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第1節 

5 地域の生活環境に係る問題への対策

(1) 騒音・振動対策
ア 騒音評価手法の再検討
 昭和46年に設定された我が国の一般環境及び道路沿道に係る騒音環境基準では、中央値(L50)による評価を原則としてきたが、その後、騒音測定技術が向上し、近年では国際的に等価騒音レベル(Leq)が採用されつつあること等の動向を踏まえ、Leqの導入の可能性を含め騒音評価手法の再検討を行う。
イ 工場・事業場及び建設作業騒音・振動対策
 「騒音規制法」、「振動規制法」に基づき、特定施設を設置する工場・事業場及び特定建設作業についての規制を行うとともに、苦情が相当ありながら規制対象となっていない施設・建設作業の騒音・振動対策について引き続き調査検討を行う。また、建設作業の騒音・振動については、低騒音型建設機械・低振動型建設機械の開発・普及を引き続き進める。
 また、振動については、現在環境保全目標は(「大部分の地域住民が日常生活において支障がない程度」という)抽象的な表現となっているので科学的知見に基づいた具体的な数値で表される環境保全目標の策定のための研究を引き続き行うとともに、新たに規制基準の見直し等に関する調査検討を開始する。
ウ 自動車交通騒音・振動対策
i) 自動車構造の改善
 道路交通騒音対策については、自動車単体からの騒音の低減対策として、平成4年11月になされた加速走行騒音に関する中間答申及び7年2月になされた定常走行騒音、近接排気騒音に関する答申に沿って、自動車騒音低減技術の進捗状況に関する評価を行うなど、これらの答申に示された目標値の早期達成のための所要の措置を講じる。
ii) 総合的施策
 騒音低減のための総合的施策については、平成7年3月の中央環境審議会の答申等を踏まえ、道路構造対策、交通流対策、沿道対策等の総合的な推進を図っていく。さらに、地方における道路交通騒音防止対策の計画的総合的推進に資するため、地域レベルの道路交通騒音対策の基本方針の策定に対して支援を行っていく等により地域が一体となった道路交通騒音対策を推進しつつ、国においても関係各省庁と連携して各種対策の総合的実施を図っていく。
 具体的な道路交通騒音対策の実施については、平成7年12月に警察庁、環境庁、通商産業省、運輸省及び建設省の5省庁において取りまとめられた「道路交通騒音の深刻な地域における対策の実施方針」にも示されているように、中央環境審議会答申の基本方針を踏まえつつ、実施地域レベルにおいても各施策実施主体が一致協力して、道路交通騒音の深刻な地域について、可能な限り道路構造対策を実施し、これに加えて交通流対策、沿道対策等を実施する考え方に則り、以下の施策等で構成された総合的な対策方針を立て、地域に応じた施策を推進していく。
 道路構造の面からの対策としては、可能な限り高架道路に遮音壁の設置を進めるほか、連続桁の採用及び既設桁の連結、低騒音舗装の敷設の推進等を図るとともに、特殊吸音体を備えた遮音壁、低騒音舗装の騒音低減効果の持続性の向上等の技術開発等を行う。また、平面構造の道路においても騒音の観点に加えて沿道利用、景観等総合的な観点から地域の意向を踏まえつつ遮音壁の設置を推進するとともに、通常の遮音壁が設置できない地域においても低層の遮音壁や低騒音舗装の敷設等可能な限りの対策を実施する。二層構造の道路においては、高架、平面それぞれの道路における対策と同時に、必要に応じ、裏面吸音板の設置等総合的対策を図る。
 物流対策としては、港湾関連貨物輸送等におけるトラックから内航船への転換を推進するための複合一貫輸送に対応した内貿ターミナルの整備等港湾相互の適切な連携、港湾関連交通を幹線道路へ誘導するためのアクセス道路の整備等による背後市街地の交通負荷の低減を図る。また、関係機関、民間事業者等で構成される協議会を設置して、地域における貨物輸送における適切な交通機関の選択、物流拠点の整備等を推進するための具体策について検討する。さらに、輸送実態、道路の整備状況等を踏まえ、物流の合理化と運転マナー改善に関し、帰り荷の確保、代替道路の利用等について運輸事業者に要請していく。
 人流対策として、都市におけるバス交通の活性化や交通結節点の整備による公共交通機関の利用の促進を図る。
 交通流対策としては、沿道環境保全に配慮しつつ道路ネットワークの整備の推進、交通管制センターの高度化を図るほか、次世代の道路交通情報提供システムであるVICS(道路交通情報通信システム)について、平成8年4月に首都圏の高速道路及び一般道路、東名・名神高速道路等においてサービスを開始するとともに、引き続き、全国への展開を積極的に図る。また、速度違反取締り等の強化、高速走行抑止システムの増設等による交通管理を行うとともに、ロードプライシング等の交通流の誘導措置の検討、交差点改良等により交通混雑の緩和を図り、騒音等の軽減を図る。
 沿道環境対策としては「幹線道路の沿道の整備に関する法律」に基づく沿道整備道路の指定、沿道整備計画の策定、沿道整備を推進するための施策の拡充を行うとともに、「幹線道路の沿道の整備に関する法律」の一部改正を受けて、道路沿道環境の整備のための各種の措置を講じる。また、高速自動車国道等の周辺においては住宅の防音工事助成等を引き続き実施する。さらに、道路開発資金制度により沿道環境の向上に資する建築物の建築等に対する長期の低利融資を行う。また、都市計画等を通じた適切な土地利用の誘導、土地区画整理事業等の手法の活用等について関係地方公共団体への指導・支援を図る。
エ 航空機騒音対策
 公共用飛行場周辺における航空機騒音対策については、航空機騒音に係る環境基準の早期達成に向けて発生源対策及び空港周辺対策を強力に推進する。
 発生源対策として、低騒音型機の導入、騒音軽減運航方式の実施等を促進する。低騒音型機の導入の促進にあたっては、昭和53年に強化された騒音基準に適合しない航空機について、段階的に運航の制限を行う。また、空港周辺対策として、次のような施策を実施するとともに、引き続き緑地帯の整備、再開発整備事業等を推進し、空港と周辺地域との調和ある発展を図る。
? 住宅、教育施設等防音工事補助において防音工事後一定期間経過した空調器の機能回復事業を行う。
? 住宅防音工事の補助対象区域を拡大してきたなかで、旧区域にあって補助の対象から取り残されていた住民に対し住宅防音工事を実施する。
? 移転補償事業について、引き続き積極的に推進していく。
? 緩衝緑地帯等整備事業として、空港周辺の環境改善と防災機能の向上等を図るためエア・フロント・オアシス(親空港親水公園)整備を行うこととしている。
? 周辺環境基盤施設整備事業補助については、5空港の周辺で実施する。また、近年全国で立地の動きがみられるヘリポート、コミュータ空港等は、離着陸回数が10回以下で環境基準の適用とならないものが多いので、環境庁において、「小規模飛行場環境保全暫定指針」に基づき、その騒音問題の発生の未然防止に努めていく。
 自衛隊等の使用する飛行場についても航空機騒音に係る環境基準の目標の早期達成に向けて、消音装置の使用、飛行方法の規制等の音源対策、運航対策に努めるとともに、「防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律」を中心に周辺対策を推進することとしており、平成8年度における学校、住宅等の防音工事の助成及び建物等の移転補償等の事業を行うための環境保全関係予算としては1,004億円の事業費を計上している。
オ 新幹線鉄道騒音・振動対策
 新幹線鉄道の騒音・振動を軽減するため、発生源対策及び技術開発等を計画的に実施するよう旅客会社等を指導する。
 東海道・山陽新幹線においては、住宅が集合する地域について、東北・上越新幹線においては住宅集合地域に準じる地域について、今までの各種音源対策の効果及び実施状況を踏まえつつ、所要の対策を実施し、75デシベルを超える地域にあっては、平成8年度末を目途に75デシベル以下とするとともに、その他の地域についても、環境基準の達成に向けて対策に努めるよう引き続き指導する。
 これら音源対策に併せて行う民家等に対する防音及び防振工事については、申し出のあった対象家屋についてはすべて終了しているが、今後とも申し出のあるものに対して助成が行われるよう指導する。
 これらのほか、環境基準の達成に向け技術開発が鋭意進められるよう指導していくとともに沿線土地利用の適正化を図る。
カ 在来鉄道騒音・振動対策
 在来鉄道の個々の騒音・振動問題については、関係機関と連絡をとりながら適切に対処していくこととしているが、新線又は大規模改良の計画に際しては、平成7年12月に定めた「在来鉄道の新設又は大規模改良に際しての騒音対策の指針」に基づき騒音問題の発生を未然に防止するための対策を実施するよう指導していく。
キ 近隣騒音対策
 生活騒音等の近隣騒音に対処するため、引き続き音環境モデル都市事業等を行う。
 また、昨年度に引き続き「残したい“日本の音風景100選”」事業を進め、最終的な選考や認定等を行う。
(2) 悪臭対策
 平成7年4月に成立した悪臭防止法の一部を改正する法律が平成8年4月から施行されることから、嗅覚測定法(人の嗅覚を用いた悪臭の測定法)による臭気指数の規制の円滑な施行を図るため、地方公共団体に対する臭気指数規制の導入に係る費用の助成、地方公共団体職員を対象とした嗅覚測定技術の研修を行う。また、地方公共団体から委託を受けて臭気指数の測定を行う臭気判定士の資格試験を実施する。
 また、臭気指数規制の導入により新たに悪臭防止対策が必要とされる事業者に対して、地方公共団体が適切な改善措置を指導できるよう、悪臭防止技術マニュアルを整備するとともに、引き続き、煙突等の気体排出口及び排出水に係る臭気指数の規制基準を設定するための調査・検討を進める。
 さらに、改正後の悪臭防止法においては日常生活に起因する悪臭の防止に関する国民の責務等が新たに規定されたことから、これを踏まえた施策の一つとして、良好なにおい環境の保全のため、地域住民の参加と協力を得て、都市生活に伴う悪臭を減らすための具体的な市民行動を喚起することを目標とした「かおり環境都市モデル事業(クリーンアロマ推進計画)」を実施する。また、一般環境大気におけるにおいに関する目標設定のための調査検討を行う。
(3) その他大気に係る生活環境保全対策
ア 大気汚染防止法等による大気汚染対策を推進するとともに、光害やヒートアイランドなどの新たな問題も視野に入れつつ、良好な大気生活環境の実現方策等に関する調査検討を引き続き行う。また、改正された大気汚染防止法等に盛り込まれた国民の責務規定の効果的履行のため、大気環境にやさしい行動普及マニュアルの作成等を行う。
イ 大気汚染地域等において公立義務教育諸学校の設置者が行う学校環境緑化促進事業、騒音等の公害により著しく不適当な教育環境になっている公立学校の公害防止工事等に要する経費等への補助を引き続き行う。また、私立学校の公害防止事業に対しては、日本私学振興財団が行う貸付事業において、平成8年度は貸付額5億円を計上している。

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