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第7節 

3 生物多様性の保全の状況

 地球上の生物の多様性を包括的に保全するための国際条約として「生物の多様性に関する条約」が締結されている。これは特定の動植物や生息地の保全にとどまらず、地球上のあらゆる生物の遺伝子、種及び生態系の三つのレベルの多様性をそれらの生息環境とともに最大限に保全し、その持続可能な利用を実現し、さらに生物の持つ遺伝的資源から得られる利益を公正かつ衡平に配分することを目的としている。
 この条約を受け、わが国は平成7年10月に生物多様性国家戦略を策定したが、その中で生物多様性の現状を把握するとともに、その保全と持続可能な利用のための長期的目標を定めた。第一の長期的目標として、日本全体及び代表的な生物地理区分ごとにそれぞれ多様な生態系及び動植物が保全され、持続可能な利用が図られていること、また、都道府県及び市町村のレベルにおいて、それぞれの地域の自然的、社会経済的特性に応じた保全と持続可能な利用が図られていることを掲げ、第二に、将来の変化の可能性も含めて生物間の多様な相互関係が保全されるとともに、生物の再生産等の過程が保全されるように、まとまりのある比較的大面積の地域が保護地域等として適切に管理され、相互に有機的な連携が図られていることとしている。また、生物多様性に関する情報の収集、管理、提供等を行うため、平成10年4月に生物多様性センターが設置された。
 また、「生物の多様性に関する条約」の下、遺伝子組換え生物などの国際取引に際し、生物多様性への悪影響の可能性について事前に評価するための手続などを定める「バイオセイフティに関するカルタヘナ議定書」が、平成12年1月に採択されている。

 「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」(ラムサール条約)は、湿地の保全を目的とした条約である。わが国では、釧路湿原、クッチャロ湖、ウトナイ湖、霧多布湿原、厚岸湖・別寒辺牛湿原(北海道)、伊豆沼・内沼(宮城県)、谷津干潟(千葉県)、片野鴨池(石川県)、琵琶湖(滋賀県)及び佐潟(新潟県)の10か所に加えて、1999年(平成11年)に開催されたラムサール条約第7回締約国会議(コスタリカ)の際に、漫湖(沖縄県)が新たに登録された。
 また、日本とアメリカ、オーストラリア、中国及びロシアの各国との間で渡り鳥等保護条約(協定)を締結し、ツルやシギ、チドリなど渡り鳥の保護を推進しているほか、日本と中国の間では中国におけるトキの生息地保全に向けた取組を両国が協力して行うなど、二国間においても種の保存へ向けた取組がなされている。
(地球規模での生物多様性の保全の状況については序章参照。)

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