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第1節 

2 大気汚染系疾病

(1) 既被認定者に対する補償給付等
 平成6年12月末現在の既被認定者数は78,682人であり、昭和63年3月1日をもって第一種地域の指定が解除されたため、新たな患者の認定は行われていない(第5-1-1表)。既被認定者については、従来どおり「公害健康被害の補償等に関する法律」(以下「公健法」という。)に基づき補償給付(?療養の給付及び療養費、?障害補償費、?遺族補償費、?遺族補償一時金、?児童補償手当、?療養手当、?葬祭料)、認定の更新等が行われるとともに、既被認定者の福祉を増進するための公害保健福祉事業(?リハビリテーションに関する事業、?転地療養に関する事業、?家庭における療養に必要な用具の支給に関する事業、?家庭における療養の指導に関する事業)が実施されている。
 補償給付等に要する費用については、ばい煙発生施設等の固定発生源と自動車とに分けて負担させることとし、負担割合は8対2と定められている。
 なお、認定又は補償給付の支給に関する処分に係る審査請求を審査するため、公害健康被害補償不服審査会が設置されているが、第一種地域関係では、平成6年12月末現在197件の審査請求があり、これまで取消し18件、却下14件、棄却124件の裁決を行ったほか、取下げが33件あった。


(2) 健康被害予防事業の実施
 昭和63年3月の改正法の施行により、新たに大気汚染の影響による健康被害を予防するための事業(以下「健康被害予防事業」という。)が実施されている。本事業は、これまで国、地方公共団体等が行ってきた大気汚染による健康被害の予防に関する施策を補完し、より効果あるものとするものであり、事業内容としては、公害健康被害補償予防協会(以下「協会」という。)が直接行う?調査研究、?知識の普及、?研修と、協会の助成を受けて地方公共団体及び環境事業団が旧第一種地域等を対象として行う?計画作成、?健康相談、?健康診査、?機能訓練、?施設等整備、?施設等整備助成がある(第5-1-1図)。
 本事業の財源は、協会に置かれた基金の運用益により賄われる。基金の総額は、約500億円とし、大気汚染の直接の原因者及び大気汚染に関連のある事業活動を行う者が拠出する拠出金並びに国の出資金により、毎年度の事業費を確保しつつ、基金を積み上げてきたが、平成6年度には積み上げが完了する予定である。
 平成6年度の健康被害予防事業の実施状況は次のとおりである。
ア 協会が直接行う事業
 調査研究として、大都市における気管支ぜん息等に関する調査、大気環境の改善に資する調査研究等を、知識の普及として、ぜん息児水泳フェスティバルを始め、低公害車フェア、大気汚染防止推進月間等のキャンペーン、ぜん息等の予防、回復等のためのパンフレットの作成等を行うとともに、健康被害予防事業従事者に対する研修を行っている。
イ 協会による助成金の交付
 57地方公共団体及び環境事業団に対して助成金を交付し、旧第一種地域等を事業実施対象地域として、大気環境改善のための計画作成、ぜん息等に関する健康相談、乳幼児を対象とする健康診査、ぜん息キャンプ等の機能訓練、電気自動車等低公害車の導入、大気浄化植樹、大気汚染対策緑地整備等が行われている。

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