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第9節 

2 環境保全の具体的行動の現状

(1) 自主的な環境管理

 事業者は経済活動の中で大きな部分を占めており、様々な事業活動に際して、環境への負荷の低減を進めることが必要となっている。このため、事業者において、自主的積極的に環境保全に取り組もうという動きが国内外において高まっている。こうした事業者の自主的な環境保全のための重要な取組の一つとして「環境管理」という手法がある(2章2節1項(1)参照)。
 環境管理について、国内においては、平成3年4月に経済団体連合会が我が国企業が環境問題に取り組む基本理念等を示した「地球環境憲章」を発表、平成4年10月には通産省が「環境に関するボランタリープラン」の作成、平成7年11月にはそのフォローアップを所管業界団体に要請し、平成5年2月には環境庁が「環境にやさしい企業行動指針」を公表している。また、環境庁では、環境活動に意欲はあるがその方法についての情報が不足している事業者が、環境と事業活動の関わりを深く理解し、環境保全への具体的な取り組みを計画的に進めていくことを支援する「環境活動評価プログラム」を試行的にパイロット事業として開始している。

(2) 環境保全に望ましい活動の推奨

 エコマーク事業は、エコラベリング事業の一つとして環境への負荷の少ない製品の購買を推奨することを目的として、平成元年2月より開始された。エコマークは、商品類型ごとに定められた環境への配慮項目を満たしているかどうかを、各分野の環境問題の専門家からなる「エコマーク推進委員会」が審査し、認定を受けた商品に付与される。100%古紙使用のトイレットペーパーや太陽熱利用給湯システムなどのエコマーク対象商品は、事業開始以降年々増加し、平成7年12月現在で66類型2,105ブランドある(第4-9-6図)。商品の中には、ステイオンタブ缶のように一般化したことからエコマークを付ける必要性がなくなり、対象品目から外れたものもある。
 従来のエコマーク制度では、一面的な環境負荷を考慮した基準の設定が行われてきたが、一面的に環境負荷が低減されても、他の面で環境への負荷が増大してかえって逆効果とならないように、商品の原料採取・製造段階から流通、使用、廃棄に至るまでのライフサイクル全体にわたっての環境負荷を考慮する必要がある。このようなライフサイクルの考え方は、ISO(国際標準化機構)において検討されている環境ラベリングの規格づくりにおいても考慮されている。このため、平成8年1月エコマークの認定基準が改定され、エコマーク事業に製品のライフサイクルの観点を盛り込んで設定基準を作成することとされた。また、同時に、商品の製造・販売業者からだけでなく、消費者等からの提案を受けて商品類型を選定できるよう手続きを改めた。
 エコマーク商品等の環境保全型商品は順調に商品類型を増やしてきたが、経済全体から見れば、まだごく小さい部分を占めているに過ぎない。環境保全型商品の普及を促進するためには、消費者又は需要者の協力が必要である。言い換えれば、需要サイドが環境保全型製品を積極的に購入していくことが必要である。この需要サイドの具体的取り組みとして、平成8年2月に「グリーン購入ネットワーク」(2章2節3項(5)参照)が、環境庁を始め、企業、行政機関、民間団体、学識経験者等の協力のもと、発足した。こうした取り組みは、需要サイドが供給サイドに働きかけて、環境保全型製品の生産、流通を増やしていくことにつながる。このように、現在の大量生産・大量消費・大量廃棄の経済社会システムを循環を基調とした持続可能な経済社会システムに変えていくためには、供給サイドの取組と需要サイドの取組とが経済の両輪として進められてくことが重要である。



(3) 民間団体の活動の支援

 民間団体の自主的積極的な環境保全活動を支援することを目的として、環境事業団の地球環境基金は多くの民間団体に対して助成を行っている。平成7年度は、マレーシア・サラワク州、サバ州、及びフィリピン・ルソン島における熱帯雨林の再生計画、ケニアにおける干ばつ被災地の環境保全事業等、国内においては、阪神・淡路大震災により損壊した電気冷蔵庫等からの特定フロン回収事業、森林の環境保全にかかわる植林活動など360件21億1,500万円の要望に対して164件6億5,000万円の助成を行った(第4-9-3表,第4-9-7図)


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