3 京都議定書の概要
(1) 数量目的の具体的削減数値
附属書?締約国全体の目標として、2008年から2012年の5年間について1990年比で少なくとも5%削減することとなった。各国の削減率は、日本が6%、米国が7%、EUが8%などと、8%削減から10%増加までの国別差異化方式がとられ、附属書?締約国全体で5.2%の削減が実現できることとなった(第序-1-1表参照)。
(2) 対象とする温室効果ガス
二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素に加え、HFC、PFC、SF6を加えた6種類となった。ただし、HFC、PFC、SF6については、削減の基準年を1995年としてもよいこととされた。
(3) 吸収源の取扱い
1990年以降の新規の植林、再植林及び森林減少に限定した人為的活動に起因する温室効果ガスの排出及び吸収の純変化についても、削減量として数えられることとした。また、今後、土地利用変化や林業部門の追加的活動についての取扱いを検討していくこととされた。
(4) EUバブル
地域的な経済統合のための機関であるEC(ヨーロッパ共同体)加盟国に限らず、数値目標を共同で達成することに合意した国は、各国の総排出量が合意に参加する国の数値目標の合計を超えなければ、約束を実施したとみなされることとなった。
(5) 目標達成のための柔軟性のある国際的仕組み等
排出割当量の取引の導入については、最後の全体委員会まで途上国が強く反対していたが、最終的には導入が決定された。ただし、その原則、方法、規則、指針は今後の締約国会議において定められることとなった。
共同実施については、附属書?締約国(先進国市場経済への移行過程にある国を含む)間の共同実施が認められた。さらに、途上国において温室効果ガス排出削減プロジェクトを実施し、その削減量が認証された場合には、附属書?締約国が削減量を取得して、その国の排出割当量に加えることができる「クリーン開発メカニズム」が導入されることになった。
バンキング(目標期間中の割当量の次期目標期間への繰越し)については認められたが、ボローイング(次期目標期間からの割当量の借入れ)については認められなかった。
(6) 政策・措置
数値目標達成のために採用すべき政策措置として、エネルギー利用効率の向上や、新エネルギー、再生可能エネルギー、先進的・革新的技術の研究、開発及び利用拡大、及び森林のCO2吸収源の保護等の政策措置を、国情に応じて講じることとされた。
(7) 途上国問題
途上国の自発的な取組の規定については、最後の全体委員会まで議論が続いた結果、途上国の強い反対により、最終段階で削除された。また、近い将来の途上国への数値目標の導入の在り方については、十分な議論を行うことができず、これらの課題はCOP4以降の課題として残された。
(8) 資金メカニズム
条約の資金供与メカニズム(暫定的にGEF(Global EnvironmentFacility)が運営を委託されている)を通じて、この議定書の実施のために必要な資金を供与することとされた。
(9) 議定書の発効条件
55の条約締約国が議定書を締結し、かつ附属書?締約国全体の1990年の二酸化炭素排出量の55%を占める国が締結した日から90日後に効力を生ずることとなった。