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第1節 

3 騒音・振動・悪臭の現状

 騒音・振動・悪臭は主に人の感覚に関わる身近な問題であり、生活の質の向上を図る上で重要な課題となっている。
 自動車交通騒音については、環境基準の達成状況もはかばかしくないため、自動車単体対策の強化及び交通流対策・道路構造対策・沿道対策等を含めた総合的な対策のあり方についてそれぞれ中央環境審議会において審議が行われており、これらの審議結果を踏まえて対策を進めていくこととしている。
 また、悪臭防止法の規制対象物質の追加指定及び排出水に係る規制基準の設定を行うとともに、騒音規制法及び振動規制法の規制対象施設の追加を検討し、規制措置の適切な運用に努めている。
 さらに、においに係る環境指針の策定の検討、良好な音環境について検討するためのモデル事業の推進など、より良好な生活環境の確保のための取組を進めている。
(10) 騒音・振動
 騒音は直接に人間の感覚を刺激して日常生活に及ぼす影響が大きく、工場・事業場、建設作業、各種交通機関などから発生する騒音に加え、都市化の進展・ライフスタイルの変化につれて騒音の発生源も多様化し、家庭用機器などによる生活騒音や深夜営業騒音などの近隣型騒音苦情が多くなっている。
 地方公共団体に寄せられる騒音苦情の状況では各種公害苦情件数の中で騒音は最も多く、平成4年度の苦情件数をみると15,539件で3年度の16,800件より約7.5%減少し、ピークであった昭和48年度の苦情件数の約64%に減少している。騒音は典型7公害に係る苦情件数のうち第1位を占め、振動と合わせると約4割となり良好な生活環境の質を確保する上で重要な課題であるといえる(第4-1-25図)。発生源別にみると、工場・事業場が5,764件で最も多く、苦情件数全体の4割近くを占めており、次いで建設作業2,737件、深夜営業1,659件の順となっており、深夜営業・拡声機・家庭生活などからのいわゆる近隣騒音は併せて5,985件となっている。近年の苦情件数の推移を見ると工場・事業場騒音及び建設作業騒音を含め全体では減少しているが、家庭生活騒音で横ばいとなっている。
 一般居住環境・自動車交通・航空機・新幹線鉄道の各騒音に対しては、地域の土地利用状況や時間帯に応じて類型化された環境基準が定められるとともに工場・事業場及び建設作業や自動車単体の騒音についてそれぞれ規制基準等が定められ、様々な対策が取られている。
 自動車交通騒音については、その環境基準が朝・昼間・夕・夜間の4時間帯のそれぞれについて住居環境の種類や車線数によって値が定められているが、特に大都市域において環境基準が達成されていない測定地点の割合が相対的に高い。
 平成4年の自動車交通騒音の環境基準の達成状況は、全国の測定地点4,511地点のうち環境基準が達成されなかったのは3,943地点(87.4%)であった。このうち、4時間帯のすべてにおいて環境基準が達成されなかったのは2,462地点(54.6%)、4時間帯のいずれかで達成されなかったのは1,481地点(32.8%)であった。また地域別にみると、4時間帯のすべてにおいての環境基準が達成されなかった地点の割合は、大都市域(東京23区及び12政令指定都市)において72.3%であり、それ以外の地域の51.7%に比べてかなり高い(第4-1-26図)。
 また、測定時期、測定時間等が年によって必ずしも一致していないため、単純に比較することはできないが、昭和63年から平成4年までの5年間継続して測定を行っている地点(1,200地点)を対象とした環境基準達成状況の推移を見ると、4時間帯のすべて又はいずれかで環境基準が達成されなかった割合は3年の88.2%が4年は89.4%とやや増加しており、また過去5年間でみても引き続き高い水準で推移している(第4-1-27図)。
 都道府県知事が都道府県公安委員会に対し、騒音規制法に基づき所要の措置を要請する際の基準である要請限度は、環境基準より5〜15デシベル高いレベルで区域・時間帯に応じて定められているが、全測定地点における要請限度の超過状況を見ると、全国の測定地点4,511地点のうち要請限度を超過したのは1,416地点(31.4%)であった。このうち、4時間帯のすべてにおいて要請限度を超過したのは126地点(2.8%)、4時間帯のいずれかで超過したのは1,290地点(28.6%)であった。また地域別にみると、4時間帯のすべて又はいずれかにおいて要請限度を超過した測定地点の割合は大都市域において39.7%であり、それ以外の地域の30.1%と比べて高い。5年間継続して測定を行っている地点1,200地点を対象とした要請限度の超過状況の推移を見ると、4時間帯のすべて又はいずれかにおいて要請限度を超過した測定地点の割合は平成3年の32.7%が4年は33.2%とやや増加しており、また過去5年間でみても引き続き高い水準で推移している。
 これまで自動車交通騒音を低減させるため、自動車単体対策として数次にわたる自動車騒音規制の強化を実施してきているが、幹線道路の沿道地域を中心に環境基準の達成状況は依然として厳しい現状にあり、今後とも総合的な対策が必要となっている。
 航空機騒音については、低騒音型機材の導入・空港周辺の整備等の対策が行われており、東京・大阪・福岡等の代表的な空港周辺において環境基準制定当時に比べると全般的に改善の傾向にあるものの、すべての地点で環境基準を達成している空港は少ない。現在も国内空港の新たな整備が進められていることから、環境保全上の一層の配慮が必要であるとともに、引続き環境基準達成のための努力が必要となっている。
 新幹線に起因する騒音については、従来からの対策によりかなりの改善が認められるものの、環境基準の未達成の地域が依然としてかなり多く残されている。こうした地域のうち、東海道・山陽新幹線沿線は住宅密集地が連続する地域または東北・上越新幹線沿線は住宅が集合する地域において、75デシベルを超える地域については平成5年度末までに75デシベル以下となるよう対策を講じているところであり、6年度にはその達成状況の把握調査を実施する。また、新幹線以外の在来鉄道においても騒音・振動の苦情が寄せられており、特に津軽海峡線や瀬戸大橋線の新線開通に伴い鉄道騒音問題が生じたため、各種対策が講じられているところである。
 最近では、拡声機・カラオケ・ピアノ・ペットの鳴き声・自動車の空ぶかしなどの都市生活等による騒音問題に対し、都市全体で身の回りの音環境を考えるといったサウンドスケープ的手法を積極的に取り入れた生活騒音防止対策のための新しい取組が国・地方自治体で始まっている。
 振動については、平成4年度の苦情件数は2,193件(3年度2,207件)で前年度と比較して横ばいであり、ピークであった昭和48年度の苦情件数の約47%に減少している。近年の苦情件数の推移を見ると全体では減少しており、このうち工場・事業場及び建設作業の振動は減少の傾向にあるが、道路交通振動及び鉄道振動については微増傾向である。都道府県別にみると東京都の571件が最も多く、次いで大阪府の217件、神奈川県の209件の順となっており、この3都府県で全国の振動苦情件数の約45%を占めている。


(11) 悪臭
 悪臭は、大気中にきわめて微量の悪臭物質が混じっても感じられるものであり、人に不快感や嫌悪感を与えるという感覚公害であるため、我々の生活に密着した問題となっている。
 平成4年度における悪臭苦情件数は10,753件(3年度10,616件)で前年度から微増し、ピークであった昭和47年度の苦情件数から半減している。典型7公害に係る苦情件数のうち騒音に次いで第2位を占めており、都道府県別にみると東京都の1,099件が最も多く、次いで愛知県の912件、大阪府の734件の順となっており、この3都府県で全国の悪臭苦情件数の約4分の1を占めている。発生源別にみると、いわゆる都市型の臭気発生源であるサービス業その他が2,546件(23.7%)で最も多く、次いで農業・畜産業2,415件(22.5%)となっている。また、製造工場全体では2,752件(25.6%)で件数・割合とも前年度に比較して減少し、個人住宅・アパート・寮が発生源となる生活型の苦情が1,279件(11.9%)となっている。経年的にみると農業・畜産業に係る苦情が大きく減少し、サービス業や個人住宅など都市・生活型の臭気発生源に係るものが増加している。
 こうした悪臭の状況においては、生活環境の保全・国民の健康に資する目的で悪臭防止法が制定されている。悪臭の原因となる悪臭物質を特定して工場その他の事業場から悪臭物質の排出・漏出を規制するために規制地域の指定及び規制基準の設定を行うとともに、悪臭物質を排出する事業者に対して規制基準の遵守を義務付け、違反する事業者に対しては改善勧告・改善命令を発動するという対策が行われている。

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