くなっています。出版・印刷では、グリーン購入法や容器包装リサイクル法への顧客対応が影響し、「取引先要請」や「商品競争力」が高くなっていると考えられます(表2-2-5)。



(4)消費者の行動の重要性
 このように、各業種の取組内容や程度の差は、各業種の商品特性・顧客特性・地域特性など、その業界が置かれている状況や、買い手が消費者か否か、海外へ輸出されているのか否か等、顧客である取引先・消費者といった需要側のニーズに大きな影響を受けます。このことは、いい換えれば、複雑な社会経済システムの連鎖の中で、より川下にある業界の取組状況が徐々に川上へと広がっていくという可能性を意味します。さらにいえば最終消費者の意向・行動が、企業の取組を変えていく可能性を示唆しているものと考えられます。

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