5 地域の生活環境に係る問題への対策
(1) 騒音・振動対策
(ア) 自動車交通騒音・振動対策
道路交通騒音対策については、自動車単体からの騒音の低減対策として、平成4年11月になされた加速走行騒音に関する中間答申及び7年2月になされた定常走行騒音、近接排気騒音に関する答申に沿って、自動車騒音低減技術の進捗状況に関する評価を行う等、これらの答申に示された目標値の早期達成のための所要の措置を講じる。
また、騒音低減のための総合的施策についても、平成7年3月の中央環境審議会の答申を踏まえ、道路構造対策、交通流体策、沿道対策等の総合的な推進を図っていく。さらに、地方における道路交通騒音防止対策の計画的総合的推進に資するため、必要な調整を図りつつ、モデル地区において調査等を実施する。
その他第3章207/sb3.3>3節に掲げた各種施策を進めていく。
(イ) 新幹線鉄道騒音・振動、航空機騒音対策
新幹線鉄道の騒音・振動を軽減するため、発生源対策及び技術開発等を計画的に実施するよう旅客会社等を指導することとしている。
東海道・山陽新幹線においては、住宅が集合する地域について、東北・上越新幹線においては住宅集合地域に準じる地域について、今までの各種音源対策の効果及び実施状況を踏まえつつ、所要の対策を実施し、75デシベルを超える地域にあっては、8年度末を目途に75デシベル以下とするとともに、その他の地域についても、環境基準の達成に向けて対策に努めるよう引き続き指導することとしている。
これら音源対策に併せて行う民家等に対する防音及び防振工事については、申し出のあった対象家屋についてはすべて終了しているが、今後とも申し出のあるものに対して助成が行われるよう指導することとしている。
これらのほか、環境基準の達成に向け技術開発が鋭意進められるよう指導していくとともに沿線土地利用の適正化を図る。
公共用飛行場周辺における航空機騒音対策については、航空機騒音に係る環境基準の早期達成に向けて発生源対策及び空港周辺対策を強力に推進する。
発生源対策として、低騒音型機の導入、騒音軽減運航方式の実施等を促進する。低騒音型機の導入の促進にあたっては航空機騒音基準適合証明に関し昭和53年の強化された新基準に適合しない航空機について、平成7年4月1日以降段階的に運航の制限を行う。また、空港周辺対策として、次のような施策を実施するとともに、引き続き緑地帯の整備、再開発整備事業等を推進し、空港と周辺地域との調和ある発展を図る。
ア 住宅、教育施設等防音工事補助において防音工事後一定期間経過した空調器の機能回復事業を行う。
イ 住宅防音工事の補助対象区域を拡大してきたなかで、旧区域にあって補助の対象から取り残されていた住民に対し住宅防音工事を実施する。
ウ 移転補償事業について、引き続き積極的に推進していく。
エ 緩衝緑地帯等整備事業として、空港周辺の環境改善と防災機能の向上等を図るためエア・フロント・オアシス(親空港親水公園)整備を行うこととしている。
オ 周辺環境基盤施設整備事業補助については、5空港の周辺で実施する。
また、近年全国で立地の動きがみられるヘリポート、コミュータ空港等は、離着陸回数が10回以下で環境基準の適用とならないものが多いので、環境庁において、「小規模飛行場環境保全暫定指針」に基づき、その騒音問題の発生の未然防止に努めていく。
自衛隊等の使用する飛行場についても航空機騒音に係る環境基準の目標の早期達成に向けて、消音装置の使用、飛行方法の規制等の音源対策、運航対策に努めるとともに、「防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律」を中心に周辺対策を推進することとしており、平成7年度における学校、住宅等の防音工事の助成及び建物等の移転補償等の事業を行うための環境保全関係予算としては1,044億円の事業費を計上している。
(ウ) 在来鉄道騒音・振動対策
在来鉄道の個々の騒音・振動問題については、関係機関と連絡をとりながら適切に対処していくこととしているが、新線建設等騒音問題を惹起するおそれのあるようなケースについて、騒音問題の未然防止を観点から、これらの沿線における環境を保全するための指針値を設定するための検討を環境庁において引き続き行うこととしている。
(エ) 工場・事業場及び建設作業騒音・振動対策
騒音・振動については「騒音規制法」、「振動規制法」に基づき、特定施設を設置する工場・事業場及び特定建設作業について規制を行っているが、苦情は依然として多い。このため未規制施設・未規制建設作業の騒音・振動対策について調査検討を引き続き行う。
大都市近郊での工場騒音問題に対処するため、人口急増地区での工場騒音対策検討調査を引き続き実施する。
さらに、騒音問題に対してより合理的な対応を行うため、屋内における望ましい音環境指針の設定に関する研究を引き続き行う。
振動については、現在の環境保全目標は(「大部分の地域住民が日常生活において支障がない程度」という)抽象的な表現となっているので科学的知見に基づいた具体的な数値で表される環境保全目標の策定のための研究を引き続き行う。このほか国際的に制定された振動評価法が現行と異なるため、測定値の違いを調査し、公害振動評価方法について検討を行う。
(オ) 近隣騒音対策
生活騒音等の近隣騒音に対処するため、音環境モデル都市事業や各種の啓発普及活動を引き続き行う。また、深夜営業騒音・拡声器騒音に対する新たな取組のための検討を行うとしている。
(2) 悪臭対策
第132回国会に提出した「悪臭防止法の一部を改正する法律案」を適切に施行するため、嗅覚測定法(ヒトの嗅覚を用いた悪臭の測定法)について、地方公共団体職員への研修、民間測定技術者に対する資格認定制度の整備を行う。
また、同法案において、日常生活に伴う悪臭の発生を防止することが国民の責務として新たに規定されていること等を踏まえ、広く国民の参加と協力を得て、街のにおい環境の大切さへの認識を高め、都市生活にともなう悪臭を減らすための具体的な市民行動を喚起することを目標としたモデル都市事業(クリーンアロマ推進計画)を実施する。
さらに、今後悪臭防止対策が必要とされる事業者に対し、地方公共団体が適切な改善措置を指導できるよう、悪臭防止技術マニュアルの作成等により、有効な悪臭防止技術を広く普及する。
このほか、煙突等の気体排出口及び排出水に係る臭気指数についての規制基準を設定するための検討を行うとともに、一般環境大気における臭気に関する目標設定のための調査検討を行う。
(3) その他大気に係る生活環境保全対策
大気は状態の変化が目に見えにくいため環境悪化に対する予防措置を行うことは困難である。また騒音や悪臭のように五感を通じて不快感をもたらすものも多い。このような状況を踏まえ、複雑多様化した問題を視野に入れた大気生活環境の概念を確立し、同時にその状態を推し量る尺度として人々の目に見えやすい指標を用いて、生活の場としての良好な大気環境を確保するという観点から維持されることが望ましい姿を設定するための調査検討を行う。
大気汚染地域等においての公立義務教育諸学校の設置者が行う学校環境緑化促進事業等に対し引き続き補助を行う。
公害により教育環境上著しく不適当な公立学校の公害防止工事に要する経費について補助を行うこととし、平成7年度は10億9,300万円を計上している。
また、私立学校の公害防止事業に対しては、日本私学振興財団が行う貸付事業において、平成7年度は貸付計画額5億円を計上している。