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第9節 

3 環境教育・環境学習等の現状

(1) 学校教育における環境教育

 学校教育においては、各教科、道徳、特別活動を通じた学校教育全体の中で相互に連携を図りながら、環境に関する学習が行われている。各学校では、例えば、理科で酸性雨を測定する実験をしたり、家庭科でごみについて調査し、ごみの減量化を考えるなど、身近な地域の環境問題の学習や豊かな自然環境の中での様々な体験活動を通して、自然の大切さを学ぶ学習など各種の取組みが進められている。文部省においては、このような取組みが各学校において適切に進められるよう、環境教育指導資料の作成など必要な施策を講じているところである。
 また、再生紙を用いた教科書の使用等が進められることは、児童・生徒のリサイクルへの理解を深める契機となることから有意義なことである。再生紙を用いた教科書の数は増加しており、平成8年度に小・中・高等学校で使用される教科書においては、48.5%の教科書の主に表紙、見返、口絵等に再生紙が用いられている(第4-9-4表)



(2) 社会教育その他多様な場における環境教育・環境学習

ア 学習拠点の整備
 経済社会を構成する幅広い主体による自主的積極的な取組を推進するためには、行政から住民等に対する一方的な知識や情報の提供にとどまらず、個々の住民等の関心やニーズに応じて、情報を提供したり、あるいは住民等の自主的な学習や実践活動等に対して支援を行うことが重要である。こうした支援策の具体化として、環境学習センター、環境情報コーナーといった環境保全活動促進拠点の整備が各地方公共団体において進められており、これまでに、都道府県政令指定都市レベルで23の地方公共団体において整備が実施され、平成7年度には、名古屋市で環境学習センターの整備が行われた。
 また、実際に自然を体験すること、つまり、自然とふれあうことは、単に自然があるというだけで成り立つものではなく、活動の拠点となる施設の整備が不可欠である。自然歩道、キャンプ場などの公共的施設の整備に対する国民の期待は高まっている現状にある。すぐれた自然環境を有する国立・国定公園においては、自然観察路、園地、野営場、ビジターセンター、公衆トイレなどの整備が行われており、なかでも、家族が自然とふれあいながら長期滞在でき、環境にやさしい施設を基本としたキャンプ場としてエコロジーキャンプ場の整備を平成5年度より開始している。平成7年度は、新たに、国が直接行う事業として、十和田八幡平国立公園後生掛地区、上信越高原国立公園笹ヶ峰地区、国の補助により地方公共団体が行う事業として、霧島屋久国立公園御池地区、能登半島国立公園輪島地区、越前加賀海岸国立公園三国地区において事業に着手した(第4-9-5表)
イ 学習機会の提供
 最近では自然観察会、星空観察等の体験的学習が各地で実施されているが、環境庁では、昭和63年から「全国星空継続観測(スターウォッチング)」を毎年夏と冬に行い、夜空を観察するという簡単な方法を通じて大気環境保全意識の高揚を図っている。平成7年度の夏期の参加者は429団体、参加人数は9,987人となっている。(第4-9-6表)。また、昭和59年より一般市民の自主的な参加のもと、カゲロウ、サワガニなどの水生生物の調査により水質を判定する全国水生生物調査を実施している。この調査は、小・中・高校生を始め、婦人会等一般市民の自主的な参加により行われており、参加者は年々増加し、平成7年度においては過去最高の1,777団体、4万6,575人であった(第4-9-8図)
 平成7年6月に環境庁の呼びかけにより「こどもエコクラブ」が発足した。今日の環境問題の解決を図るためには国民一人ひとりの認識と取組を広めていくことがいわば出発点であり、特に次世代を担う子供達が環境に対する意識を持つことは非常に重要である。そこで、子供達が自主的かつ積極的に環境保全活動を行うことのできるような活動・学習の場提供することを趣旨として「こどもエコクラブ」活動が開始された(第4-9-9図)
 この活動によって、今まで地方公共団体等で独自に行ってきた子供達の様々な活動事例などの情報をお互いに交換し合い、地域を越えて連帯したりすることにより、活動の内容が充実すると期待される。平成7年12月末時点で、こどもエコクラブの数は2,450クラブ、子供達の人数は36,501人となっており、今後も広報の充実等に努め、積極的に推進していくこととしている。
ウ 人材の育成・確保
 環境教育・環境学習、環境保全活動、自然とのふれあいを効果的に推進するためには、それらを指導する役割を果たす人材の育成・確保が必要である。これらの取組を支援するため、「環境保全アドバイザー」等の環境保全活動の促進に資する人材の育成一部の地方公共団体において行われている。国立公園においては、環境庁職員である国立公園管理官(レンジャー)が全国28ヶ所の国立公園に配置されており、現地の管理業務に当たるとともに公園利用者に対する自然解説活動の企画・実施等を行っている。そのほか、国立・国定公園ではボランティアが大勢活躍しており、環境庁自然保護局長の委嘱により、約3,000人の自然公園指導員が国立・国定公園の保護と適正な使用のための利用者指導や情報提供などを行っている。また、国立公園・野生生物事務所への登録により、約1,500人のパークボランティアが国立公園の自然解説や美化清掃等の業務の補助を行っている。

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