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第1節 

4 多様な有害物質による健康影響の防止

 以上のほか、長期的に推移を把握していく必要のある大気汚染物質については、昭和60年度からモニタリング調査を実施している。
 この調査結果によると、アスベスト及び水銀については、いずれもただちに問題となるレベルではなかった。揮発性有機化合物については、新たに環境基準が設定されたベンゼンの一般環境における測定結果の平均値は0.0031mg/m
3
であった(環境基準値は0.003mg/m
3
)。ベンゼンと同時に環境基準が設定されたテトラクロロエチレンとトリクロロエチレンについては、環境基準値を下回った。
 化学物質はその用途、種類が多岐にわたり、工業用に生産されている物質だけでも現在約5万種に及ぶ。環境庁では、一般環境中に残留する化学物質の早期発見及びその濃度レベル把握を目的として、既存化学物質等の残留状況を効率的、体系的に調査している。平成7年度の調査においては、調査対象18物質すべてが検出された。このうちアセトアルデヒドについてはさらに詳細な調査及び評価が、クロトンアルデヒドは検出頻度は低いものの速やかに環境調査等を行いその推移を監視することが、酢酸ビニル、メタノール及び1,3-ジクロロ-2-プロパノールについては、現時点では特に問題を示唆するものではないものの、今後一定期間をおいて環境調査を行いその推移を監視することが、それぞれ必要な状況にある。
 揮発性有機化合物の有害大気汚染物質については、健康影響の懸念から注目されており、金属脱脂洗浄剤・溶剤等を用途とするトリクロロエチレン及びドライクリーニング溶剤・金属脱脂洗浄剤・フロンの原料等を用途とするテトラクロロエチレンについては、我が国の大気において広い範囲で検出されている。また、その発生源の周辺では局所的ではあるものの比較的高い濃度が検出される事例がある。
 近年、我が国の大気環境の調査結果によると、大気中から低濃度ではあるが発がん性等の有害性が問題とされる物質が種々検出されており、物質によってはその長期暴露による国民の健康への影響が懸念される状況に至っている。このため、有害大気汚染物質対策の推進に関する各種の規定を盛り込んだ、「大気汚染防止法」の改正が平成8年5月に行われ、平成9年4月に施行された。この改正法に基づき制定された政令によって、低濃度長期暴露による健康影響が懸念される有害大気汚染物質のうち、ベンゼン、トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンを指定物質(排出又は飛散を早急に抑制しなければならない物質)に指定し、指定物質を排出する指定物質排出施設(政令で指定:一定規模以上の乾燥施設、蒸留施設等11種)について指定物質の排出の抑制に関する基準(指定物質抑制基準)を定めた。また、これら3物質について、環境基本法第16条の規定に基づく環境基準が制定され、これを目標として排出抑制対策を推進していくこととなった。

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