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第1節 

3 地方公共団体の環境保全対策

(1) 地域における環境保全施策の計画的、総合的推進

 持続可能な社会づくりの基礎は地域の環境の保全であり、地方公共団体の役割は大きい。このため、地方公共団体は、地域の自然的社会的条件に応じて、取組の目標・方向等の設定・提示、各種制度の設定や社会資本整備等の基盤づくり、各主体の行動の促進など、国に準じた施策やその他の独自の施策を自主的積極的に策定し、国、事業者、住民等と協力・連携しつつ、多様な施策を地域において総合的に展開することが期待されている。地方公共団体に期待される役割が円滑、確実に発揮されるよう、平成7年度にも、国において、地方公共団体に対する必要な協力、連携が図られた。各個別の項目についての協力等に係る国の施策については、本年次報告のそれぞれ該当の箇所に掲げるとおりであるが、地域における環境保全施策を総合的に推進することに向けては、次のような各種の施策を講じたところである。
 ? 地方公共団体では、かねてより、公害の防止と自然環境の保全等を一体的に進めるため、環境管理計画等の名称で計画の策定が図られてきており、環境庁では、その策定への技術的支援などを行ってきた。こうした中、国において環境基本法に基づき環境基本計画が閣議決定されると、これを受け、地方公共団体においても、より総合的な立場から、環境基本条例を制定する動きが広がっており、多くの場合、こうした条例に基礎を置いて、総合的な地域環境計画づくりが進んでいる。
   環境庁においては、平成7年度においても、環境計画担当者間の意見や情報交換の場を設けたほか、地方の担当者の参加も得て、総合的な地域環境計画づくりのためのハンドブックの策定に向けた作業を行うことなど、国と地方のより緊密な連携を図った。また、環境基本計画の目標達成のための地方自治体の先駆的・独創的な単独事業を支援するべく、環境基本計画推進事業費補助を創設した。
 ? 日常生活等の中で環境保全活動を行っていくことに資するよう、環境保全に関する知識の普及・啓発事業を地域において継続的かつ着実に実施するため、元年度に各都道府県・政令指定都市に対し地域環境保全基金の設置に係る助成が行われ、各地で基金が設けられたが、その後、各地方公共団体においてそれぞれの基金拡充が図られている。この基金により、ビデオ、学校教育用副読本等の啓発資料の作成、地域の環境保全活動に対する相談窓口の設置、環境アドバイザーの派遣、地域の住民団体等の環境保全実践活動への支援等が行われている。
 ? 単一の都道府県を越える広域的な環境保全に係る地方公共団体の取組に関しても各般の施策が講じられた。たとえば、大阪湾臨海地域については、平成4年に制定された「大阪湾臨海地域開発整備法」において、7年度では、同法に基づく初めての大阪湾臨海地域整備計画の承認が大阪市の計画についてなされた。
 ? 地方公共団体が地球環境保全等に関する国際協力を推進することに関しては、国としてこれを支援すべく、環境庁では、「アジア地域地方公共団体環境イニシアティブ推進事業」を、国際環境自治体協議会(ICLEI)等の協力を得て行った。これは、平成6年度から2年間をかけて我が国の地方公共団体と他のアジア地域の地方公共団体との間での環境協力の手法について検討し、その具体的可能性を探るものであった。7年度においてその始動のための役割を終え、8年度以降、国内の地方自治体において、アジア地域の地方自治体とのモデル的な環境協力事業が行われることとなっている。
 ? 事業者、消費者としての地方公共団体が環境保全に関する行動を率先して実行することに関しては、国としての今後の対応の基礎資料として、地方における取組の現状等についての調査を行った。

(2) 地方環境情勢の把握

ア 地方環境情勢の把握体制
 全国各地で発生している具体的な環境問題に関する情報を、迅速かつ的確に把握するため、総務庁の地方支分部局である管区行政監察局、行政監察支局及び行政監察事務所(以下「管区局等」という。)が、環境庁の所掌事務に関する調査、資料の収集整理等の事務を分掌している。現在、管区局等には専任の調査官等が41人配置されており、これら調査官等の業務については、環境庁長官が総務庁の管区局等の長を直接指揮監督している。
 また、これら業務に関連して、環境庁には長官官房総務課に環境調査官4人を置き、管区局等との連絡調整、環境庁の所掌事務に係る地方環境情勢に関する調査、資料の収集及び整理、環境モニターに係る事務並びに所掌行政に関する相談事務を処理している。
イ 平成7年度における地方環境情勢の把握
(ア) 総務庁の管区局等の調査官等による情報収集
 地方環境情勢の常時把握を行っている調査官等から、平成7年度に環境庁に報告された地方環境情報は26,446件であり、報告件数の多い主な分野は、自然や野生生物の保護に関するもの、各種開発による環境影響に関するもの、廃棄物に関するもの、快適環境づくりへの取組に関するもの等であった。
(イ) 環境モニタ・からの情報収集
 環境問題に関する国民の意見・要望などを全国的に把握するため、全国で1,500人の環境モニターを委嘱している。これら環境モニターから報告された随時の意見・要望等は、環境庁の各種施策の企画、立案等に活用されている。また、環境モニターを対象に「音環境について」、「新しい環境行政の方向について」をテーマとして、アンケート調査を実施した。
(ウ) 資料の収集及び整理
 調査官等を通じて収集整理した主な資料は次のとおりである。
i) 地方環境情報等
 ? 全国環境事情 環境問題について都道府県別に分類、整理したもの。
 ? 環境保全施策 都道府県等の単独経費により実施された環境保全施策について分類整理したもの。
ii) 法令施行状況
 都道府県及び政令指定都市における「大気汚染防止法」、「水質汚濁防止法」、「騒音規制法」、「振動規制法」及び「悪臭防止法」に係るそれぞれの施行状況に関するもの。
iii) その他の資料収集
 以上の情報収集等のほか、空き缶散乱の実態を継続的に把握するため全国の約700市区町村を対象とした実態調査を管区局等を通じて実施した。

(3) 地方公共団体の環境保全対策

 地方公共団体が行う環境保全対策については、地域の自然特性、環境の状況、社会経済の動向等を踏まえ、さらには地域住民のニーズに対応して総合的に講じられることが重要である。多くの地方公共団体で、地域の環境保全対策を体系的に推進するため、環境保全に関連した条例の制定や地域の環境計画の策定に取り組んでいる。
 地方公共団体においては、こうした条例等の下、廃棄物・リサイクル対策、環境影響評価の推進・制度化の検討、環境負荷の少ないエネルギーの導入促進、自動車利用の合理化指導、低公害車の普及・推進、交通基盤の整備、生活排水対策の推進、生活騒音対策、緑化の推進、トラスト制度等による緑の保全等の施策を行っている。
 これらの施策に関しては、地方の単独財源を充当するほか、事業ごとに国の所要の補助金が交付されている。平成7年度の地方財政計画においては環境保全対策経費として2,330億円が計上され、地方交付税措置等の充実が講じられている。
ア 環境行政担当組織及び職員の現況
 都道府県・指定都市に関しては、平成7年3月31日現在、公害等(廃棄物、下水道関係等を除く。市町村についても同じ。)担当職員数は、7,308人、自然保護担当職員数は1,825人となっている。
 また、市町村に関しては、平成7年3月31日現在、公害等専門部局課(室)を有している市町村は381団体、それ以外で公害等専門係(班)を設置し、又は公害等選任職員のみをおいている市町村は1,303団体であり、これらの市町村を合計すると全市町村の52%となる。
イ 条例の制定状況
 地方公共団体の環境保全関連条例は、地域において環境保全対策を確実に推進する上で重要なものである。特に、平成5年11月に環境基本法が制定されて以降、地方公共団体において環境基本条例を制定する動きが出てきている。環境保全関連条例は、?環境基本条例、?公害防止条例、?自然環境保全(自然保護)条例、?その他の環境保全関連条例(環境影響評価条例を含む。)の4つに大別される。
 環境基本条例は、環境基本法の理念に沿い、地方公共団体の環境保全施策に関する最も基本的な事項を定めた条例をいい、平成7年度末現在で、都道府県・指定都市の制定状況を見ると、第3-1-2表のようになっている。
 公害防止条例、自然環境保全(自然保護)条例は、それぞれ公害防止分野、自然環境保全分野における地方公共団体の基本的姿勢を示すものであり、平成8年3月31日現在、都道府県・指定都市のうち、前者については51団体、後者については50団体が制定している。
 その他の環境保全関連条例としては、環境影響評価条例、空き缶の散乱防止条例等がある。
 また、市町村の環境保全関連条例の制定状況は第3-1-3表のとおりである。
ウ 総合的な地域環境計画の策定状況
 環境基本法の制定や環境基本計画の策定を契機として、地方公共団体においても、環境についての基本理念を明らかにする総合的な地域環境計画の策定が進んでおり、平成7年度末現在で、都道府県・指定都市の状況を見ると第3-1-4表のようになっている。
エ 公害防止協定の締結状況
 平成5年10月〜6年12月までの間に締結された公害防止協定数は、約2,200件となっており、協定締結相手方を業種別に見ると第3-1-5表のとおりとなっている。これによると、第2次産業の業種のみではなく、サービス業の第3次産業を中心とした「その他」に分類される業種が約40%を占めている。
 これらの協定のうち、住民も当事者として参加しているものは189、住民が立会人として参加しているものは153となっている。
 このように多くの公害防止協定が締結されている理由としては、
 ? 法令に基づく対策に加え、当該地域社会の地理的、社会的状況に応じたきめ細かい公害防止対策を適切に行うことができること、
 ? 企業側から見ても、立地に際して地域住民の同意を得ることが、企業活動の円滑な実施を図っていく上で不可欠なものと意識していること、
 等の事情が挙げられよう。
オ 公害防止施設の設置に対する助成
 平成6年度の地方公共団体独自の公害防止施設に対する融資実績は、貸付け件数約1,000件、融資総額約9,674百万円である。
 なお、融資の主な対象は水質汚濁防止施設、大気汚染防止施設、騒音対策施設等である。
 また、平成6年度における地方公共団体による公害防止施設に対する補助は、補助件数約15,000件、補助額約4,560百万円である。
カ 公害対策経費
 平成6年度において、地方公共団体が支出した公害対策経費(地方公営企業に係るものを含む。)は、5兆9,490億円(都道府県1兆4,374億円、市町村5,116億円)となっている。これを前年度と比べると、31億円(都道府県536億円減、市町村567億円増)0.1%増とほぼ同額となっている。(第3-1-6表)
 公害対策経費の内訳でみると、公害防止事業費が5兆3,966億円(構成比90.7%)、次いで一般経費が1,663億円(同2.8%)等となっている。
 さらに、公害防止事業費の内訳をみると、下水道整備事業費が4兆1,541億円で公害対策経費の69.8%と最も高い比率を占めており、次いで廃棄物処理施設整備事業費が9,682億円(構成費16.3%)となっている。

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