4 国民の環境保全活動に対する支援・育成
(1) 環境保全に関する知識の普及・意識の啓発を目指す施策の発展
ア 環境教育・環境学習の進展
国民の環境問題への認識の高まりを背景に、国民が身近な環境の現状を理解し、生活の中で環境保全に適切な配慮を行うことを促すような活動の機会が求められるようになった。環境庁では、「全国水生生物調査」、「あおぞら観察コンテスト」、「スターウォッチング−星空の街コンテスト」、「全国星空継続観察(スターウォッチング・ネットワーク)」、「樹木の大気浄化能力調査」、「身近な生きもの調査」、「こども葉っぱ判定士」などの参加型調査を昭和60年前後からこれまで次々に導入し、多くの国民がこれらに参加した。環境教育の重要性が一層認識されるようになった中、環境庁は、昭和61年に環境教育懇談会を設置し、63年3月に環境教育の理念や課題等を示した報告書を取りまとめた。学校教育においては、平成元年の学習指導要領の改訂に際して、各教科において環境に関する指導内容の充実が図られている。この後、平成5年に制定された環境基本法において、環境教育・環境学習の重要性が法制上明確に位置付けられることとなった。環境基本計画においては、各主体の自主的積極的行動の促進のため、環境教育・環境学習を推進することとしている。これらを受け、環境庁は、特に次世代を担う子どもたちの自主的・継続的な活動を支援するため、平成7年に「こどもエコクラブ事業」を開始した。また、平成10年度には中央環境審議会に対し、今後の環境教育・学習の進め方についての諮問を行い、中間報告がなされた。環境庁では、この中間報告にのっとり、体験的学習活動を行う現場を整備するため、「総合環境学習ゾーン・モデル事業」を実施した(詳細は第2章211/sb1.2>)。一方、国民の消費生活に起因する環境問題に対処するとともに、環境に配慮した生活を促す仕組みとして、元年に「エコマーク」制度が発足した。
イ 国際的な動向
環境教育は、国際的には、「国連人間環境会議」(1972年)を始め、「環境教育専門家会議(ベオグラード会議)」(1975年)等において、その重要性や理念等について議論されてきたところである。1992年に開催された「国連環境開発会議(地球サミット)」で採択された「アジェンダ21」においても、「教育、意識啓発及び訓練の推進」が取り上げられ、環境教育の重要性が確認されている。さらに1997年にユネスコとギリシャ政府により開催された「環境と社会に関する国際会議」において採択された「テサロニキ宣言」では、環境教育を「環境と持続可能性のための教育」と理解し、持続可能性に向けた教育全体の再構成として環境教育を捉えている。
(2) 「反公害運動」からエコロジカルなライフスタイルへの運動の展開
市民の環境保全意識は、昭和40年代の「環境第1の波」から昭和60年代の「環境第2の波」に至り変化をしてきた。
かつては、企業や行政、地方公共団体に公害防止の強化を求める「権利回復型」、「要求型」の運動が中心であったのに対し、現在では、単なる要求型の運動は少なくなり、例えば、環境庁には自然の豊かな地方における環境保護対策の充実を求める声が寄せられるようになったり、市民の日常の行為とも密接に係わる社会経済構造やライフスタイルを自分たちの足元から、環境保全型のものに変えていこうという「提案型」、「実践型」の運動も高まってきている。