近年、余暇時間の増加や身近な自然の減少及び国民の環境に対する意識の向上等に伴い、自然とのふれあいへのニーズが高まっている。自然とのふれあいは、人が自然環境のもたらす恵沢を享受する基本的かつ具体的な行動であり、人々が自然を大切にする心を育み、人間性を回復するための必須条件である。
都市などの人工的な環境で生まれ育った人々がほとんどを占める現代社会において、原野や原生的な森林などの自然性の高い地域で、豊かな自然を体験することは人間性を回復するために有効である。また、居住地から地理的にも精神的にも遠く離れた旅先でふれあう山々や海岸などの自然や風景も、人々を日常から解放し安らぎを与えてくれる。国民がこうした豊かな自然とふれあえる場として、自然公園や温泉地などがあげられる。
自然公園については、昭和6年に国立公園法が制定された後、昭和32年に自然公園法が制定され、国立公園、国定公園及び都道府県立自然公園からなる体系的な制度が確立された。平成11年度末の自然公園の数と面積は、国立公園については28か所2,046,508ha、国定公園は55か所1,343,181ha、都道府県立自然公園は306か所1,951,761ha、面積を合計すると5,341,450haとなり、国土面積の14%を占めている(3-8-1図、3-8-2図)。
自然公園は、優れた自然の風景地を保護するとともにその利用の増進を図り、国民の保健や休養等に資することを目的とするものである。最近は自然に親しむことに対する国民の欲求の高まりに対応して、自然公園を訪れる人々は増加傾向にある(3-8-3図)。自然公園全体の利用者数を見ると、昭和50年代はおおむね横ばい状態であったが、昭和60年代に入ってから徐々に増加傾向をたどっている。平成10年の利用者数を公園の種類別に見てみると、国立公園の利用者数が3億8,102万人、国定公園の利用者数が3億103万人、都道府県立自然公園の利用者数が2億6,466万人となっている。
温泉は、古くから国民の保健休養の場としても親しまれ、自然とのふれあいの面でも大きな役割を果たしている。平成10年度の全国の温泉地における宿泊利用者数は約1億3,971万人に達している。また、環境庁では温泉の公共的利用の推進を図るため、温泉の効能や周辺の自然環境が優れ保健休養に適した温泉地を国民保養温泉地として指定し(平成12年1月現在88か所、15,458.95ha)、公共施設の整備を図っている。
自然とふれあうための行事
毎年4月29日の「みどりの日」、7月21日から8月20日の「自然に親しむ運動」、10月の「全国・自然歩道を歩こう月間」の期間を中心に様々な行事やイベントが実施されている。例えば、「みどりの日」には、自然とふれあうために、自然観察会やハイキング等誰でも気軽に参加できるような行事が、自然公園等で国立公園・野生生物事務所(平成12年度より自然保護事務所)、都道府県、市町村や関係団体が主体となって行われている。