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第4節 廃棄物等の現状

 現在の経済社会活動が大量生産、大量消費、大量廃棄型となり、高度化するにつれ、廃棄物量の増大、廃棄物の質の多様化及び最終処分場の残余容量の逼迫等が生じている。これらに伴い、資源採取から廃棄に至る各段階での環境への負荷が高まっている。環境基本計画では、現在の経済社会システムにおける物質の循環を促進し、環境への負荷を低減させていくため、第一に廃棄物の発生抑制、第二に使用済製品の再使用、第三にマテリアルリサイクル(回収したものを原材料としてリサイクル)を行い、リサイクルが技術的に困難であったり、環境への負荷の面から適切でない場合に、エネルギーとしての利用を推進するとしている。
 廃棄物に係る問題のうち一般廃棄物及び産業廃棄物の状況については第1章で詳しく述べているので、ここでは、容器包装等のリサイクルと有害廃棄物の越境移動の問題について見てみる。
(1) 容器包装等のリサイクル
 ごみの排出量の削減やごみの再資源化と再利用は緊急の課題となっており、平成7年6月に、「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律」(容器包装リサイクル法)が成立した。法律の対象物は、原則として商品に付された全ての容器、包装であり、対象事業者は容器包装を製造もしくは利用する事業者(特定事業者)である。また、本法律では、消費者、市町村、事業者の各自に責任を分担させており、消費者は分別排出の責任、市町村は分別収集の責任、事業者は再商品化の責任をそれぞれ求められている。平成9年4月から、容器包装リサイクル法に基づいて、アルミ製容器包装、スチール製容器包装、ガラス製容器、飲料用紙製容器及びポリエチレンテレフタレート(PET)製容器の分別収集及び再商品化が始められた。なお、飲料用紙製容器以外の紙製容器包装及び飲料又はしょうゆ用のペットボトル以外のプラスチック製容器包装については、法の適用が3年間猶予されており、平成12年4月から全面施行されることになっている。また、アルミ製容器包装、スチール製容器包装及び飲料用紙製容器は、現状では市町村が分別収集した時点で有償又は無償で譲渡できることが明らかで再商品化をする必要がないものとされているため、特定事業者の再商品化義務対象とはしていない。本法律の施行により、例えば、分別収集率が90%となった時点では、容器包装廃棄物の容積比が約6割であることから、一般廃棄物の最終処分量は約55%減少すると予想されている。社会全体で過剰包装の抑制やよりリサイクルしやすい素材への転換等が図られれば、さらに廃棄物が減少していくことが期待される。
 なお、近年の各種リサイクルの状況は、スチール缶の再資源化率が平成8年は77.3%、(平成7年73.8%)アルミ缶の再資源化率が平成8年度は70.2%(平成7年度65.7%)とそれぞれ増加している(第4-4-1図第4-4-2図)。また、古紙回収率、古紙利用率についても平成8年はそれぞれ51.3%、53.6%となっており、平成7年(それぞれ、51.6%、53.4%)のほぼ同水準を維持している(第4-4-3図)。平成6年度の一般廃棄物全体のリサイクル率は9.1%にとどまっている(第4-4-4図)。


(2) 有害廃棄物の越境移動
 人間の日常生活や社会経済活動によって生じる廃棄物は、生活水準の向上や経済の拡大に伴って、質的な多様化・発生量の増加が進み、発生国内での処理が難しくなるにつれて処理の場所を求めて越境移動する事例が増えてきている。特に、有害廃棄物は処理費用の高い国から安い国へ、あるいは処理に伴う規制の厳しい国から緩い国へと移動しやすい。そのため、受入れ国で適正な処理がなされない場合にはその国の生活環境や生態系に影響を及ぼすおそれもあり、地球規模での有害廃棄物の移動が問題となっている。
 有害廃棄物の越境移動の例としては、1976年(昭和51年)にイタリアのセベソで発生したダイオキシン汚染土壌が一時行方不明となり、その後1982年(昭和57年)にフランスで発見されたセベソ汚染土壌搬出事件、ノルウェーの会社が米国からギニアに有害廃棄物15,000トンを持ち込んで投棄した事件、イタリアからナイジェリアへ化学品という名目で3,900トンの有害廃棄物が運ばれて捨てられた事件、米国フィラデルフィアから14,000トンの有害な焼却灰を積載した船舶が各国で受け入れを拒否され、2年余り後にインド洋で投棄された疑いのある事件などが発生している。こうした事例が、度々起こり明らかになるにつれて、有害廃棄物の越境移動は、地球規模での国際問題として認識されるようになった。
 有害廃棄物の越境移動は、1980年代の後半に先進国から開発途上国への移動という図式を見せはじめたため、開発途上国側でも、有害廃棄物の持ち込みに対する規制が必要であるとの認識が生まれ、1988年アフリカ統一機構(OAU)が有害廃棄物の持ち込みを禁止する決議を行っている。我が国では、有用な資源を回収するなどのため有害廃棄物が国際取引されている例がある。
 こうした地球規模での有害廃棄物の越境移動に対して、国連環境計画(UNEP)を中心に国際的なルール作りが検討され、1989年(平成元年)3月スイスのバーゼルにおいて「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約」が締結された。我が国も1993年(平成5年)9月バーゼル条約に加入するとともに、同年12月にはその国内法である「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律」を施行した。1995年(平成7年)9月には第3回バーゼル条約締約国会議において、リサイクル目的のものを含めて有害廃棄物のOECD及びEU加盟国から非OECD及び非EU加盟国への輸出を1997年をもって、全面的に禁止する(但し、再利用等を目的とするものの国境を越える移動は、当該廃棄物が条約上有害な特性を有しないとされる場合は禁止されない。)との条約改正が採択された。さらに、1998年(平成10年)2月にマレイシアで開催された第4回バーゼル条約締約国会議において、条約の規制対象及び規制対象外の廃棄物を示すリストが新たな付属書として採択された。
 今後とも有害廃棄物の発生量や輸出入の最小化及び国際協力の推進が課題となっており、国際的な枠組みの下での対策の実施に向けた努力が続けられている。

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