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第9節 

1 環境に関する国民、事業者等の認識と行動の現状

(1) 国民の認識と行動

 環境基本計画において、国民は、人間と環境との関わりについての理解を深め、日常生活に起因する環境への負荷の低減や身近な環境をよりよいものにしていくための行動を、自主的積極的に進めることが期待されている。
 環境庁は平成7年7月に、環境庁が委嘱している1,500人の環境モニターを対象に「環境モニター・アンケート」を実施した。この調査によると、「環境基本法を知っている」と答えた人は81.1%、「環境基本計画を知っている」と答えた人は78.3%となっており、近年の環境政策の大きな動きについて、環境問題に関心の高い人はよく周知していることが示されている。また、国民自らの取組についての項目では、「環境に影響の少ないライフスタイル」についてきいたところ、「手間がかかり不自由をしても自分の生活を変える」が70.7%、「自分の生活様式を変えるとともに金銭的負担もいとわない」が12.3%であり、関心の高さが環境保全行動の意欲へと結びついていることがわかる。さらに、「国民が環境問題の解決に自ら取り組む効果」についてきいたところ、「大いに効果がある」が36.1%、「参加の条件が整えば効果がある」が60.0%とほぼ全ての人が自ら取り組む効果に肯定的な認識を示している(第4-9-1図)
 しかしながら、平成7年1月に総理府で行われた「環境保全とくらしに関する世論調査」によると、将来世代に良好な環境を残すためにどのような生活を行うべきかを聞いたところ、「環境保全に配慮した生活を行うべきであり、そのためには多少の生活水準の低下もやむをえない」が23.7%であったのに対し、「現在の生活を維持しつつ、環境保全に配慮した生活を行うべきである」が50.4%、「将来世代のためによい環境を残すことは重要なことだが、我々の生活水準を向上させることを前提とすべきである」が7.8%など、環境保全に配慮することについては多くの人々が肯定的だが、自らの生活水準を犠牲にしてまで将来世代に対し良好な環境を残すことには否定的な回答が多かった。
 また、平成6年に大和ハウス工業(株)生活研究所が行ったアンケート調査「エコロジーと生活」によると、日常生活の中で、多くの人々が何らかの形で環境保全に協力しているなど環境問題への意識は高いが(第4-9-2図)、実際の行動では、便利さや経済性が優先されることが多いという結果になっている(第4-9-3図)
 平成7年10月に旭硝子財団が行った「地球環境問題と人類存続に関するアンケート」では、環境に対する意識の国際比較を行っている。「人類存続の危機に対する認識」については、日本の危機意識は昨年同様他地域に比べ最下位であった(第4-9-1表)。また、「過剰消費の生活スタイルの変更」については、特に北米、中南米、西欧で改善に対する意識が高いが、日本の場合、「実行できる(やっている)」とした人は約23%しかなく、改善の意識は低いレベルにとどまっている(第4-9-4図)
 これらの調査からは、国民の意識として、環境問題への認識はかなりあるものの、環境への影響の少ない生活様式に変えることなど、具体的行動の面では、意欲、活動ともに進んでおらず、国際的に見ても低いレベルにとどまっている。



(2) 事業者の認識と行動

 事業者は、環境基本計画において、様々な事業活動に際して、公害防止をはじめ環境への負荷の低減を自主的積極的に進めること、また、その能力を活かした積極的な環境保全活動、環境保全に関する事業活動(エコビジネス)の発展に向けた積極的な取組が期待されている。
 環境庁では、平成3年度から毎年「環境にやさしい企業行動調査」を行っており、平成7年度の調査によると、5割近くの企業が「環境に関する経営方針」を制定しており、平成3年度と比較するとかなり増加している(第4-9-5図)。このように、事業者の環境保全への自主的積極的な取組が次第に根づいてきている。また、約4割の事業者が環境に関する具体的行動計画を策定している。
 また、事務処理及び社会貢献活動等の本来業務以外の取組については、オフィスの省エネルギー、廃棄物の分別収集、再生品の使用等を約7割の事業者が行っており、地域の環境保全活動へも約4割の企業が参加している。



(3) 民間団体の認識と行動

 環境保全に関する活動を行う非営利的な民間団体は、環境基本計画において、公益的視点から組織的に活動を行うことにより環境保全に大きな役割を果たすと位置づけられており、特に、草の根の活動や民間国際協力などにおける活躍が期待されている。
 (財)日本環境協会が編集した「環境NGO総覧」に収録されている全国の民間団体の数は4,506団体で、そのうち環境保全を主目的とする団体は1,480団体(32.8%)となっている。これらの民間団体の活動の形態は実践、普及啓発、調査研究の順で多く、他団体の活動支援を行っているところもある。活動の具体的な内容については、美化・清掃、消費・生活、リサイクル等生活密着型の活動が多く、また、自然保護や環境教育等を行っているところも多い。国際協力活動を手掛けている団体も383団体ある。活動地域は同一市町村の区域内が69.7%を占め、比較的小規模の生活密着型の団体が大きな割合を占めている(第4-9-2表)

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