3 化学物質の環境リスクの低減に向けて
(1)化学物質の環境リスクの評価の推進
化学物質の利用拡大に伴う環境問題に対して的確かつ迅速に対応するとともに、環境汚染の未然防止を図るため、環境リスクの管理のための施策の基礎となる環境リスクの評価を行うための体制を整備し、推進します。
(2)化学物質の環境リスクの管理
化学物質の環境リスクの管理については、各種の法令に基づく規制を継続します。また、「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」に基づき得られるデータの活用方法について引き続き検討します。
(3)ダイオキシン類問題への取組
ダイオキシン対策については、ダイオキシン対策推進基本指針及びダイオキシン類対策特別措置法に基づき、政府一体となった取組を迅速かつ着実に進めます。
ア ダイオキシン類対策特別措置法の施行
特定施設に対する規制措置の徹底等を図るとともに、環境中のダイオキシン類の存在状況を常時的確に把握し、環境基準及び規制基準の設定・見直しなどの的確な実施を図るため、都道府県等が行う常時監視について助成を行います。
一般国民が立ち入ることができる地域で、土壌環境基準を超過した地域において、対策地域の指定、対策計画の策定等の必要な措置が早急に講じられるよう、都道府県等に助言します。また、対策事業のうち、都道府県等が負担する経費について助成を行います。
また、水質環境基準に関し、生物濃縮に係る検討等を行うため、引き続き科学的知見の収集に努めるとともに、地下水汚染の機構の解明、原因究明手法の確立に向けた調査を推進します。さらに、土壌環境基準等の検証・検討のため、わが国の土壌種、気候、生活習慣等の下で、土壌中のダイオキシン類に起因する健康影響を評価するための各種調査を行います。
さらに、一般廃棄物焼却施設周辺において高濃度のダイオキシン類による土壌等の汚染が判明したこと等を踏まえ、汚染土壌の種々の浄化技術を実証するとともに、多様な対策手法(覆土、植栽、分解処理等)による環境リスクの低減効果や周辺環境への影響を検証することにより、対策技術の総合的体系を構築し、土壌汚染対策を推進します。
廃棄物の最終処分場対策としては、処分場内におけるダイオキシン類の分解・安定化等の長期的な挙動を把握し、維持管理基準等の検証・検討に資するための調査を実施します。
また、臭素化ダイオキシンについてもその毒性や暴露実態に関する知見を収集・整理するとともに、大気、水質等の環境中の濃度を測定します。
イ その他の取組
以上のほか、ダイオキシン対策推進基本指針に基づき、関係省庁が連携し引き続き各種の取組を進めます。
(ア)耐容一日摂取量(TDI*)をはじめとした各種基準等
ダイオキシン法に基づく基準等に係る科学的知見や、ダイオキシン類の人体への摂取経路、食物を通じた生物濃縮等に関する科学的知見の一層の充実を図ります。
*TDI
Tolerable Daily Intake
(イ)ダイオキシン対策推進基本指針に基づくダイオキシン類の排出削減対策
排出インベントリーの更新を行うなど、施策の効果を把握しつつ、未だ明らかになっていない発生源からの排出実態や発生源と環境中の濃度との関連等についての新たな科学的知見をさらに充実させ、必要な対策について検討します。
(ウ)ダイオキシン類に関する検査体制の整備
外部機関や海外施設に検査を委託する場合の信頼性確保のあり方やダイオキシン類分析の的確な精度管理を実現する指針を作成するとともに、分析技術の向上を図るため、地方公共団体の公的検査機関の技術者に対する研修を進めます。
(エ)健康及び環境への影響の実態把握
環境、生物、人体、労働環境、廃棄物焼却施設、産業分野等各方面におけるダイオキシン類について、関係省庁の連携の下で実態把握を行います。
(オ)調査研究及び技術開発の推進
平成11年度に策定した総合的計画に基づき、毒性評価、環境中挙動、人への暴露評価、生物への影響などに関する調査研究及び廃棄物の適正な焼却技術、土壌汚染浄化技術、ダイオキシン無害化・分解技術、精度管理、簡易測定分析などに関する技術開発に取り組みます。
(カ)廃棄物処理及びリサイクル対策の推進
廃棄物の最終処分の適正なあり方について一層の充実を図るため、引き続き埋立地内におけるダイオキシン類の長期的挙動の把握、廃棄物焼却炉である特定施設以外から排出される廃棄物のうちダイオキシン類を高濃度に含む可能性のある廃棄物の把握等に努め、必要な措置を講じていきます。
(キ)国民への的確な情報提供と情報公開
国民に対して、ダイオキシン問題についての理解と協力を得るため、調査研究や技術開発の成果を公開する等、あらゆる機会をとらえ、関係省庁が協力して各種取組を進めます。
(4)リスクコミュニケーションの推進
環境リスクに関する事業者、国民、行政等関係者の共通の理解を促進するリスクコミュニケーションの推進を図るとともに、そのための人材育成を進めます。