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第1節 

3 大都市圏等への負荷の集積による問題への対策

(1)窒素酸化物対策

ア 自動車等排出ガス対策
 自動車排出ガス対策については、中央環境審議会の平成8年中間答申、平成9年第二次答申及び平成10年第三次答申に沿った排出ガス規制の一層の強化を進める。また、第二次及び第三次答申を踏まえ、新たな自動車排出ガス試験法の開発調査を実施する。さらに、低公害車排出ガス技術指針の見直し及び排出ガス低減技術の開発促進に係る調査等を実施する。
 第三次答申では、ディーゼル自動車に関して、平成14年から16年にかけて、現行から排出ガスを約3割削減し、平成19年頃を目途に更に半減すること(いわゆる新長期規制)が提言されている。
 大気環境を早急に改善するためには、この新長期規制をできるだけ早期に実施する必要があることから、新長期規制の前倒しを含め具体的な規制値及び燃料品質等については、今後必要に応じて早期に決定することとしている。
 新しい規制に適合する自動車が、規制の施行前に販売される場合、既存車両に対する価格競争力が劣るため、自動車取得税の課税の特例を設け、規制の施行前の新規制適合車の普及を促しているところである。また、第二次及び第三次答申を踏まえ、新たな自動車排出ガス試験法の開発調査を実施する。さらに、低公害車排出ガス技術指針の見直し及び排出ガス低減技術の開発促進に係る調査等を実施する。
 一方、大気保全上必要な自動車燃料の品質の確保のため、自動車燃料品質が排出ガスに及ぼす影響についての調査を実施し、許容限度の設定・見直しの検討に資する。
 大都市地域における自動車排出窒素酸化物の総量の一層の削減のため、「自動車から排出される窒素酸化物の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法」に基づく施策を関係省庁、地方公共団体との連携のもとに総合的に推進する。
 また、最新規制適合車の早期普及のため、税制上の特例措置等を講ずるとともに、特定自動車排出基準適合車への代替促進については、税制上の特例措置、政府系金融機関による低利融資、公営バスの更新に対する財政支援措置を講ずる。また、「公害健康被害の補償等に関する法律」に基づき公害健康被害補償予防協会におかれた基金の活用等によるキャンペーン活動を実施する。
 大都市地域のNO2高濃度汚染の改善に資する新しい対策技術(土壌による大気浄化システム、光触媒を用いたNOx浄化システム)については、関係機関と協力しつつ、早期実用化を図っていく。
 また、自動車NOx対策の充実・強化について検討する。
 低公害車の大量普及を実現するため、制度的な普及方策について調査検討を行うとともに電気自動車の活用実証調査を行うほか、地方公共団体の大型ディーゼル代替低公害車の重点的な導入に対する補助や電気・天然ガス・ハイブリッドの各自動車等の抜本的な普及を目指した補助等の各種の助成措置の実施、税制上の特例措置、集中導入マニュアルの策定、政府の「率先実行計画」に基づく各省庁での率先導入等により、関係省庁や地方公共団体の連携の下に低公害車の普及拡大を積極的に推進していく。
 さらに、低公害車のより一層の高度化を図るため、新規燃料を用いた高効率クリーンエネルギー自動車(ACE)の研究を支援していく。
 その他、VICS(道路交通情報通信システム)の導入など道路交通管理、道路整備、道路構造対策、物流の効率化を推進する。
 また、プレジャーボートの排ガス対策としては、エンジンから排出されるベンゼン、トルエン等の炭化水素やNOxなどの低減を図るための方策についても検討を行う。さらに、海洋環境の保全を図るため、窒素酸化物を大幅に削減できる環境低負荷型舶用推進プラント(スーパーマリンガスタービン)の研究開発を行う。

イ 固定発生源対策
 これまでの排出量の低減の実績を踏まえ、東京都特別区等、横浜市等及び大阪市等の総量規制地域については、年間を通じた排出実態等規制の実施状況を把握し、総量規制の徹底を図る。さらに、ビル暖房等の群小発生源が集合して設置されている地域について、群小発生源からの窒素酸化物の排出状況、環境影響等の把握を行い、地域冷暖房、中でも未利用エネルギーを活用した地域冷暖房及びNOx対策を適正に実施したコージェネレーションの導入、優良品推奨水準としてのNOx排出ガイドラインに適合する小規模燃焼機器の普及促進を推進する。

ウ その他の対策
 特に窒素酸化物濃度の高くなる冬期等特定期間を対象に「季節大気汚染対策」を実施し、また、12月を「大気汚染防止推進月間」として、マイカーの使用抑制等の人流対策、適切な自動車使用方法の実施等を国民及び関係機関に呼びかける。さらに、大気環境にやさしい実践行動、国民運動として「アイドリング・ストップ運動」を環境月間及び大気汚染防止推進月間を通じて推進する。また、環境に優しい運転方法である「エコドライブ」の実施を呼びかけていく。
 また、季節変動による窒素酸化物高濃度時の対策について検討を行うとともに、大気浄化能力を有する植栽の整備等の地域の大気環境改善に資する各種の事業を引き続き推進する。
 船舶から排出される窒素酸化物、硫黄酸化物等については、船舶からの排出削減技術の動向等を把握して、海洋汚染防止条約締約国会議において採択された議定書に対応した排出削減手法等を引き続き検討するとともに、国内体制の整備に努める。
 また、自動車排出ガス規制の対象外である未規制エンジンからの窒素酸化物等の大気汚染物質について、排出実態の把握と対策のあり方について検討を進める。特に、建設工事においては、公共事業を中心に、排出ガス対策型建設機械の使用を引き続き推進するとともに、さらなる排出ガス低減を目指し建設機械の排出ガス対策の今後の在り方について検討する。

(2)浮遊粒子状物質・ディーゼル排気微粒子対策

 浮遊粒子状物質(SPM)については、発生源が多種多様であり、汚染機構が複雑であることから、高濃度地域を対象とした原因物質削減のための総合的な対策について検討してきたところであり、平成11年春に取りまとめた「浮遊粒子状物質総合対策」に基づき、自動車排出ガス規制とともに、固定発生源について、制度改正等も念頭に置いた具体的な規制方法について検討を行うこととしている。
 自動車から排出される粒子状物質については、平成9年11月の中央環境審議会答申に沿って、平成14年から16年にかけて、ディーゼル自動車に対する規制を強化し、現行規制に比べて約3割削減することとしている。また、平成19年頃を目途に更に半減することが提言されている。加えて、平成16年からは、現在未規制のディーゼル特殊自動車に対する規制も予定している。粒子状物質のうち、特にディーゼル排気微粒子については、科学的知見をもとにリスク評価を実施するとともに、沿道浮遊粒子状物質モデルを用いた、大気シミュレーションを実施し、沿道の浮遊粒子状物質生成機構の解明を行うなど、今後の対策に向けた調査検討をしていく。
 また、近年SPMの中でも、粒径が2.5μm以下の微小粒子状物質(PM2.5)と健康影響の関連が懸念されつつあり、今後も引き続きPM2.5に着目した調査を実施する。さらに、平成12年度からは、PM2.5に含まれる成分の測定・評価手法の確立のための調査を実施するとともに、PM2.5の自動連続測定を、一部の測定所において試験的に実施する。さらに、平成11年度より開始した、疫学調査、実測調査及び動物実験等を含む、微小粒子状物質曝露影響調査を引き続き実施していく。

(3)スパイクタイヤ粉じん対策

 「スパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する法律」の円滑な施行を図るため、引き続き、国民に対する指定地域の周知徹底、知識の普及、意識の高揚等の施策を推進する。また、凍結防止剤による環境への影響の検討、冬期道路交通の確保及び冬期安全運転教育等の関連施策についても、地方公共団体と連携を図りつつ、その推進に努めていく。

(4)硫黄酸化物等対策

 硫黄酸化物は、主に石油等の燃料消費に起因することから、エネルギー事情等の推移を見守りつつ、今後も二酸化硫黄の環境基準を維持達成するため所要の対策を講じていく。

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