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第1節 

3 大都市圏等への負荷の集積による問題への対策

(1) 窒素酸化物対策

ア 窒素酸化物による大気汚染の現況
(ア) 二酸化窒素の年平均値の推移
 平成6年度の二酸化窒素に係る有効測定局(年間測定時間が6,000時間以上の測定局をいう。以下同じ。)は、一般環境大気測定局(以下「一般局」という。)691市町村1,439測定局、自動車排出ガス測定局(以下「自排局」という。)210市町村363測定局であった。
 過去10年間の継続測定局(一般局1,160局、自排局239局)における年平均値の推移は第1-1-4図のとおりであり、平成6年度は、一般局0.017ppm、自排局0.034ppmと5年度と変わらず、依然高い水準で推移している。
(イ) 二酸化窒素に係る環境基準の適合状況
 二酸化窒素に係る環境基準については、昭和53年7月の環境庁告示第38号(以下、本項において「告示」という。)により「1時間値の1日平均値が0.04ppmから0.06ppmまでのゾーン内又はそれ以下であること」とされるとともに、1時間値の1日平均値(以下単に「1日平均値」という。)が0.06ppmを超える地域にあっては原則として7年以内に0.06ppmが達成されるように努め、また、1日平均値が0.04ppmから0.06ppmまでのゾーン内にある地域にあっては、原則として、このゾーン内において、現状程度の水準を維持し、又はこれを大きく上回ることとならないよう努めるものとされた。環境基準による評価は、年間における1日平均値のうち測定値の低い方から数えて98%目に当たる値(以下「1日平均値の年間98%値」という。)と基準値を比較して行う。
 平成6年度の有効測定局について環境基準との対応状況の推移は、第1-1-5図のとおりである。
 1日平均値の年間98%値が環境基準のゾーンの上限である0.06ppmを超える測定局(環境基準非達成局)についてみると、平成6年度は、一般局4.3%、自排局32.6%と、5年度と同程度であり、大都市地域を中心として環境基準の達成状況は依然低い水準で推移している。
(ウ) 二酸化窒素の環境基準に基づき区分されたゾーン内にある地域の動向
 二酸化窒素の1日平均値が0.04ppmから0.06ppmまでのゾーン内にあるとされた地域における二酸化窒素の濃度の動向については、告示第2の2中の現状の水準に当たる昭和52年度及び平成2年度から6年度までの状況は第1-1-5表のとおりである。
(エ) 自動車NOx法特定地域における二酸化窒素に係る環境基準の適合状況
 「自動車から排出される窒素酸化物の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法」(平成4年法律第70号。以下「自動車NOx法」という。)に基づき、自動車の交通が集中している地域で、これまでの措置によっては環境基準の確保が困難であると認められる地域が特定地域として指定されており、同法に基づき各種施策が実施されている。特定地域における二酸化窒素に係る環境基準非達成局数の推移は、第1-1-6表のとおりである。
(オ) 一酸化窒素の年平均値の推移
 平成6年度の一酸化窒素に係る有効測定局数は、一般局691市町村1,439測定局、自排局210市町村363測定局であった。昭和46年度からの継続測定局(一般局28局、自排局21局)における年平均値についてみると、一般局では平成6年度は0.021ppmと5年度と比べて概ね横ばいであり、自排局では平成6年度は0.055ppmと5年度と比べてやや低くなっている。
イ 自動車排出ガス対策
 大都市地域を中心とした窒素酸化物による大気汚染の改善が進まない一因として、自動車排出ガスの問題がある。自動車からの排出ガス量は自動車交通量の伸びが著しいこと(第1-1-6図)や、貨物車等に占めるディーゼル車の割合の増加等により、従来から進めてきた単体規制の効果が相殺されたため、顕著に低減はしていないと考えられる。このため、以下の対策を総合的に推進している。
(ア) 自動車構造の改善等
 自動車排出ガスについては、昭和48年以降、逐次規制強化を行い、大気汚染物質の排出量を大幅に削減してきたところである。最近では、平成元年12月に、中央公害対策審議会により、以下の内容の答申がまとめられ、短期(5年以内)及び長期(10年以内)の2段階の目標値を通じて実施することとされた(第1-1-7表)
i) 窒素酸化物の大幅低減
 ? ディーゼル車等の窒素酸化物の排出レベルの3〜6割の削減
 ? 直噴式の副室式レベルへの低減
 ? 将来的なディーゼル車のガソリン車レベルへの低減を目指した低減目標の設定
ii) 粒子状物質対策の抜本的見直し
 ? ディーゼル車の粒子状物質規制の新設及び排出レベルの6割以上の削減
 ? ディーゼル黒煙の排出レベルの半減
 iii) 軽油中の硫黄分の10分の1のレベルまでの低減
iv) 測定モードの見直し等
 この答申に沿って、短期目標については、平成6年までに規制の強化を実施したところである。また、長期目標については、2年10月より自動車排出ガス技術評価検討会を開催して継続的に技術評価を行い、その早期達成を図ってきており、4年6月の同検討会の報告を受けて、ガソリン中量車については6年、ガソリン重量車については7年に規制を強化した。一方、ディーゼル車については、5年8月、6年10月及び7年11月の同検討会の報告で9年から11年頃に長期目標を達成できると評価されたところであり、車両総重量12トン超の大型トラック、バスを除き、8年1月に規制強化のための告示改正を行ったところである。長期目標については、答申後遅くとも10年以内に達成すべきものとして示されたものであり、すべての車種で期限内に具体的な達成時期の目途が立ったところである。
 また、現在自動車排出ガス規制の対象となっていない二輪車及び特殊自動車について、炭化水素及び二酸化窒素による大気汚染に相当程度寄与していることが判明したところである。このうち、二輪車については、新たに自動車排出ガス規制に係る許容限度の対象となる自動車に追加すること等を内容とする大気汚染防止法の一部を改正する法律案を第136国会に提出した。
 また、軽油中の硫黄分の低減を促進するため、石油精製業者が取得する一定の設備について所得税、法人税及び固定資産税の軽減措置が実施されている。
 また、市場の一層の自由化が進む中で、特定石油製品輸入暫定措置法(特石法)が平成8年3月の期限切れをもって廃止され、石油製品(ガソリン、軽油及び灯油)の輸入主体が拡大された。一方、現在の大気保全は、石油製品の一定の品質を前提として成り立っており、輸入主体の拡大により品質の劣る石油製品が流通した場合、大気環境に悪い影響が生じるおそれがある。このため、自動車燃料の品質の確保のための規定及び自動車排出ガスの抑制のための国民の努力についての規定を設ける等を内容とする大気汚染防止法の一部を改正する法律が7年4月に公布された。これを受けて、環境庁は、自動車燃料に関する許容限度を7年10月に設定したところである。
(イ) 自動車NOx法
 自動車NOx法特定地域における平成6年度の二酸化窒素濃度の状況をみると、年平均値は前年度と比較してほぼ横ばいであり、環境基準の達成状況は一般環境大気測定局で80.3%、自動車排出ガス測定局で35.5%と、依然として厳しい状況が続いている。また、これらの地域における窒素酸化物の発生源別の排出量を推計してみると、自動車からの排出割合は、東京都で71%、大阪府で56%となっており、大きなウェイトを占めている(平成2年度)。
 このような状況に鑑み、大都市地域における窒素酸化物汚染の改善のため、平成4年に公布された「自動車から排出される窒素酸化物の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法」に基づき地域全体の自動車排出窒素酸化物の総量の削減を図っている。
 自動車NOx法に基づく特定地域においては、自動車排出窒素酸化物削減のための具体的計画である総量削減計画に基づき、自家用トラックから積載効率のよい営業用トラックへの転換、自家用トラックが適している輸送分野における配送ルートの最適化、車両の大型化による輸送効率の向上及び共同輸配送等による物資輸送の効率向上によりトラック走行量の抑制を図る物流対策、公共交通機関の整備、利便性の向上等により自家用乗用車利用の抑制を図る人流対策及び環状道路等を環境保全に配慮しつつ整備することや交通管制システムの整備、交差点構造の改良等によって、交通の分散と円滑化を図る交通流対策を総合的かつ計画的に推進している(第5項 地域の生活環境に係る問題への対策・(1)ウ 自動車交通騒音・振動対策も参照)。
 また、特定地域内を使用の本拠とするトラック、バス等について定められている特定自動車排出基準に適合しないトラック・バス等の使用を制限する車種規制の円滑な実施を図っている。
 その他、自動車単体対策の強化、最新規制適合車等のより低公害な車種への代替促進や電気自動車、天然ガス自動車等の低公害車の導入・普及についても、税制上の優遇措置、「公害健康被害の補償等に関する法律」に基づき公害健康被害補償予防協会に置かれた基金(以下「公健法の基金」という。)の活用等により積極的な取組を進めている。
(ウ) 低公害車の普及促進
 低公害車の普及のために、一層の性能向上を図るための技術開発の推進、価格を低減するための各種支援措置、インフラ(燃料供給施設)整備の推進、公用車への低公害車の率先導入といった様々な取組を実施している。
 技術開発の推進に関しては、電気自動車用次世代バッテリーの開発を精力的に進める他、天然ガス自動車の実用化に向けての研究開発、大都市地域の民間事業者による低公害車使用モニター調査、環境庁の官用車への電気自動車の試験的導入等を実施している。また、低公害車の開発促進を目的に、各種低公害車の排出ガスの統一的な評価を行い、開発目標としての排出ガス指針を平成7年6月に策定したところである。
 価格低減のための支援措置としては、地方公共団体の公害パトロール車の低公害車化に対する助成措置、公健法の基金による導入助成、民間バス事業者が低公害バスを導入する際の助成措置等を行うほか、自動車取得税の軽減措置や、低公害車の取得に関する減価償却の特例又は税額控除の選択的軽減措置といった税制上の優遇措置が講じられている。
 インフラ整備に関しては、「エコステーション2000計画」により平成6年度までに37か所の燃料供給施設を整備を行ったほか、燃料供給施設の設置に関する法規制の緩和措置を進めている。
 低公害車の率先導入に関しては、「国の事業者・消費者としての環境保全に向けた取組の率先実行のための行動計画」において、政府保有の公用車のうち通常の行政事務の用に供するものに占める低公害車の割合を平成12年度において概ね10%に高めることが目標とされたところであり、環境庁等において公用車への低公害車の導入を進めている。
 その他、平成8年1月には低公害車の普及に関する国際シンポジウムを開催したほか、東京代々木公園他全国8か所で低公害車を一堂に展示する「低公害車フェア」を開催する等、一般への普及啓発も積極的に行なわれた。その他の施策も含めて、施策の一覧を第1-1-8表に掲げる。
ウ 固定発生源対策
(ア) 全国一律の排出規制の実施
 窒素酸化物の固定発生源に対する全国一律の排出規制については、昭和48年8月の第1次規制以降、5次にわたる排出基準の強化を行ってきているほか、窒素酸化物の排出量が多く、大気汚染防止の観点から看過できない施設について逐次規制対象として追加するなどの見直しを行っている。
(イ) 総量規制の実施
 工場、事業場が集合し、ばい煙発生施設ごとの排出規制では二酸化窒素に係る環境基準の確保が困難であると認められる地域(東京都特別区等地域、横浜市等地域及び大阪市等地域の3地域)について、都道府県知事が作成する総量削減計画に基づき工場単位で規制される窒素酸化物に係る総量規制が、昭和57年から実施されている。
(ウ) 窒素酸化物排出低減技術の開発状況
 固定発生源から排出される窒素酸化物の低減技術については、低NOx燃焼技術、排煙脱硝技術等がある。
 低NOx燃焼技術には、二段燃焼法、排ガス再循環(EGR)、低NOxバーナー等があり、これらの技術の採用により、相当程度の窒素酸化物排出低減効果のあるボイラー等が普及している。
 排煙脱硝技術についてみると、第1-1-7図にみられるように排煙脱硝装置の設置基数及び処理能力は、着実に増加している。脱硝方式としては多くが乾式選択接触還元法である。
(エ) その他の対策
 大気汚染防止法で規定する「ばい煙発生施設」に該当しない、業務用小型ボイラー等の小規模燃焼機器についても、特に大都市地域ではこれらから排出される窒素酸化物の量が無視できないことから、優良品推奨基準としてのNOx排出ガイドライン値、それに適合する機器の普及促進方策等について検討している。
エ 船舶・航空機対策
 船舶から排出される窒素酸化物、硫黄酸化物、CFC等については、現在は規制が行われていないが、国際海事機関(IMO)において、「1973年の船舶による汚染の防止のための国際条約に関する1978年の議定書(MARPOL73/78条約)」に船舶からの排気ガス規制に関する新附属書を加えることについて、1997年(平成9年)の採択を目指して、現在、具体的な検討がなされている。また、我が国においても、大港湾を抱える都市において、今後船舶による大気汚染負荷が無視できないものとなる可能性もあることから、船舶からの排出実態、排出削減技術の動向等を把握して、国際的動向に対応した排出削減手法を検討しているところである。
 また、航空機から排出される窒素酸化物、炭化水素、一酸化炭素及びばい煙については、国際民間航空条約(ICAO)において排出源対策として基準が定められているが、平成8年2月に、この基準に適合した航空機でなければ航空の用に供してはならないこと等を内容とする航空法の一部を改正する法律案が第136回国会に提出されたところである。
オ その他の対策
 以上の各種対策に加え、昭和63年度から、冬期における高濃度の大気汚染に対応するため、暖房温度の適正化や公用車の使用削減等を内容とする「季節大気汚染対策」を実施しているほか、12月を「大気汚染防止推進月間」として、広く国民を対象に、公共交通機関の利用促進を訴える等大気汚染防止のための普及・啓発活動を実施している。
 また、窒素酸化物等の大気汚染物質の影響による健康被害を予防するための取組として、公健法の基金を財源として、地域の大気環境改善に資する各種の事業(地方公共団体等が行う電気自動車、天然ガス自動車等の低公害車の導入、排出ガスのより少ない最新規制適合車等への代替促進、大気浄化能力を有する植栽の整備等)を推進している。
 また、建設工事に伴う排出ガス対策として、排出ガス対策型建設機械の開発・普及を進めている。



(2) 浮遊粒子状物質・ディーゼル排気微粒子等対策

ア 浮遊粒子状物質・ディーゼル排気微粒子対策
 大気中の粒子状物質は「降下ばいじん」と「浮遊粉じん」に大別され、さらに浮遊粉じんは、環境基準の設定されている粒径10μm以下の浮遊粒子状物質とそれ以外に区別される。これらの粒子状物質の発生源は、工場・事業場等産業活動に関係するものだけでなく、自動車排ガスやタイヤの巻き上げなど自動車の運行に伴い発生するもの、風による土壌粒子の舞い上がり等の自然現象によるものもある。これらの各種発生源のうち、工場・事業場における事業活動に伴って発生するものについては、「大気汚染防止法」に基づき、?燃料その他の物の燃焼又は熱源としての電気の使用に伴い発生する物質を「ばいじん」として、?物の破砕、選別その他の機械的処理又は堆積に伴い発生し、又は飛散する物質を「粉じん」として規制している。また、自動車の運行に伴い発生するものについては、同法等に基づき「粒子状物質」として規制している。
(ア) 浮遊粒子状物質・ディーゼル排気微粒子による大気汚染の現況
i) 浮遊粒子状物質による大気汚染の現況
 平成6年度の浮遊粒子状物質に係る有効測定局数は、一般局689市町村1,485測定局、自排局146市町村211測定局であった。(第1-1-8図)
 過去10年間の継続測定局(一般局659局、自排局54局)における年平均値の推移は第1-1-9図のとおりであり、平成6年度は、一般局0.037ppm、自排局0.048ppmと5年度に比べやや高くなっている。
ii) 浮遊粒子状物質に係る環境基準の適合状況
 浮遊粒子状物質については、昭和47年1月に環境基準が設定されている。環境基準の長期的評価においては、年間における1日平均値のうち測定値の高い方から2%の範囲にあるものを除外した値が0.10?/立方メートル・以下であり、かつ、年間を通じて1日平均値が0.10?/立方メートルを超える日が2日以上連続しない場合を環境基準に適合するものとしている。
 長期的評価に基づく環境基準の達成率の推移は第1-1-8図のとおりであり、平成6年度は、一般局では61.8%と5年度と比べて高くなり、自排局では32.9%と5年度に比べて低くなった。いずれにしても環境基準達成は依然低い水準で推移しており、特に、関東地域において芳しくない。
イ) 対策
 浮遊粒子状物質については、工場・事業場、自動車等人為的な発生源の他、土壌等自然界に起源をもつものや、大気中での二次粒子(大気中で硫黄酸化物等のガス状物質が物理的、化学的変化を受けて成長する粒子)の生成がある等発生機構が複雑であるため、決め手となる有効な対策の策定が難しい状況にある。
 このため、浮遊粒子状物質に係る各種発生源調査及びフィールド調査等を実施し、汚染機構の解明、汚染予測手法の開発、効果的な削減手法等の調査研究を推進しているところである。また、近年ガス状物質が煙突から排出された直後に粒子化する凝縮性ダストの存在が確認されたところでもあり、これの排出実態及び汚染機構の解明に努め、これらの結果を踏まえて、総合的な対策の検討を進めている。
 一方、自動車の排出ガスに含まれる粒子状物質については、平成元年12月の中央公害対策審議会答申に示された短期目標に沿って、従来から規制対象となっていたディーゼル黒煙の規制強化及び粒子状物質全体に対する新たな規制が5年及び6年から実施された。また、ディーゼル車からの粒子状物質の排出量を6割以上削減するという長期目標についても、11年頃までに全ての車種について達成できる見通しが得られたところである。(第1-1-9表)
イ ばいじん及び一般粉じん対策
 ばいじんについては、施設の種類及び規模ごとに排出基準が定められており、さらに、施設が密集し、汚染の著しい地域においては、新・増設の施設に対して、より厳しい特別排出基準が定められている。
 ばいじんの発生源対策としては、適切な燃焼管理等のほか、集じん装置の設置がある。(第1-1-10図)
 一般粉じん(「粉じん」のうち「特定粉じん」(現在、政令で石綿を指定)以外のもの。「特定粉じん」については「4(ア)石綿対策」の項参照)については、堆積場、コンベア等の一般粉じん発生施設の構造、使用及び管理に関する基準が定められている。


(3) スパイクタイヤ粉じん対策

 近年、積雪寒冷地域においてスパイクタイヤを装着した自動車が道路を損傷することにより大量の粉じん(以下「スパイクタイヤ粉じん」という。)が発生し、生活環境の悪化をもたらすのみならず、人の健康への影響も懸念されて深刻な社会問題となったことから、「スパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する法律」が平成2年6月に公布、施行された。8年4月現在、18道県の803市町村が環境庁長官により指定地域とされ、その地域内でのスパイクタイヤの使用が禁止されている。
 また、同法において国及び地方公共団体は、スパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する施策の推進・実施に努めなければならないとしていることから、環境庁では、脱スパイクタイヤの普及・啓発のためのパンフレット、凍結路面における安全運転のためのチラシ、指定地域地図等を作成し、都道府県等に配布した。

(4) 硫黄酸化物対策等

ア 硫黄酸化物等による大気汚染の現況
(ア) 二酸化硫黄の年平均値の推移
 平成6年度の二酸化硫黄に係る有効測定局数は、一般局697市町村1,604測定局、自排局73市町村92測定局であった。
 過去10年間の継続測定局(一般局1,356局、自排局42局)における年平均値の推移は第1-1-11図のとおりであり、平成6年度は、一般局では0.005ppmと5年度と変わらず、自排局では0.008ppmと5年度と比べ高くなっている。
(イ) 長期的評価に基づく二酸化硫黄に係る環境基準の適合状況
 環境基準の長期的評価においては、年間における1日平均値のうち測定値の高い方から2%の範囲にあるものを除外した値が0.04ppmを超えず、かつ、年間を通じて1日平均値が0.04ppmを超える日が2日以上連続しない場合に環境基準に適合するものとしている。
 長期的評価に基づく環境基準の達成状況の推移は第1-1-10表のとおりであり、近年高い達成水準を維持している。
(ウ) 短期的評価に基づく二酸化硫黄に係る環境基準の適合状況
 短期的評価においては、1日平均値がすべての有効測定日(1日20時間以上測定が行われた日をいう。以下同じ。)で0.04ppm以下の場合、又は、1時間値がすべての測定時間において0.1ppm以下の場合に環境基準に適合するものとしている。
 1日平均値がすべての有効測定日で0.04ppm以下の測定局数の有効測定局数に対する割合は、平成6年度は、一般局99.3%、自排局100%と5年度同様高い水準を維持している。また、1時間値がすべての測定時間において0.1ppm以下の測定局数の有効測定局数に対する割合についても、平成6年度は、一般局96.3%、自排局98.9%と5年度同様高い水準を維持している。
(エ) 一酸化炭素の年平均値の推移
 平成6年度の一酸化炭素に係る有効測定局数は、一般局155市町村184測定局、自排局206市町村345測定局であった。
 過去10年間の継続測定局(一般局150局、自排局233局)における年平均値の推移は第1-1-12図のとおりであり、平成6年度は、一般局では0.6ppmと5年度と変わらず、自排局では1.2ppmと5年度と比べ低くなった。
(オ) 一酸化炭素に係る環境基準の適合状況
 環境基準の長期的評価においては、年間における1日平均値のうち測定値の高い方から2%の範囲にあるものを除外した値が10ppmを超えず、かつ、年間を通じて1日平均値が10ppmを超える日が2日以上連続しない場合に環境基準に適合するものとしている。一方、短期的評価においては、1時間値の1日平均値が10ppm以下であり、かつ、1時間値の8時間平均値が20ppm以下である場合に環境基準に適合するものとしている。平成6年度においては5年度に引き続き、一般局、自排局ともすべての測定局においていずれの評価によっても環境基準を達成している。
イ 対策
 硫黄酸化物の排出規制については、施設単位の排出基準と高汚染地域における工場単位の総量規制基準による規制が実施されている。施設単位の排出基準による規制は、K値規制と呼ばれ、地域ごとに定められる定数Kの値(3.0〜17.5の16ランク、Kの値が小さいほど厳しい)と排出口の高さ等に応じて硫黄酸化物排出量の許容限度が定められており、Kの値は昭和43年12月以降8次にわたり段階的に改正強化が行われてきている。工場単位の総量規制は国が指定する総量規制地域(工場・事業場が集合しており、排出基準のみによっては環境基準を確保することが困難である地域について指定)において、都道府県知事が作成する総量削減計画に基づき実施されており、現在、24地域で実施されている。このほか、暖房等による燃料使用量の増加のために季節的に著しい大気汚染を生ずる地域のばい煙発性施設及び総量規制地域にあって総量規制基準が適用されない小規模工場、事業場に対しては、石油系燃料の硫黄含有率に係る燃料使用基準を定めている。
 硫黄酸化物の排出規制に対応する発生源対策として、重油の脱硫、排煙脱硫装置の設置等の対策が講じられてきている。
 重油脱硫については、昭和42年以来、直接脱硫、間接脱硫装置が設置されているが、平成6年度末の重油処理能力は、それぞれ14基7.9万キロリットル/日、26基13.3万キロリットル/日であった。このような重油脱硫等により、燃料の質の改善が進んでおり、6年度における内需用重油の平均硫黄含有率は、1.09%になっている。
 また、排煙脱硫装置については、設置基数及び処理能力とも着実に増加してきている(第1-1-13図)
 これらの諸対策により、二酸化硫黄による大気汚染の状況は昭和40年代前半に比べ著しく改善されてきている。

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