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第2章 アジア・太平洋地域の持続可能な発展

 我が国の環境は、地球環境全体から見るとほんの一部分にすぎない。しかしながら、時間的・空間的広がりを有する今日の環境問題を考えるとき、我が国の環境は決して他国の環境と分けて考えることはできないものである。この地球環境の保全は一国のみでは解決できない人類共通の課題となっており、我が国としても国際社会に占める地位にふさわしい国際的取組を積極的に進めることが期待されている。平成6年12月に策定された環境基本計画においては、地球環境保全の推進に向けて、地球的な視野に基づき、世界各国、国際機関等と幅広く協力を推進することがうたわれている。
 世界の中のアジア・太平洋地域という視点で考えてみると、アジア・太平洋地域は、歴史的・地理的に我が国と密接な関係にある地域であるとともに、今後の急速な経済成長とそれに伴う環境への負荷の一層の増大が見込まれる地域である。また、地球環境保全の観点からは、今後、人類が持続可能な発展を実現し得るかどうかの鍵を握っている地域であると言っても過言ではない。このため、アジア・太平洋地域における様々な議論の場において、我が国は率先した役割を果たすとともに、域内各国と環境政策の連携を図り、地球環境保全を推進することにより、同地域の持続可能な発展を共に目指していく必要がある。
 このような観点から、本章においてはアジア・太平洋地域に焦点を当て、同地域の環境の現状把握と21世紀に向けての展望を試みるとともに、持続可能な発展を実現していくための我が国の役割を考えていきたい。なお、アジア・太平洋地域とは、一般に国連のデータから認識されるようにESCAP(国連アジア・太平洋経済社会委員会)の加盟国地域を指す場合が多く、本章の記述では主にこのESCAP加盟国地域を対象にするものととし、東、東南アジアを中心として記述を進める。

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