3 今後の展望
上に見たように「持続可能な開発」の考えは国際的な合意として確認され、それに基づく行動計画も作成された。我が国では、その考え方をさらに具体的に示した環境基本計画が策定された。しかしながら、我々が持つ文明そのものが環境の利用を拡大することによって発展してきたという性格を歴史的に持っていること、そのため、このような拡大を前提として形成されてきた経済社会の仕組みを真に持続可能な仕組みに転換していくことは容易ではない。
一方、現時点においても人口は増加し続けており、21世紀半ばには、国連の中位推計で100億人を突破すると予測されている。また、環境への十分な配慮を伴わない経済発展や消費水準の上昇は、一人当たりの資源消費量や環境負荷発生を増大させ続けている。エネルギーの消費量も増加し続けており、先進国では二酸化炭素の排出抑制に努めているが現時点では十分な成果が出るに至っていない。多くの人口を抱え今後工業化による経済成長を進めることが予想される開発途上国では、人口の一層の増加ともあいまって排出量が大きく増大することすら考えられる。さまざまの物の生産、消費が増大し続けることが予想され、したがって廃棄物も増大し続けるであろう。
しかし、我々人類が生存し続けようとするなら、子孫にも我々の生存基盤たる環境を引き継ごうとするなら、困難であっても我々は持続的発展が可能な社会の実現に取り組まなければならない。
このままいけば人口は増大し続け、資源の消費量や環境への負荷量も増え続け、国際的に先進国と開発途上国の格差はますます拡大し、また、開発途上国の人口増加は加速し、それらによってさらに環境は損なわれることになり、問題はますます解決困難となっていくであろう。このような事態を避けるためには、我々現代人、特に環境への負荷の増大に大きな責任を有する先進諸国は、開発途上国との格差是正に努めるとともに、これ以上の環境への負荷の増大を厳しく抑えて、持続的発展が可能な社会を構築していく必要がある。そのような社会を築くためには、大量生産、大量消費、大量廃棄型の現代文明を見直し、自然と人間とが共生して、循環を基調とする経済社会システムを持つ持続的発展が可能な文明に変えていくことが必要なのである。