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第5節 

2 化学物質環境汚染実態調査の概要

(1) 化学物質環境安全性総点検調査の概要
ア 環境調査の概要
 平成8年度においては、環境調査(水系)は水質で全国56地点・37物質、底質で56地点・35物質、魚類で53地点・7物質を対象とした調査を実施した。
 環境調査(大気系)は、全国18地点で21物質を対象に調査を実施した。
(ア) 環境調査(水系)
 水質からはフェノール等6物質、底質からはフェノール等12物質、魚類からはフェノール等4物質が検出された。このうちヒドロキノン等数物質については、今後も環境調査を行い、推移を監視することが必要と考えられる(第1-5-1表)。
(イ) 環境調査(大気系)
 フェノール等10物質が検出された。このうちフェノール等数物質については、今後も環境調査を行い、推移を監視することが必要と考えられる(第1-5-2表)。
イ 水質・底質モニタリングの概要
 水質・底質モニタリングは、環境調査の結果等により水質及び底質中の残留が確認されている化学物質(主に第一種特定化学物質)について、その残留状況の長期的推移の把握により環境汚染の経年監視を行うことを目的として昭和61年度から実施している。
 平成8年度は第一種特定化学物質を中心に、HCB(ヘキサクロロベンゼン)等20物質について全国18地点で調査を実施した。
 その結果、水質からは、o-ジクロロベンゼン等5物質が検出された。底質からは20物質すべてが検出された(第1-5-3表)。
 水質については12地点で2〜5物質が検出されているが、それ以外の地点ではすべて検出されず、全体的に低い検出状況であった。
 底質からの検出状況は水質に比べて全体的に高く、16地点でそれぞれ5〜20物質が検出され、特に過半数の11物質以上が検出された地点は6地点となっている。また、調査対象物質ごとの最高値をみると、閉鎖性の内湾部の汚染レベルが高いことが示唆される。
ウ 生物モニタリングの概要
 生物モニタリングは、第一種特定化学物質及び環境調査結果等から選定した物質について、生物(魚類、貝類、鳥類)を対象に環境汚染の経年監視を行うことを目的として、昭和53年度から実施している。
 平成8年度は第一種特定化学物質を中心に、PCB等29物質について全国21地点の魚類8種、貝類2種、鳥類2種について調査を実施した。
 その結果、PCB等21物質が検出された。これらの物質を中心に今後とも監視を継続することとする。
 なお、有機スズ化合物による環境汚染の状況については、指定化学物質等検討調査結果と併せ、中央環境審議会環境保健部会化学物質専門委員会において次のとおり評価されている。
(トリブチルスズ化合物)
 トリブチルスズ化合物は環境中に広範囲に残留しており、その汚染レベルは、生物及び底質においては概ね横ばい傾向であり、水質においては、改善ないし横ばいの状況にある。
 現在の汚染レベルが特に危険な状況にあるとは考えられないが、一部地点では高濃度での検出がみられ、水生生物等への生態影響の可能性もあることから、引続き環境汚染対策を推進するとともに、環境汚染状況を監視していく必要がある。
(トリフェニルスズ化合物)
 トリフェニルスズ化合物は環境中に広範囲に残留しており、その汚染レベルは、底質及び生物においては概ね横ばい、または改善の傾向にある。なお、水質は2年続けて全地点で不検出となった。
 現在のトリフェニルスズ化合物の生産状況を考慮すれば、汚染状況はさらに改善されていくと期待されているが、一部地点では高濃度での検出がみられることから、今後も引続き、環境汚染対策を継続するとともに、環境汚染状況を監視していく必要がある。


(2) 指定化学物質等検討調査の概要
 環境庁では、指定化学物質を中心とした物質について、環境中の残留性及び人への暴露状況の調査を行っている。
 平成8年度の、環境残留性調査では、水質・底質について、1,4-ジオキサン等4物質を36地点で、大気について、トリクロロエチレン等6物質を33地点で、また、暴露経路調査では、一般大気、室内空気及び食事についてトリクロロエチレン等6物質を9地点でそれぞれ調査を実施した。
 その結果、環境残留性調査においては、10物質全てが検出された。また、暴露経路調査では、一般大気及び室内空気から6物質すべてが、食事からはクロロホルム及び1,2-ジクロロエタンの2物質が検出された。
(3) ダイオキシン等の非意図的生成化学物質に係る調査等の概要
 環境庁では、一般環境中における非意図的生成化学物質の環境残留性を把握するために昭和60年度から「有害化学物質汚染実態追跡調査」(平成5年度より「非意図的生成化学物質汚染実態追跡調査」に名称を変更)を行っている。
 平成8年度は、ダイオキシン類(ポリ塩化ジベンゾ-p-ジオキシン(PCDD)及びポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)の総称)並びにPCB(ポリ塩化ビフェニル)に関してその総量及びコプラナーPCBs(オルト位に置換塩素を持たない扁平構造のPCB)の調査を実施した。
 調査結果に基づき、ダイオキシン類及びコプラナーPCBsについて、中央環境審議会環境保健部会化学物質専門委員会において次のとおり評価された。
(ダイオキシン類)
 ダイオキシン類の一般環境への汚染状況は、前年度までの調査結果と比較して大きく変化したとは認められないが、環境中から広範囲に検出されているため、今後とも引き続きその汚染状況の推移を追跡して監視していくことが必要である。
 また、ダイオキシン類の発生源や環境中挙動などの汚染機構の解明に努めるほか、内分泌攪乱物質に係わる情報を含め、毒性関連知見の収集に努めることも必要である。
(コプラナーPCBs)
 コプラナーPCBsの環境残留は、主にPCB製品からの環境放出に由来すると考えられており、PCBは、既に昭和47年に使用が中止され、昭和49年6月には「化学物質審査規制法」に基づく第一種特定化学物質に指定されるとともに、平成4年7月には廃棄物処理法に基づく特別管理産業廃棄物に指定されていることから、その汚染の拡大の可能性は少ないと考えられる。平成8年度は調査地点を増やした結果、コプラナーPCBsは、環境中に広範囲に残留しており、一部の地点で高濃度の検出がみられることから、今後とも引き続き汚染状況を調査し、その推移を追跡して監視することが必要である。

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