前のページ 次のページ

第4節 廃棄物等の現状

(1) 一般廃棄物
 人の日常生活に伴って生じるごみは一般廃棄物(産業廃物以外の廃棄物)からし尿を除いたものを指し、家庭系ごみと事業系ごみが含まれる。ごみの種類は生活の多様化を受けて増加しており、廃大型家庭用品など適正な処理の困難なごみが問題となっている。
 平成3年度のごみ排出量は、年間5,077万トン(東京ドーム約136杯分、2年度は5,044万トン)であり、対前年度比0.6%増(2年度は対前年度比0.9%増)となっている。また、1人1日当たり排出量は1,118グラム(2年度は1,120グラム)と8年ぶりに減少した。過去の推移ではごみの排出量は戦後の国民生活や社会活動の活発化に比例して増加しており、昭和48年のオイルショックの際に一時減少したものの、その後も依然増加傾向にある(第4-4-1図)。
 一般廃棄物の処理については、その処分場、特に最終処分場の確保が困難であり、ごみ排出量の増加ともあいまって最終処分場の残余容量は急速に減少してきた。平成3年度の最終処分場(ごみ埋立処分地)は2,250カ所(2年度は2,336カ所)であり、残余容量は1億5,683万m
3
と2年度の1億5,670万m
3
とほぼ同量である。残余年数はごみの比重を0.82として計算すると全国平均で約7.8年分となっているが、東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県の首都圏地域では3年度のごみ最終処分量は我が国全体の24.4%(約400万トン)を占めるものの、その最終処分場残余年数は約4.9年と全国平均を下回っている。このように処分場用地の確保が困難になっていく中で、ごみ排出量の削減やごみの再資源化と再利用が緊急の課題となっており、平成3年には「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」を改正し、また「再生資源の利用の促進に関する法律」を制定して、再資源の利用の促進に努めているところである。
 我が国で平成4年の1年間で発生した飲料用罐の空き罐は約317億個と推計され、3年の約309億個に比べ2.6%増となっている。環境庁では、全国の空き罐散乱の実態等を把握するため昭和58年度より継続して調査を実施しており、4年の空き罐散乱状況はハイキング・登山道や公園・広場等は3年に比べ同程度であったが、他の調査場所では前年実績を大きく上回っており、最近5年間でみても状況は悪化している。調査場所別では、国道等幹線道路が2.6個と依然高い値で推移しているほか、これに続く海岸・湖岸や一般道路とも前年比約50%増と悪化している(第4-4-1表)。国や地方公共団体等では、空き罐散乱防止対策として様々な取り組みを行っているが根本的解決には至っておらず、再資源化などの一層の取り組みが必要となっている。
 近年、公共用水域の水質汚濁防止の観点からし尿処理施設からの排水に関心が高まっているが、平成3年度のし尿の処分量(水洗化していないくみ取りし尿総量)は約3,676万キロリットルで2年度の約3,621万キロリットルとほぼ横ばいであった。また、非水洗化人口は3,969万人(総人口の32.0%)であり、依然として総人口に占める割合は大きい状況にある。
 OECD加盟各国の一般廃棄物の排出量については、その評価方法についてまだ基準となるものはないが、1975年(昭和50年)以降概ねほとんどの国で増加傾向にある(第4-4-2表)。


(2) 産業廃棄物
 平成2年度における産業廃棄物の排出量は3億9,474万トンで、3年度家庭ごみ排出量の約7.8倍となっている。産業廃棄物の総排出量の伸びを見ると昭和60年度比で26.4%増であり、これは同時期のGNPの伸びの26.3%とほぼ同じであり、経済の成長に伴って廃棄物の排出も増加していると言える(第4-4-2図)。
 総排出量のうち最終的には約15,057万トンは再生利用され、最終処分量は約8,973万トンとなっている。排出量の内訳は汚泥(43%)と家畜糞尿(20%)と建設廃材(14%)などであるが、産業廃棄物についての厚生省による5年毎の調査によると、昭和50年度以降では汚泥が大きく増加する一方で廃酸・廃アルカリが減少している。業種別の重量ベースの排出量では農業が最も多く全体の20%を占め、次いで建設業と電気・ガス・熱供給・水道業と鉄鋼業などの順になっている。
 産業廃棄物の処理や処分については、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」によって様々な規制が行われ、その適正な処理や処分が図られている。排出された産業廃棄物のうち、中間処理による減量や再生利用に回るものを除いて全体の23%の8,973万トンが最終処分されているが、最近では最終処分場の確保が大きな問題となっている。特に首都圏(茨城県・栃木県・群馬県・埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県)における産業廃棄物最終処分場の残余容量は2年度には1,423万m
3
しかなく、他県で処分している産業廃棄物も多い。
 こうした最終処分場の確保の困難化は産業廃棄物の不法投棄の一因ともなっており、土壤汚染の増大のおそれが出ている。平成5年度では、建設工事から排出される建設廃材を中心として不法投棄された産業廃棄物は全国で約145万トン(4年度は137万トン)にものぼっている(第4-4-3図)。
 OECD加盟各国の産業廃棄物の排出量については、各国毎に産業廃棄物の定義が異なるため統一的なデータがないことから各国の相互比較は困難であるが、OECD諸国全体で1980年代前半では年間約10億トン、80年代中期では年間約13億トン、90年では年間約15億トンと見積られている。


(3) 有害廃棄物の越境移動
 人間の活動に伴って発生する廃棄物は、経済活動の拡大と国際化を背景に廃棄物の発生量の増大や質的な多様化が進み、発生国内での処理が困難となるにつれて処理の場所を求めて越境移動される事例が増加している。特に有害廃棄物は、処理の費用の高い国から安い国へ、あるいは処理に伴う規制の厳しい国から緩い国へと移動されやすく、そのため有害廃棄物の受け入れ国で適正な処理がなされない場合にはその国の生活環境や自然生態系に影響を及ぼしたりするおそれもあり、地球的規模で有害廃棄物が移動することが問題となってきた。
 有害廃棄物の越境移動の例としては、1976年(昭和51年)にイタリアのセベソで発生したダイオキシン汚染土壤が一時行方不明となり、その後1982年にフランスで発見されたセベソ汚染土壤搬出事件のほか、ノルウェーの会社が米国からギニアに有害廃棄物15,000トンを持ち込んで捨てた事件、イタリアからナイジェリアへ化学品という名目で3,900トンの有害廃棄物が運ばれて捨てられた事件、米国フィラデルフィアから14,000トンの有害な焼却灰を積載した船舶が各国で受け入れを拒否されて2年余り後にインド洋で海洋投棄された疑いのある事件などが発生している。
 有害廃棄物の越境移動は、1980年代前半には例えばヨーロッパ内での移動といった範囲にとどまっていたが、80年代後半になると有害廃棄物の移動範囲がアフリカや南米の国々に急速に広がり始めた。我が国においては、廃棄物中の有用物を回収するなどのため有害な廃棄物が国際取引されている例がある。
 こうした地球規模での有害廃棄物の越境移動に対して、国連環境計画(UNEP)を中心に国際的なルール作りが検討され、1989年(平成元年)3月スイスのバーゼルにおいて「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約」が作られ、1992年(4年)5月5日に発効した。我が国でも、1993年(5年)9月バーゼル条約に加入するとともに、同年12月にはその国内法である「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律」が制定され、1993年(5年)12月に施行された。今後とも有害廃棄物の発生量や輸出入の最小化及び国際協力の推進が課題となっており、国際的な枠組みの下での対策の実施に向けた努力が続けられている。

前のページ 次のページ