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第1節 

3 大都市圏等への負荷の集積による問題への対策

(1) 窒素酸化物対策
ア 自動車排出ガス対策
 自動車排出ガス対策については、平成元年12月の中央公害対策審議会答申に沿ったディーゼル車を中心とする排出ガス規制の一層の強化を進めるとともに、排出ガスのより少ない最新規制適合車への代替促進を図る。また、未規制自動車からの排出実態調査結果を踏まえ、特殊自動車等の排出ガス抑制策の検討、低公害車の開発・普及の促進に資する排出ガス技術指針の策定・見直し及び技術開発の促進に関する調査、ディーゼル排気微粒子を低減するための調査等を実施する。
 また、大気保全上必要な自動車燃料の品質の確保のため、許容限度の設定・見直しに必要な調査を実施する。この一環として、自動車排出ガスの規制の強化に伴い必要となる軽油の低硫黄化の促進を図る。
 大都市地域における自動車排出窒素酸化物総量の一層の削減のため、「自動車から排出される窒素酸化物の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法」に基づく施策を関係省庁、地方自治体との連携のもとに総合的に推進する。
 特定自動車排出基準適合車、最新規制適合車等への代替促進については、税制上の優遇措置、政府系金融機関による低利融資、公営バスの更新に対する財政支援措置を講ずるとともに、「公害健康被害の補償等に関する法律」に基づき公害健康被害補償予防協会におかれた基金(以下「公健法の基金」という。)の活用等によるキャンペーン活動を実施する。
 低公害車の普及は大都市地域の窒素酸化物及び浮遊粒子状対策や地球環境問題としての二酸化炭素対策として重要であり、また、電気自動車、メタノール自動車、CNG(圧縮天然ガス)自動車、ハイブリッド自動車のそれぞれの特性に応じた使用が可能な段階にきている。
 このため、地方自治体等が、率先してゴミ収集車等の現場に低公害車を集中的に導入し、活用することを促進する新たな助成制度を創設する。これにより、各低公害車の特性を活かした利用が可能であることを実証し、低公害車の開発促進、価格の低下、低公害車使用に対する理解の向上を図り、大量普及の契機とする。
 また、国においても「率先実行計画」に基づき、各省庁が、率先して計画的に低公害車の普及を図る。
 このほか、公健法の基金による助成、地方公共団体の公害パトロール車の低公害車導入に対する助成、低公害車用燃料供給設備の整備促進、税制上の優遇措置等により、関係省庁や地方公共団体の連携のもとに低公害車の普及拡大を積極的に推進していく。
 その他、「地域の生活環境に係る問題への対策」において掲げた道路交通管理、道路整備、道路構造対策、物流の効率化を推進する。
イ 固定発生源対策
 これまでの排出量の低減の実績を踏まえ、東京都特別区等、横浜市等及び大阪市等の総量規制地域については、年間を通じた排出実態等規制の実施状況を把握し、総量規制の徹底を図る。さらに、ビル暖房等の群小発生源が集合して設置されている地域について、群小発生源からの窒素酸化物の排出状況、環境影響等の把握を行い、地域冷暖房、中でも未利用エネルギーを活用した地域冷暖房及びNOx対策を適正に実施したコージェネレーションの導入、地区単位での良質エネルギーへの転換、優良品推奨基準としてのNOx排出ガイドライン値に適合する機器の普及促進を推進する。
ウ その他の対策
 特に窒素酸化物濃度の高くなる冬期等特定期間を対象に「季節大気汚染対策」を実施し、また、12月を「大気汚染防止推進月間」として、国民各層に対し各種のキャンペーンを行う。
 さらに、季節変動による窒素酸化物高濃度時の対策について検討を行うとともに、大気浄化能力を有する植栽の整備等の地域の大気環境改善に資する各種の事業を引き続き推進する。
 なお、船舶から排出される窒素酸化物、硫黄酸化物等については、船舶からの排出実態、排出削減技術の動向等を把握して、国際海事機関(IMO)における検討に対応した排出削減手法を引き続き検討する。
 また、建設工事に伴う建設機械からの排出ガス対策としては、排出ガス対策型建設機械の開発・普及を引き続き推進する。
(2) 浮遊粒子状物質対策・ディーゼル排気微粒子等対策
 浮遊粒子状物質については、環境基準の達成率が依然として低く、その早期達成が課題であるが、浮遊粒子状物質の発生源は多種多様であり、汚染機構が複雑であることから、引き続き各種発生源調査及びフィールド調査の実施、汚染機構の解明、汚染予測手法の開発、効果的な削減手法の調査研究、凝縮性ダストの排出実態及び汚染機構の解明等を推進し、総合的な対策の検討を行っていく。
 なお、自動車から排出される粒子状物質については、平成元年12月の中央公害対策審議会答申に沿ってディーゼル車に対する粒子状物質規制の一層の強化を進める。特に、大気中のディーゼル排気微粒子については、大気汚染実態や排出実態を把握するとともに、自動車からの排出低減技術の検討を行うなど、今後の対策に向けて総合的な調査検討を行っていく。
(3) スパイクタイヤ粉じん対策
 環境庁では、「スパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する法律」の円滑な施行を図るため、引き続き、国民に対する指定地域の周知徹底、知識の普及、意識の高揚等の施策を推進する。また、冬期道路交通の確保、冬期安全運転教育等の関連施策についても、関係省庁及び地方公共団体と連携を図りつつ、その推進に努めていく。
(4) 硫黄酸化物対策等
 硫黄酸化物は、大部分石油、石炭等の燃料消費に起因することから、エネルギー事情等の推移を見守りつつ、今後も二酸化硫黄の環境基準を維持達成するため所要の対策を講じていく。

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