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第2節 

3 変革の具体化へ向けて

 2においては、変革の理念的な方向性について述べたが、それでは21世紀に向けて目指すべき循環と共生を基本に据えた経済社会システムの姿とは、一体何をどのように変える必要があるのだろうか。本年の環境白書では、第1章以下において具体的に事例を上げつつ、下記の視点からその姿を描くこととしたい。
(1) 産業の変革
 大量生産・大量消費・大量廃棄型の経済社会システムを、環境への負荷をできる限り減らし循環を基調とする経済社会システムに変革するためには、経済社会システムの根幹を担う産業の変革がまず第一に必要である。その際、モノの生産、流通、消費に関する産業とともに、廃棄、再生・再資源化を経て再生産につながる廃棄物リサイクルを担う部分を産業として確立し、循環の輪を完結させるという循環型の産業システムへの変革が必要ではないだろうか。第1章においては、このような視点から循環型の産業システムへの変革の動きを紹介しつつ、今後の取組の方向性について論じる。
(2) 国土空間利用の変革
 自然のメカニズムを理解し、自然と人間活動との調和を図る経済社会システムへと変革を図るためには、まず人間による自然の利用形態、言い換えれば国土空間の利用形態を検証することが必要である。しかし現状を見ると、人口の都市集中と地域の過疎化等により、工業、商業、農林水産業の生産が経済的にも空間的にも切り離され、資源やエネルギーの循環が断ち切られてしまい、また地域や都市の環境にも大きな影響を与えてしまった。このような国土空間利用を資源やエネルギーの循環が回復し、自然と人間との共生が確保できるよう変革することが必要ではないだろうか。第2章においては、このような視点から人間活動を自然のメカニズムに配慮したものにし、自然との調和を図っている事例を取り上げつつ、国土空間利用の今後の方向性について論じる。
(3) ライフスタイルの変革
 ライフスタイルは経済社会の基本となる部分であり、また我々の日常生活という形で経済社会の姿を具体的に表現するものでもある。ライフスタイルを大量消費、大量廃棄から脱却させ、ものやエネルギーの無駄を廃し有効適切に活用するなど環境への負荷を最小限にするとともに、自然と調和し日々の生活の中で自然と豊かに響き合うものへと変革することにより、循環と共生を基本に据えた経済社会システムを我々の生活の中で実現することが必要ではないだろうか。第3章においては、このような視点から我々の日常生活に起因する環境負荷を把握しつつ、目指すべきライフスタイルの具体的な姿について論じる。

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