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第1節 

3 広域的な問題への対策

(1)酸性雨対策
 ア 対策
 平成12年度は、全国の森林を対象にした「酸性雨等森林衰退対策事業」の3巡目(平成12〜16年度)を実施し、酸性雨等による森林衰退のモニタリングを継続するとともに、通年雨水調査による年間負荷量の算出についての検討等を実施しました。また、世界気象機関(WMO)が推進している全球大気監視(GAW)計画の一環として東京都南鳥島の全球観測所及び岩手県三陸町綾里の地域観測所において、降水・降下じんの化学成分観測を行っています。
 一方、国際的には、東アジア酸性雨モニタリングネットワークが、2001年(平成13年)1月から本格稼働し、東アジア地域における酸性雨モニタリングを共通の手法によって行うことにより、酸性雨の実態及び今後の対策等を国際協力に基づいて検討する基礎が出来上がりました(詳細については第5章第5節3参照)。

(2)光化学大気汚染対策
 光化学オキシダントは、依然として、全国ほとんどの地域で環境基準を超え、また、気象条件によっては注意報が発令される事態が生じていることから、今後とも、汚染状況の推移を的確に把握し、適切な対策を講じていく必要があります。

 ア 光化学大気汚染緊急時対策
 注意報等の発令の判断に必要な気象データを得るため、環境省では、夏季に光化学大気汚染の発生しやすい東京湾ブロック内の2地点で下層大気の気象観測を行い、関係地方公共団体に気象情報の提供を行っています。また、気象庁では、全国19か所の気象官署で光化学大気汚染の発生しやすい気象条件の解析と予報を行い、地方公共団体に通報するとともに、必要に応じスモッグ気象情報を発表して国民への周知を図っています。これら情報と測定局データを基に、地方公共団体では、光化学オキシダント緊急時対策要綱等により注意報等を発令すると同時に、ばい煙排出者に対する大気汚染物質排出量の削減及び自動車使用者に対する自動車の走行の自主的制限を要請するほか、住民に対する広報活動と保健対策を実施しています。
 また、山梨県を含めた関東地域(1都7県)を対象に、大気汚染物質広域監視システムにより、光化学オキシダント、窒素酸化物、非メタン炭化水素、浮遊粒子状物質等の主要な大気汚染物質に関する情報の収集・配信をリアルタイムで行うとともに光化学オキシダントの濃度予測を行っています。平成12年6月からは、収集した大気汚染情報及び光化学オキシダント注意報等の発令状況を、環境省及び国立環境研究所のホームページ上で一般に公開するシステム(愛称:そらまめ君)の運用を開始しました。

 イ 炭化水素類排出抑制対策
 (ア)固定発生源からの炭化水素類排出抑制対策
 固定発生源に対する炭化水素類の排出抑制対策の強化、推進を図るため、「光化学大気汚染防止のための炭化水素類対策の推進について」に基づき、地方公共団体等関係方面に対して、炭化水素類の排出抑制対策の推進について所要の要請を行いました。
 (イ)自動車からの炭化水素排出低減対策
 自動車から排出される炭化水素については、大気汚染防止法に基づく排出ガス規制が昭和48年から実施されており、その後、逐次規制の強化が行われてきています。
 (ウ)光化学大気汚染調査研究の推進
 光化学大気汚染は、広域にわたる極めて複雑な現象であることから、光化学反応機構、移流拡散等の気象の影響、原因物質の排出実態、それらを盛り込んだ光化学大気汚染予測モデル及び対策の低減効果等について調査研究を行ってきています。

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