2 化学物質環境安全性総点検調査の概要
(1) 環境調査の概要
平成7年度においては、環境調査(水系)は水質で全国56地点・30物質、底質で56地点・24物質、魚類で51地点・8物質を対象とした調査を実施した。
環境調査(大気系)は、全国18地点で18物質を対象に調査を実施した。
ア 環境調査(水系)
今回の調査の結果、水質では6物質、底質では15物質、魚類では3物質が検出された。検出された物質のうち、ビス(2-クロロエチル)エーテル、アジピン酸ビス(2-エチルヘキシル)、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレート、3,5,5-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-オン、2-ブタノン、トリクロサン、3-クロロトリクロサン、5-クロロトリクロサン、3,5-ジクロロトリクロサンについては、今後一定期間をおいて環境調査を行い、その推移を監視することが必要と考えられる(第1-5-1表)。
イ 環境調査(大気系)
今回の調査の結果、18の調査対象物質全てが検出された。検出された物質のうちクロトンアルデヒドについては速やかに、酢酸ビニル、メタノール及び1,3-ジクロロ-2-プロパノールについては一定期間後に環境調査を行い、アセトアルデヒドについては、更に詳細な調査及び評価が必要と考えられる(第1-5-2表)。
(2) 水質・底質モニタリングの概要
水質・底質モニタリングは、環境調査の結果等により水質及び底質中に残留していることが確認されている化学物質(主に第一種特定化学物質)について、その残留状況の長期的推移を把握することにより環境汚染の経年監視を行うことを目的として昭和61年度から実施しているものである。
平成7年度においては、全国18地点で20物質を対象に調査を実施した。その結果、水質からは5物質、底質からは20物質すべてが検出された(第1-5-3表)。
水質においては10地点で1〜5物質が検出されているが、それ以外の地点ではすべてが検出されておらず、全体的に低い検出状況である。
底質からの検出状況は水質に比べて全体的に高く、16地点でそれぞれ5〜19物質が検出され、特に過半数の11物質以上が検出された地点は7地点となっている。また、調査対象物質ごとの最高値をみると、閉鎖性の内湾部の汚染レベルが高いことが示唆される。
(3) 生物モニタリングの概要
生物モニタリングは、第一種特定化学物質及び環境調査結果等から選定した物質について、生物(魚類、貝類、鳥類)を対象に環境汚染の経年監視を行うことを目的として、昭和53年度から実施しているものである。
平成7年度においては、全国21地点で7物質群(計22物質)を対象に生物中の残留濃度を調査した。その結果、各物質群ともいずれかの生物から検出された。これらの物質群の多くは、使用が中止されているものの、いずれの物質も依然として環境中に残留しており、今後ともその残留状況を注意深く追跡していく必要がある。
なお、有機スズ化合物による環境汚染の状況については、指定化学物質等検討調査結果と併せ、中央環境審議会環境保健部会化学物質専門委員会において次のとおり評価されている。
(トリブチルスズ化合物)
トリブチルスズ化合物は環境中に広範囲に存在しており、その汚染レベルは、生物及び底質において概ね横ばい傾向であり、水質においては改善ないし横ばいの状況にある。
現在の汚染レベルが特に危険な状況にあるとは考えられないが、一部地点で高濃度での検出がみられ、水生生物への生態影響の可能性もあることから、引き続き環境汚染対策を推進するとともに環境汚染状況を監視していく必要がある。
(トリフェニルスズ化合物)
トリフェニルスズ化合物は環境中に広範囲に残留しているが、水質、底質、生物とも改善の傾向にある。その汚染レベルは、生物については一部地点で高濃度の検出がみられるものの、生物及び底質においては概ね横ばい、水質においては改善の傾向が続いている。なお、水質については平成7年度、本調査開始以来初めて全地点で不検出となった。
現在のトリフェニルスズ化合物の生産状況を考慮すれば、汚染状況はさらに改善されていくことが期待されるが、今後とも引き続き環境汚染対策を継続するとともに、環境汚染状況を監視していく必要がある。