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第3節 

2 地盤環境の現状

 地盤沈下は、主に地下水の過剰な採取により地下水位が低下し、粘土層が収縮するために生じる。地下水は雨水や河川水等の地下浸透により供給されているが、この供給に見合う以上の汲み上げにより、帯水層の水圧が低下(地下水位が低下)し、粘土層の間隙水が帯水層に排出されて、粘土層が収縮することによって地盤沈下は生じる(第4-3-2図)。一旦沈下した地盤はもとに戻らず建造物の損壊や洪水時の浸水増大などの被害をもたらす。
 地下水は良質、恒温の水資源であり、生活用水、工業用水、農業用水、消雪用などとして容易かつ安価に採取できる。生活水準の向上、産業の発展等による水需要の増大や深井戸さく井技術の発達に伴い大きな地盤沈下が発生してきた。
 地盤沈下は戦前から東京都江東区や大阪市西部で見られたが、戦後の一時期経済の停滞により一旦沈静化した。昭和40年代には全国的に発生し、年間20cmを超える激しい沈下もあった。その後地下水の採取制限が行われ、長期的に地盤沈下は沈静化へ向かっているが、一部地域では依然として沈下が続いている(第4-3-3図)。ピークに比べ改善傾向が見られるものの、都市化の進展によりコンクリートやアスファルトによって地表が覆われ、地中に水分が浸透しないことや、森林の減少による土壌の保水力の減退など、地下への水の供給の減少が懸念されている。
 平成8年度の年間2cm以上の地盤沈下地域の面積は、平成7年度の14地域21km
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から13地域258km
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へと大幅に増加した。また、年間4cm以上の地盤沈下地域の面積も7年度の2地域0.5km
2
未満から4地域22km
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と大幅に増加している(第4-3-4図)。
 平成8年度に最も大きな地盤沈下が観測された地域は栃木県関東平野で、沈下量は6.9cmであった。この他、年間4cmを越す著しい地盤沈下が認められた地域は、新潟県南魚沼、茨城県関東平野、埼玉県関東平野であった。また、平成4年度から8年度までの5年で最も大きな地盤沈下が観測された地域は、新潟県南魚沼で、5年間の累計最大沈降量は30cmであった。この地域の沈下原因は主に消雪用の地下水くみ上げと考えられる。他に、栃木県関東平野、茨城県関東平野でも5年間で20cmを超える最大沈下が認められた。今後も推移を注視し、適切に対応していく必要がある。

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