4 京都会議後の署名状況と国内対策の進展
京都議定書は、平成10年(1998年)3月16日から各国による署名が国連本部のあるニューヨークで始まった。初日にスイスなど6カ国が署名し、3月31日現在の署名国は計10カ国である。また、我が国をはじめ、EU諸国、米国など主要国も早期に署名を行う予定である。
COP3で採択された京都議定書の我が国についての6%の削減目標については、当面、次の対策により達成していく方針である。
(1) CO2、メタン、亜酸化窒素の排出量については、平成9年11月の「地球温暖化問題への国内対策に関する関係審議会合同会議」報告書(以下「関係審議会合同会議報告書」と略)に従い、従来の日本提案のベースとなっている、エネルギー需給両面の対策や革新的技術開発、国民各界各層の更なる努力などを着実に推進することにより、2.5%の削減を達成する。
(2) HFC、PFC、SF6の排出量については、プラス2%程度の影響に止めるよう、極力排出抑制に努める。
(3) 吸収源については、京都議定書の規定に従えば0.3%の削減が見込まれる。2010年頃における我が国全体の森林等による純吸収量が3.7%程度と推計されるが、今後の国際交渉において必要な追加的吸収分が確保されるよう、適切な方法論等の確立に努める。
(4) その他、今回導入が決定された共同実施、クリーン開発メカニズムや排出権取引などの活用を図る。
これらの対策を推進することにより、国内経済への大きな影響をもたらすことなく、目標達成を実現できるものと認識している。
平成9年12月19日には、京都議定書の着実な実施に向け、内閣に、内閣総理大臣を本部長とし、内閣官房長官、環境庁長官、通商産業大臣を副本部長とする地球温暖化対策推進本部を設置し、10年1月9日には、地球温暖化対策の今後の取組について、「関係審議会合同会議報告書を踏まえ、省エネルギー等二酸化炭素排出削減対策などの具体化を図るとともに、代替フロン等3ガスの排出抑制対策、植林等の吸収源対策等を講じるなど、対策を総合的に推進する。」とし、省エネルギー法(エネルギーの使用の合理化に関する法律)の抜本的改正をはじめとした重点的に取り組むべき対策を決定した。
これを受け、?トップランナー方式の導入による自動車、家電・OA機器等のエネルギー消費効率の更なる改善の推進?工場・事業場におけるエネルギー使用合理化の徹底等を内容とした「エネルギーの使用の合理化に関する法律の一部を改正する法律案」が平成10年3月13日に閣議決定され、第142回通常国会に提出された。
また、平成9年12月16日には環境庁長官から中央環境審議会に「今後の地球温暖化防止対策の在り方について」の諮問がなされた。中央環境審議会においては、既に環境基本計画の毎年の実施状況の点検の一環として、また、同年8月からは、審議会の発意により、国民の意見も聴きつつ、地球温暖化防止対策の在り方について集中的な審議を行っていたところであるが、諮問を受け、京都議定書の履行を担保する総合的な制度と現段階で実施すべき対策の在り方について審議を行い、特に今日の段階で取り組むべき対策について重点を置いて、10年3月6日、「今後の地球温暖化防止対策の在り方について(中間答申)」をとりまとめた。政府は、「地球温暖化対策の推進に関する法律案」を10年4月28日に閣議決定し、第142回通常国会に提出した。
さらに、関係審議会合同会議報告書を踏まえ、平成10年3月から、産業構造審議会、総合エネルギー調査会、産業技術審議会、化学品審議会の4審議会合同小委員会に設置された7つの分科会が、透明性を確保しつつ、25事業者団体ごとに、その行動計画等に掲げられた産業界の省エネルギー・CO2排出削減対策が確実に実施されるよう定期的なフォローアップを開始した。
HFC等については、平成10年2月の化学品審議会報告に基づき策定された「産業界によるHFC等の排出抑制対策に係る指針」を踏まえ行われた要請を受け、関係各業界において、HFC排出抑制に係る技術的・経済的に最大限の取組を自主的に行うための行動計画が策定されている。