4 化学物質の環境リスクの管理の推進
(1) ダイオキシン問題への取組
環境庁では、平成10年8月、「ダイオキシン対策に関する5ヵ年計画」を策定し、発生源対策、モニタリング調査、調査研究及び共通理解の促進等を進めてきた。
ア 発生源対策等の推進
排ガス中のダイオキシン類の多くがばいじんに吸着されているため、平成10年4月に廃棄物焼却炉に係るばいじん規制を大幅に強化した。
また、ダイオキシン類の排出の低減に効果のある産業廃棄物焼却施設の改造等に必要な資金に対する融資の充実を行った。
イ モニタリング調査
ダイオキシン類による環境や人体の汚染状況を把握するため、マニュアル策定等測定手法の検討を行うとともに、大気、土壌、水質等のモニタリング調査を行った。平成10年度においては、その緊急性に鑑み、全国約400地点で調査を実施した。
ウ 調査研究
大気等環境を通じたダイオキシン類の暴露の人への影響の評価手法の確立に関する研究等を行うとともに、環境庁及び厚生省が共同で、農林水産省、労働省の協力のもとに「ダイオキシン類総合調査検討会」を開催し、関係省庁におけるダイオキシン類に関する調査研究について、専門技術的立場から情報交換を行うとともに、調査方法等について総合的検討を行った。
また、平成10年4月に大阪府能勢町において、ごみ焼却施設周辺の土壌から高濃度のダイオキシン類が検出されたことなどを受け、環境庁では、土壌中のダイオキシン類のリスク評価や対策について検討を開始し、11月、居住地等の土壌の暫定ガイドライン値として、1,000pg-TEQ/gが提案された。また、9月には、厚生省の同ごみ焼却施設に関する調査結果を踏まえ、全国37の類似施設に対する立入検査を実施するよう関係地方公共団体に指示し、12月にその結果を公表した。
(2) リスクコミュニケーションの推進
近年、ダイオキシン類をはじめとする化学物質による環境汚染問題を契機に、環境リスクに対する国民の関心が高まっており、その一方で、環境リスクに関する情報不足や関係者間の理解の相違等から、国民の不安が増大する場合もある。こうした状況を踏まえ、今後、各種の化学物質対策を円滑に進めていくためには、環境リスクに関する正確な情報を行政、事業者、国民、NGO等の全ての者が共有しつつ、相互に意志疎通を図るリスクコミュニケーションが欠かせないものとなっている。このため、環境庁及び通商産業省においては、平成9年度に引き続き、リスクコミュニケーションの具体的手法等についての検討を行った。