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第3節 

2 循環型社会の形成に向けた行政の役割

(1)行政の様々な活動に対する環境配慮が必要である

 新たな世紀における循環型社会の形成に向けて、すでに企業や国民の側では、自らの行動に環境保全の観点を組み込もうとする産業のグリーン化や環境合理性に基づく行動の実行など多くの試みが始まっている。
 しかし、循環型社会を形成し、経済社会のグリーン化を図るためには、社会のすべての主体が自らの行動に環境配慮を組み込まなければならない。国民や事業者に加え、社会を構成するもう一つの主体である行政の側の取組が非常に重要である。
 以下では、経済社会のグリーン化に向けた行政の取組の現状と今後の課題について検討を行う。
 まず、行政が環境に与える影響を見てみよう。まず、環境保全のための行政については、規制や税制、補助金、普及啓発等様々な政策手法を用いて、公害の防止や自然環境の保護と整備などを行っている。
 また、その他分野の行政も、規制や税制、補助金等様々な施策の実施により環境に対し、直接的、間接的に大きな影響を与えている。さらに、行政の日常の活動や公共サービスの提供という面でも直接的な影響を与えている。
 したがって、環境への影響を最小限とするためには、これら行政のあらゆる活動において環境保全の観点からの配慮が必要である。

(2)行政の活動への環境配慮の組み込みは世界の潮流となっている

 行政の活動への環境配慮の組み込みに向けた取組は世界的にも進められている。OECD理事会では、1996年(平成8年)2月に「政府の環境パフォーマンスの改善に関する勧告」において、加盟国が政策決定を含む政府のあらゆる活動や施設に環境配慮を組み込むことにより、政府の環境保全の取組を継続的に向上させるための戦略を策定し実施すべきであると勧告した。
 加盟国におけるOECD勧告の実施状況は、1999年(平成11年)3月にOECD理事会に報告された。この報告では、政府の通常の活動における環境配慮、政府内における環境管理システムの構築等の意思決定過程における環境配慮及び規制や補助金の新設等の政策決定における環境配慮の3点について各国の取組の進捗状況についてまとめている。OECD加盟国30か国(ECを含む。)のうち、通常活動や政府活動に関する意思決定過程において環境配慮を行っている国は多いが、規制や許可、補助金のシステムの構築等の政策決定まで環境配慮を行っている国はカナダやスウェーデンなどごく一部の先進的な国であるといわれている。環境配慮の組み込みを妨げているものとしては、制度面、予算面、文化面での障害があるが、一般的にいって、障害の大多数は、管理体制等“ソフトな”障害であり、方針の設定や支援システムの構築により克服できるものであるとしている。

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