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第5節 

2 化学物質環境安全性総点検調査の概要

(1) 環境調査の概要

 平成6年度においては、環境調査(水系)は全国55地点の水質、底質及び50地点の魚類を対象として調査を実施した。このうち、重点調査物質として、メラミン、2-メチルピリジン、3-メチルピリジン、4-メチルピリジン及びエタノールアミンの5物質について全地点で、その他の17物質については7〜16地点で調査を実施した。
 環境調査(大気系)は、全国18地点で17物質を対象に調査を実施した。
ア 環境調査(水系)
 今回の調査の結果、22物質のうち、水質から8物質(メラミン、モルホリン、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、2-メチルピリジン、3-メチルピリジン、4-メチルピリジン、エタノールアミン)、底質から6物質(メラミン、モルホリン、2-メチルピリジン、3-メチルピリジン、4-メチルピリジン、エタノールアミン)、魚類から5物質(メラミン、o-ニトロフェノール、2-メチルピリジン、3-メチルピリジン、4-メチルピリジン)が検出された。検出濃度及び検出頻度から勘案すると、直ちに問題を示唆する状況にはないが、検出頻度が高い7物質(メラミン、モルホリン、エチレンジアミン四酢酸、2-メチルピリジン、3-メチルピリジン、4-メチルピリジン、エタノールアミン)については、今後一定期間をおいて環境調査を行い、その推移を監視することが必要と考えられる(第1-5-1表)
イ 環境調査(大気系)
 今回の調査の結果、17物質中9物質(2-メチルピリジン、3-メチルピリジン、4-メチルピリジン、エタノールアミン、ヘキサクロロベンゼン、ペンタクロロベンゼン、o-ニトロフェノール、p-ニトロフェノール、メラミン)が検出された。特にメチルピリジン類、ニトロフェノール類で検出頻度が高かった。検出された物質については、今後一定期間をおいて環境調査を行い、その推移を監視することが必要と考えられる(第1-5-2表)



(2) 水質・底質モニタリングの概要

 水質・底質モニタリングは、化学物質環境調査の一環として昭和61年度から新たに開始された。この調査は、多種類の化学物質を同時に感度良く分析できるという特徴を持ったガスクロマトグラフ/質量分析計(GC/MS)を用いて、環境調査の結果等により水質及び底質中に残留していることが確認されている化学物質(主に第一種特定化学物質)について、その残留状況の長期的推移を把握することにより環境汚染の経年監視を行うことを目的として実施しているものである。
 平成6年度においては、全国17地点で20物質を対象に調査を実施した。その結果、水質からはo-ジクロロベンゼン、m-ジクロロベンゼン、p-ジクロロベンゼン、BHT、m-ターフェニル、リン酸トリブチルの計6物質が検出され、底質からは20物質すべてが検出された(第1-5-3表)
 調査地点別にみると、水質においては7地点で、調査対象物質のすべてが検出されなかった。それ以外の10地点においても、各地点でそれぞれ1〜4物質しか検出されておらず、全体的に低い検出状況である。
 底質からの検出状況は水質に比べて全体的に高く、15地点でそれぞれ7〜19物質が検出され、特に過半数以上の物質(11物質以上)が検出された地点は8地点となっている。また、調査対象物質ごとの最高値をみると、閉鎖性の内湾部の汚染レベルが高いことが示唆される。



(3) 生物モニタリングの概要

 生物モニタリングは、「化学物質審査規制法」に基づく第一種特定化学物質及び環境調査結果等から当該化学物質による環境汚染の進行を未然に防止するうえで注意深く監視を行う必要があると考えられる物質について、生物(魚類、貝類、鳥類)を対象に環境汚染の経年監視を行うものである。
 平成6年度においては、全国20地点で7物質群(計29物質)を対象に生物中の残留濃度を調査した。その結果、各物質群ともいずれかの生物から検出された。これらの物質群は、塩素化ベンゼン類を除き、使用が中止されているものの、なお環境中に広範囲に残留しており、今後ともその残留状況を注意深く追跡していく必要がある。
 また、有機スズ化合物による環境汚染の状況については、指定化学物質等検討調査結果と併せ、中央環境審議会環境保健部会化学物質専門委員会において次のとおり評価された。
(トリブチルスズ化合物)
 トリブチルスズ化合物は環境中に広範囲に残留しており、その汚染レベルは、水質において改善の傾向がみられ、生物においても横ばい又は低下の状況にあるものの、底質においては概ね横ばいで推移している。現在の汚染レベルが直ちに危険な状況にあるとは考えられないが、一部に高い濃度がみられており、引き続き、環境汚染対策を推進するとともに、環境汚染状況を監視していく必要がある。
(トリフェニルスズ化合物)
 トリフェニルスズ化合物は、底質及び生物においては広範囲に残留しているが、生物については改善の過程にあるものと考えられる。また、水質及び生物の汚染レベルについては、一部に高い状況がみられるものの、改善しつつある。現在のトリフェニルスズ化合物の生産状況を考慮すれば、汚染状況はさらに改善されていくことが期待されるが、今後も引き続き、環境汚染対策を継続するとともに、環境汚染状況を監視していく必要がある。

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