3 化学物質の環境リスクの評価の推進

(1)　化学物質の環境リスクの評価
　現在、我が国で約5万種以上流通していると言われる化学物質の中には、発がん性、生殖毒性等多様な毒性を持つものが多数存在し、これらが、大気・水等様々な媒体を経由して人や生態系に影響を与えているおそれがある。
　こうした影響を未然に防止するためには、多くの化学物質を対象に、その生産、使用、廃棄等の仕方によっては人の健康や生態系に有害な影響を及ぼすおそれのある化学物質が、環境の保全上の支障を生じさせるおそれ(環境リスク)の評価を行い、その結果に基づき適切な環境リスク対策を講じていく必要がある。これまで、我が国の環境リスク評価は体系的に行われてきていないが、国際的には環境リスク評価の推進が急務とされ、国際協調のもと、早期に評価を実施していくことが求められている。
　平成10年度においては、有害性評価、暴露評価、生態影響試験の実施等必要な知見を収集している。
(2)　ダイオキシン類のリスク評価
　ダイオキシン類のリスク評価については、平成9年5月、環境庁が設置したダイオキシンリスク評価検討会が報告書を取りまとめ、その中で、動物実験や人への影響についての疫学調査の結果等をもとに有害性を評価した結果、環境保全対策を講ずるに当たっての目安として、健康リスク評価指針値として5pg/kg/日を設定した。この値は、人の健康を維持するための許容限度としてではなく、より積極的に維持されることが望ましい水準として人の暴露量を評価するために用いる値である。
　また、我が国におけるダイオキシン類に係る暴露の推定量は、健康リスク評価指針値と同程度以上となることがあり得るため、健康リスクを小さくする観点から、ダイオキシン類の環境中の低減を図る必要があるとされた。
　なお、厚生省においては、厚生科研究班により、平成8年6月に、人が一生涯にわたり継続して摂取しても健康上、問題がないとされる耐容一日摂取量(TDI)として10pg/kg/日が提案され、この数値に基づき各種の健康上の施策が講じられたところである。
　その後、平成10年5月にWHOの専門家会議において健康リスクを再評価した結果、耐容一日摂取量について、従来の10pg/kg/日を見直し、1〜4pg/kg/日とすることが提案された。これを受けて、環境庁及び厚生省が合同で、ダイオキシン類の耐容一日摂取量の再評価を行っているところである。