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第2節 

3 野生生物の個体数管理等

(1)野生鳥獣の保護管理

ア 鳥獣保護事業の推進
 鳥獣保護施策を積極的に推進するため、改定基準に基づき変更された第8次鳥獣保護事業計画に基づき、鳥獣保護区の設定、有害鳥獣駆除及びその体制の整備、違法捕獲の防止等の対策を総合的に推進する。当該計画の推進に当たっては、人と野生鳥獣との共生の確保及び、生物多様性の保全を踏まえて野生鳥獣を適切に保護管理することを基本とする。
 国設鳥獣保護区においては、人と野生鳥獣との共生を図るため、人の利用の適正な誘導、野生鳥獣の生態等に関する普及啓発、鳥獣の生息に適した環境の保全・整備を進めるための施設の整備を推進するほか、保護管理方針を示すマスタープランの策定を進めることにより管理の充実に努める。

イ 適正な狩猟の推進
 狩猟は、適正な管理の下では、野生鳥獣を適正な生息数にコントロールする手段として一定の役割を果たすことから、狩猟による事故防止、違法行為の防止の徹底等適正な狩猟を確保するための関係者への指導を行うとともに、狩猟鳥獣の種類の見直し、捕獲禁止又は制限の見直しに必要な調査・検討を進める。

ウ 鳥獣に関する調査研究の推進
 鳥獣の生息状況等に関する調査については、鳥類観測ステーションにおける標識調査、ガンカモ科鳥類の生息調査、シギ・チドリ類の定点調査等渡り鳥の生息状況調査等を引き続き実施する。
 鳥獣と人との共存を図るための鳥獣の保護管理に関する調査としては、イノシシの個体群の管理に関する基礎的な調査等を実施し、鳥獣の保護管理手法の確立を進める。

エ 農林業被害の被害防止対策
 シカなどによる農林業被害が深刻化していることから、環境庁、農林水産省、林野庁が連携して農林業被害の著しい地域において、「野生鳥獣管理・被害総合対策」を引き続き実施する。この中で、特定鳥獣保護管理計画等による野生鳥獣の保護管理手法を普及・定着させるための野生鳥獣保護管理適正化事業を実施し、また、新たな技術を有する鳥獣管理の中核的な担い手を育成し、将来にわたる鳥獣管理体制の構築を図るため、野生鳥獣管理技術者育成事業を実施する。さらに、都道府県の特定鳥獣保護管理計画による保護管理状況の実態を調査するほか、鳥獣の全国的な生息状況等の動向を把握するため、大型哺乳類の生息分布等の調査を実施するとともに、野生鳥獣保護管理情報システムを運用する。また、農林業被害防止のために防護柵等の被害防止施設の設置、効果的な被害防止技術の確立と被害防止システムの整備等の対策を推進するとともに、新たに農業被害防止に必要な知識の普及を図る。さらに、森林の機能発揮と野生鳥獣との共存をめざした多様な森林の整備等を図る事業等を実施していく。

オ 渡り鳥の保護対策の推進
 渡り鳥の保護対策としては、生息状況調査を引き続き実施するほか、出水平野に集中的に飛来するナベヅル、マナヅルについて、その生息環境を改善し、周辺への農業被害を軽減するために休遊地の確保等の事業を引き続き実施する。

カ 鳥類の鉛中毒事故の防止対策
 近年、鉛散弾や鉛ライフル弾により、ハクチョウ等の水鳥やオオワシ等の猛禽類が中毒死する事故等が発生していることから、平成12年度の猟期から、関係団体等との調整を図りつつ、鉛弾の使用禁止及び無毒の代替弾への切り替え等の措置に段階的に着手する。

(2)水産資源の保護管理の推進

 水産資源の保護・管理については、引き続き、漁業法及び水産資源保護法に基づく採捕制限等の規制や、平成8年7月に成立した「海洋生物資源の保存及び管理に関する法律」に基づき、新たに、海洋生物資源の採捕量に着目した規制を行うとともに、希少な水産動植物を保護するための採捕制限等の規制を行うほか、次の対策を実施する。
? 資源が著しく減少している水産動植物の保護・増殖を図るため、水産資源保護法に基づく保護水面を指定し、所要の管理、調査等を行う。
? 水産資源の持続的かつ高度な利用を図るため、資源管理型漁業を推進する。
? アユやマス類等の放流効果の向上を図るため、放流魚等の迷入量の把握を行うとともに、取水施設や排水口等への迷入を防止するための技術の実用化を図る。
 また、魚類の遡上を円滑にし適正な河川流量を流下させて生態系の保護等を図るための農業水利施設魚道整備促進事業を実施するほか、渓流域における生態系の保全を考慮した渓流魚資源の効率的な増殖管理手法の確立を図る。
? 特に、保護が必要とされるウミガメ(2種)、クジラ(3種)及びジュゴンについて引き続き原則採捕禁止等の保存措置を講じる。
 また、鯨類資源に関し、資源状況の良好なミンククジラ等については、その適切な管理のための科学調査を実施するとともに、資源状態の悪化しているシロナガスクジラ等についても、その生態、資源量、回遊等の実態を把握し、積極的な資源回復手法を解明するための調査を引き続き実施する。
 さらに、ウミガメの保存を図るため、採捕、販売、所持についての規制を行うほか、ウミガメの産卵場及び生息水域の廃棄物の除去清掃、卵や稚亀の密漁防止等の保護事業に対して助成を行い、同時に、その保存の基礎となる生息状況等を解明するため、標識放流による調査を引き続き行う。
? 資源の持続的な利用及び漁獲対象外野生動植物との共存等、海洋環境に配慮した漁業の確立を図るため「生態系保全型漁業」の在り方について調査を実施するとともに、海の生物生産機能とそれに関連した海の環境保全機能の調査を行い、あわせて森、水田等の陸域が沿岸生態系に与える影響の調査を引き続き行う。
? 減少の著しい水生生物に関するデータブックの掲載種について、保存手法の検討を進めるため、現地調査等を引き続き実施する。
? 国際的に問題とされているサメ類、海鳥の混獲に対処するため、サメ類の保全・管理及び海鳥の混獲対策に関する行動計画の策定等を引き続き実施する。

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