4 化学物質の環境リスク管理の推進
(1) ダイオキシン問題への取組
ダイオキシン対策としては、リスク評価の結果に基づいて発生源対策、モニタリング調査、調査研究、共通理解の促進等を総合的に推進することが必要である。このため、環境庁では、平成9年8月、「ダイオキシン対策に関する5カ年計画」を策定し、これらの対策に取り組むこととした。
また、平成9年7月及び11月に、「全国ダイオキシン類調査連絡会議」を環境庁及び厚生省の共催で開催し、都道府県、政令市のダイオキシンに関係する担当者との連絡、情報交換を行った。
ア 発生源対策等の推進
ダイオキシン類のリスク評価及び排出抑制対策についての検討を踏まえ、ダイオキシン類の排出を抑制するため、平成9年8月、排出量が多いと考えられ、排出実態や対策技術に関する知見が集約されている廃棄物焼却炉等を指定物質排出施設に指定するなど大気汚染防止法施行令を改正し、平成9年12月から施行した。
さらに、環境庁では、排出実態が明らかとなっていない発生源について、排出実態の調査及び排出抑制手法の検討を行うとともに、ダイオキシン類の排出の低減に効果のある排ガス処理装置等に係る融資を行った。
イ モニタリング調査、調査研究
ダイオキシン類による環境や人体の汚染状況を把握するため、マニュアル策定等測定手法の検討を行うとともに、大気、水質、底質等の測定を行った。また、ダイオキシン類の環境中での挙動や、大気環境濃度と健康影響との関連についての疫学調査について調査研究を行った。
環境庁及び厚生省は共同で、農水省、労働省の協力のもとに「ダイオキシン類総合調査検討会」を開催し、環境モニタリング、人体の汚染状況調査、疫学的健康影響調査等の検討を行った。
ウ 共通理解の促進等
平成10年2月、ダイオキシン問題に関するシンポジウムを開催し、ダイオキシン類に関する情報の普及と関係者の共通理解を形成するよう努めた。
(2) 化学物質の環境リスクの包括的管理に向けた取組
環境リスクの包括的な管理を行う枠組みである環境汚染物質排出・移動登録(PRTR)については、平成8年2月にOECDより加盟国に対し導入が勧告され、加盟国は3年後に取組状況を報告することとなっている。環境庁においては、平成8年10月から検討会を開催し、PRTRの導入に当たっての技術的課題の検討を行い、平成9年5月に報告を取りまとめた。この報告に基づき、平成9年6月より、神奈川県及び愛知県の一部の地域において、178物質について約1800の事業所を対象にパイロット事業を実施し、PRTRの本格的導入に向けての課題の整理及び関係者の共通認識の形成を図っている。
産業界においては自主的な化学物質管理の促進を図るため平成7年4月「日本レスポンシブル・ケア協議会」が発足し、同年10月、本協議会会員を倫理規範を実施する企業としてUNEPに登録した。また、同協議会では、PRTRに関する取組として、平成8年度に引き続き、平成10年1月には化学品審議会に平成8年度の排出量調査結果(151物質)を報告した。
(3) リスクコミュニケーションの推進
近年、化学物質の使用の増加に伴い、環境リスクに対する国民の関心が高くなっており、今後の化学物質対策を円滑に進めていくためには、事業者、住民等の関係者間での化学物質のリスクに関する正しい情報、理解の共有を図るリスクコミュニケーションが欠かせないものとなっている。このため、環境庁及び通産省においては、新たな化学物質対策としてリスクコミュニケーションの具体的手法等についての検討を行っている。